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森のサバイバル記録

「ハードルをあげたがるねぇ」


今回の会場となる『アルモンデ』のシンさんが、私の話を聞きながらそう言った。
な、なるほど…そうか、普通の人にはこれはハードルが高いのか。言われてみると納得が深い。最初の一歩は無理のない、自分のレベルのほんの少し上、怪我のないくらいが良いというのを知っているのに。自身にいつも高い志のハードルを設定しているからかもしれない。身体へのハードルだけを思えば分かる。そう、身体というものが私たちにはあるのだった。私のハードルの下げ方としては、チャレンジを設定して(ex.その場で狩猟採取したものだけ食べる)、無理そうだったらレベルを下げる(ex.持参したものを食べる)、というもので、幅をもたせて本人に選択してもらう形なのだが、その方法では人は無理をしてしまうことを今回学ぶこととなった。

本部テント。でかい

春の山は美しく気持ちよい

アルモンデの森は新緑が輝いていて、清涼な水も豊富に流れている。そこにいるだけでエネルギーが満ちてきて、元気になる。こんないい季節にこんないい場所で過ごせる機会は、めちゃくちゃ有難い。大きなテントを立て、ハンモックを設置して、焚き火台を用意し、川でサワガニを捕まえたり、竹を切りだして箸やコップを作ったり、野草を摘んだり、忙しく楽しい充実した時間が過ぎる。摘んだ三つ葉やヨモギでサラダを作ったり、蕗は持参したジャガイモと味噌炒めにしたり、サワガニはカラリと揚げたり、焼き芋を作ったり、予定していなかった来客も迎え、賑やかに時が過ぎる。こどもの笑顔は輝いているし、大人の充足感や心地よさも明らかだ。しかし…去年の海のサバイバルもそうだったけど、ちょっと忙しい。サバイバル要素を欲張ると忙しいんだよな。

竹を加工する


沢の水を汲む


野草のサラダ


サワガニの素揚げ


蕗とジャガイモのピリ辛味噌炒め


夜の山

昼間の山は知った顔をしている。アルモンデの森にはこれまで何度か違う季節にもお邪魔している。私が住んでいるところも『森』を名乗ってはいるが、全然人の手の入った森になっており、『自然にお邪魔している感』がアルモンデの森の方が数段高い。火を焚く楽しみは夜盛り上がる。暗闇の中の炎は美しく、そして頼りになる。夜の楽しみとして、持参した小麦粉を焼いて楽しむ。炭で炙っただけで美味しさが格段に上がるのはなぜだろう。棒も鍋代わりにしているのも手作りの竹製。焼ける竹からは竹汁がしたたり、竹の水分量のすごさも知る。竹があれば、切れば竹水も取れるし、こうやって火にくべても水分が確保できる。無人島でもまず竹を探したが無かった。夜は、野生動物もやってくる。身と夜の森を隔てるものはテントのシート1枚だけ。に、人間…?というような足音が聞こえたり、時々パキリと枝の鳴る音がしたり。なるべくもよおしたくないと思った。

今回は直火せず焚き火台で
炭火で焼くとただの小麦粉も美味しい!


排泄

トイレは、端っこで済ませる。女性には、以前作った囲いのあるところがオススメだ。新たな囲い案なども今回考えた。私は小さいペットボトルと手ぬぐいを使用して、紙を使わないスタイルを選択した。大の時だけは、柑橘をむいた内側のふわふわした部分を利用した。柔らかくてチクチクしていない葉っぱを使うのもオススメだ。お気に入りの葉っぱを見つけて欲しい。紙を使用するならば、紙袋を持参してもらい、紙袋に使用した紙を入れ、紙袋ごと燃やすスタイルとなる。私は土に排泄物を還したいと常日頃から思っているので、とても嬉しい。死んだ時もちゃんと土に還りたい。大量の水を無駄にトイレで流すたびに、違和感を抱いている。

竹で作った水入れ&焼き芋


やってみないと分からない。だからやってみる

そうやって生きてきたから、思いついたらやってみたくてたまらないのだ。そうしてやってみた今回のサバイバルキャンプ。当初2泊3日の予定だったが、キャンセルが出たり予定変更があり、1泊2日に変更した。去年夏には海のサバイバルを3泊4日で行った。だから山での1泊2日は余裕だろうと余裕を感じていた。ところが、今回リタイアがでた。

一つなら耐えられるが二つ以上はキツイ

今回リタイアの主な原因となったのは『寒さ』だ。熊本の5月は、昼間は夏、夜間は冬くらいの振り幅がある。昼間の陽気に気を取られて(水着も持参していた)、夜は秋くらいの装備しか用意していなかった。ホッカイロも用意していたが、その程度では(5つ貼った)間に合わなかった。思えば家ではまだ羽毛布団を使用している。冬用の寝袋を使用していた者は、寒さを感じながらも眠れたようだ。サバイバルにおいて『低体温』が気をつけねばならないトップ5に入っているのも知っていたのに。そして、そこまで寒くなってしまったのは、寒さに耐えうるほどには十分にお腹を満たしていなかったからだと思う。決して空腹ではなかったのだけど、もっと食べていたらもう少し寒さを強く感じなかったかもしれない。さらに、寒いということは、なかなか『眠れない』のだ。眠れないでいるうちに、だんだんお腹も空いてくる。2時間だか3時間だか、私も寒さを感じながら眠れないでいた。『寒さ+眠れない+空腹』の合わせ技。一番若い者が明け方シクシク泣き出した。そこでリタイアとし、家の温かい布団まで送り届けた。温かいものを食べて眠りについてくれた。私は、あまり食べないチャレンジをしていたので、そのまま眠ろうと試みたが、もう眠ることは無理だった。3〜4時間睡眠くらいだったろう。

ひとりで初火起こし

眠れないので火を起こしてお湯を沸かすことにした。今回控えのガスコンロも使わないことにしたので、薪に火をつけないことには温かいものをとることも叶わない。ファイヤースターターを駆使して1時間弱ほどかかってやっと炎を安定させることができた。実は前回も前日も、火付けは他の人がしてくれていたので、自分での完全火付け成功は初めてだった。他に人がいたら、途中で諦めてお願いしていたかもしれない。ひとりで挑戦できて良かった。起こした火で湯を沸かし、非常食として持っていたカップスープを飲み、パンを炙って食した。寝不足+過労を避けるために、簡単にお腹を満たす選択をした。シンドイ要素は一つまで。今回の学びを生かす。

自身を知る

そう、自分が血圧が低いことを、今回のキャンプ前の出来事で思い出すことができていた。だから寝不足で血圧が下がったら気をつける。鉄分が足りなくならないように補う。などなど普段からの自分の体の癖を知って対応を用意しておくことができた。とても大切な要素のひとつだ。無理をしないためには、自身をよく知っておく必要がある。身体だけでなく精神も。そして子どものことも知っておく必要がある。人間のことも知っておく必要がある。体が冷えると不機嫌にもなるし、心細くもなる。呼吸、体温、水、食料…人間が生きられる条件というものもある。

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