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【FF14】よいこのどうわ「クルザスの怪物」

その幻術師の男は人の話を聞かない阿呆だった。

『・・・・・・異端審問官が向かった裏手とは、恐らく東門の先だ。私がここで観察していたかぎり、あちらは人通りがなく、秘密が潜むのに最適だ。調査を頼むぞ。』

クルザスの寒さに耐えかね、ホワイトブリム前哨地の医院で暖炉に寄って丸くなるようしゃがみ炙るかの如く角を寄せていたが、話の切がついてしまったようなので仕方なく外に出る。目的地は地図に示されているのでそれに従い西の門を出る。すると崖を渡る橋の向こうに人影が見えた。
背に長い得物を背負った耳の丸い男の冒険者だった。彼も異端審問官を問い詰める材料を探しにきたと伺えるが、耳を真っ赤にしてまで崖の下を覗いては遠慮するようにうろうろとあるき回った。

うろうろ、うろうろうろ、うろうろ

吹雪によって眼の前は白い。試しに崖下に石を落としてみるも何の音もしない。
間違いなく地図はこの下を指しているがこんな高い崖から飛び降りるのは何か違うのではないかと丸い耳の冒険者は言った。
幸い男は足腰に自信はあったので率先してこの下へ落ちてみせた。吹雪であるから目の前が見えなくいつ足が着くのかと不安になった途端眼の前に黒い岩肌が現れ、間もなく着地した。足裏からびりびりと衝撃が走り空洞である角の中に反響する。頭の中が掻き乱されるような感覚に襲われるがすぐ立ち直り耳の丸い冒険者のいる上目掛けて叫ぶ。
「ここから飛び降りるのが良さそうだ。死ぬことはないだろうから、来てみてくれ給えよ」
吹雪によって声が掻き消えないか不安だったがそれは届いていたらしく間もなく冒険者が上から降ってくる。幻術師である男は即座に癒しの術をかけてやろうと杖を取り出したその時だった。

冒険者の背後に仄かに紫色に光った。それが6つほど現れたかと思えば一斉に男の方に強烈な電撃を浴びせたのだった!(ヒールヘイト)
「ぐああああっ!」
閃光を一身に受けた男は灼けついたような叫びを出すとその声目がけて冒険者が槍を突き出し光を吹雪く白雪ごと裂いたのだった。

「帰りはこちらですよ」

竜の死骸の側に転がっていた死体にから書簡を取り出すと冒険者が前哨地側へ伸びる道を指さした。成る程、本来はここから下るのかと男は大きい溜息をした。
冒険者の後を追い道を上がっていく途中、顔を上げるほどに高い崖の上から何人ものの冒険者が身を投げ出していた。今自分達が進んでいる道は間違い無く無血の為の最善策であるというのに。

膝だけでなく、なぜこうも心が痛むのか。
しかし、何事にも案内はあれば嬉しいのだがなあと、帰路を進んだのだった。

その後のこと、愚かにも人の話を聞かなかったある冒険者が何の迷いもなく件の崖から飛び降りたかと思えば…遠くて雪で霞んで見えにくかったが、この前の角と鱗の生えた幻術師の男だった。間違いない!その男が即座に飛び降りたのだ!その後暫く電撃の音が鳴り響き、止んだかと思えば男がおよそ23ヤルムも届く声で『帰りはこちらです』と叫び崖下を震わせたのをデュランデル家の衛兵が目撃したらしい。
ああ、こんばら こんばら


(この怪文書は筆者が新生エリアのメインクエスト「沈黙する真実」にて遭遇した出来事を元に作成したものです。尚一部フィクションが含まれます)
(実機では槍術士の方は即行で回復させたので事なきを得ました。当時一緒に落ちてくださった槍術士さん、本当にすみませんでした。)
(この童話は「人の話はちゃんと聞きましょう」という教訓のもとイシュガルド下層の子供を中心に読まれている訳がありません)

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