龍殺しの旅_2021/05/24

その剣は、物心ついた頃から男の傍にあった。

いつからあったのかは、定かではない。生まれる前からその家にあったものか、生まれた時に置かれたものか、はたまたその後なのか。今となっては誰にもわかりはしない。

確かなことは、男はその剣と生き、そして呪われていた。細身の男でも扱えるその剣には、刀身が無かった。刀身など、必要が無いからだ。呪われた剣は、相手によってその姿形を自由自在に変化させる。相手に合わせ、相手を殺す為に特化した力を、その時々で持つのだ。まさに、最強の剣であった。

けれどその剣には、既に述べたように呪いがかかっている。それは、斬った相手の数だけ、斬るべき怪物を増やしてしまう呪いだ。男は呪われた剣で戦う限り、永遠に敵を作り続ける。それらを斬り、また怪物を生み出し続ける。戦いの連鎖から逃れられない、これが剣に宿された呪いだった。

その呪いを、男は「嘘」と呼んだ。

剣の呪いによって、戦いの連鎖に身を置く男は、一人で生きる道を選んだ。誰かと共に生きることなど、男には到底考えられなかった。呪いの力で戦う男は、いつかその呪いが生み出した怪物に、殺される運命を悟っていたからだった。しかし、旅を続ける中で、男には友人ができてしまう。仲間ができてしまう。大切な人ができてしまう。孤独でいるべきだとわかってはいても、しかし男はどうしても、孤独に耐えられなかったのだった。

呪いに巻き込むくらいなら、死んだほうがいい。

男はそのように考えたが、しかしとうとうそれを実行することはできなかった。けれど、日々男の目の前には、剣の呪いによって生み出された怪物達が襲いかかってくる。このままではいつか必ず、剣の呪いで。いや、自らの嘘によって、周囲の人々を傷つけることになるであろうことは、明白だった。ならばと、男はあることを決心する。

嘘の剣を振るい、怪物達と戦い続けよう。

呪いを解く鍵は、龍が知っている。

嘘を吐きながら、嘘を斬り続ける男は、呪いの因果を断ち切る為に龍を探す旅に出た。剣の柄に描かれた、火を吹く龍を探し、殺す為に。それが呪いを解く、唯一の方法だと信じて。男はいつまで嘘を吐けば、龍に辿りつけるのか。龍を殺すことができるのか。嘘を宿した呪われしその剣の名を、人はいつしかこう呼んだ。


龍殺し(ドラゴンスレイヤー)


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