第三杯_藪をつついて蛇を出す_小説版『晒し屋』

 仕事をする上で最も重要なのは、仕事をしないことだ。その仕事は本当に、自分がやるべきことなのか。他人に任せた方がいいのではないか。よしんばやるとして、労力とリスクに見合うだけの対価はあるかを考える。場合によっては断り、場合によっては他人に仕事を流し、場合によっては交渉する。目についた仕事に飛びつくのではなく、まずはこうして仕事そのものを精査し、やらない仕事を明確にすることが、最初の仕事と言っていいだろう。逆に言えば、仕事なんてものは何をやるのか決めた時点で、半分以上は終わっているようなものだ。
 当然これは、殺しの世界でも同じこと。おまけに殺しの依頼なんてものは、依頼人は必ずと言っていいほど嘘を吐いている。依頼を断られそうな情報、状況、あるいは対象に関しては伏せ、無知な俺達を死地に送り込もうとする連中ばかりだ。だから事前調査は欠かせない。依頼人が何を隠していて、本当の目的はどこにあり、その仕事のリスクは何なのかを可能な限り調べ上げる。その上で問題の無い仕事だと判断した場合は、無知なフリをして引き受けてやればいい。
 ただ実際は、断り切れない仕事もある。やりたくなくても、望まなくても、避けては通れない仕事がある。そういうときは、流石の俺も腹を括るしかない。まぁ、どうせ最後に勝つのは晒し屋だ。例え、俺が死んだとしても。


「晒し屋様、搬入と清掃に参りました」
「ご苦労さん、それはテレビの前に頼む」
 キャップを深く被った作業着姿の清掃員達は、俺に頭を下げると、黒いテーブルを持って事務所に入った。前のテーブルは弟が笑った拍子に叩いて割ってしまったから、今度のは組織に頼んだ特別製だ。何で出来ているのかは知らないが相当重いようで、清掃員達が四人がかりで運んでいた。
「兄貴ごめん、気を付ける」
 弟は叱られた子供のようにそう呟くと、本当に申し訳ないと思っているらしく、清掃員達からテーブルをひょいと取り上げ、一人でテレビとソファの間にそれを設置した。一人の清掃員の口から「マジかよ」と声が漏れ、それを聞いたのだろう他の清掃員が慌ててそいつの頭を掴み、俺に何度も頭を下げていた。大丈夫だ若いの、それ俺がいつも思ってることだから。
「それよりいいのか、もう仕事の時間だろ」
「いっけね、そうだった!」
 弟はポンと手のひらを叩くと、慌てて事務所の出口へ向かった。
「じゃあ行ってきます!死んだら後お願いね!」
「おーう気をつけてなー」
 弟が事務所を出ていき、ドアが閉まったことを確認すると、清掃員の一人が「それでは」と言って手を差し出し、俺は用意していた鍵を手渡した。
 このビルは五階建てで、一階がバー、二階が事務所兼俺の寝床、三階が弟の家だが、四階と五階も俺が借りている。雑居ビルと言いながらも、このビルは一階以外は全て晒し屋のものなのだ。そして週に一度、組織の息がかかった清掃員達に、このビルの清掃を依頼している。仕事環境は常に綺麗にしておくべき、というスマートな理由も当然あるが、単純に普通のゴミとしては捨てられないものが多くあるからだ。
 仕事に関する紙の資料(電子化した方が危険なものもあり、アナログな紙を使う場合も結構多い)、血の付着した衣服、あとはちょっとエッチな大人の雑誌。とにかく他人に見られては困るゴミが、仕事柄多く出てしまう。そういうものを片付けるのに、組織の清掃員達は都合が良かった。
 同時に、組織が俺達を監視する上でも都合が良いわけだが、それくらいのことは目を瞑るさ。晒し屋が最強である限り、その力を組織の為に使う限り、問題はない。
 清掃員の一人が手を叩くと、三人の清掃員がそれぞれ三階、四階、五階へと向かい、それ以外は二階の事務所に残り作業を始めた。俺は邪魔にならないよう事務所を出た。階段を上がりながら、換気のため開きっぱなしになっているドアから、各階の清掃状況を伺う。三階の弟の家では、床に散らばったお菓子がベッドの上に綺麗に並べられ、窓の拭き掃除が行われていた。四階と五階も似たようなもので、中にあった数箱の段ボールが外に出され、窓拭きを行なっている最中だった。無駄なく、迷いなく、澱みのない彼らのスマートな仕事ぶりは、いつ見ても気持ちがいい。
 そしてもう一箇所、このビルで晒し屋が借りている場所がある。それが階段を上がった先、屋上だった。屋上に出た俺を出迎えたのは、青空と、それから床一面に広げた青いビニールシートだった。その下に隠しているもので、シートは僅かに膨らんでいる。風で海面のように揺れるビニールシートを眺めながら、俺は胸ポケットからココアシガレットを一本取り出し、それを口に咥えた。
「こちらも、いつも通りよろしいですか」
 俺を追って来たのだろう。さっき若手に頭を下げさせた清掃員は屋上へやって来ると、ビニールシートの前で片膝をついた。艶のあるビニールの海面が清掃員の手によって捲られ、その下に隠していたものが視界に入る。
「ああ、頼む」
 俺はそれだけ言い残し、階段を降りた。ビルの下で振り返り、今は清掃員達しかいない事務所と、それから屋上を見上げる。いつの日か、俺という存在も綺麗さっぱり、無かったことにされるんだろうか。そんな感傷に浸っている自分に気がつき、ハットのツバを手前に傾けた。
「だったら、なんだってんだ」
 屋上に晒された無数の生首が、俺を嗤っている気がした。


 晒し屋の暴力を担っているのは間違いなく弟だ。では俺が何を担っているのかというと、言わずもがな、頭脳である。もう少し具体的に表現するなら、情報と言っていいだろう。俺が殺しの現場に行くことはほとんど無いが、重要な案件の情報収集においては自分の足を使う。結局、最後に頼りになるのは自分の目であり耳だからだ。情報というものは、誰かを介した時点で、介した人物に都合の良いように編集される。意図していても、いなくてもだ。だから重要な情報は、最後は必ず自分の目と耳で確かめる。弟が現場で命を賭けるなら、俺は情報に命を賭ける。俺が弟にしてやれるのは、それだけだった。
「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」
「ああ、奥の席でもいいかい?」
 その喫茶店は、目黒区と渋谷区の境に位置していた。中目黒駅を北上し、池尻大橋駅付近を渋谷方面に歩いて少し先の路地に入ったあたりだ。だがこれはあくまで事務所から向かうなら、という話でしかない。俺はこの店の存在を知らなかった。渋谷で尾行していたターゲットが、この店に入っていくのを見るまでは。
「珈琲を一つ、ブラックで頼む。それとこれ、いいかな?」
 俺が胸ポケットからココアシガレットの箱を取り出すと、きっと勘違いさせたのだろう。店員の女性は「すみません、禁煙で、、、」と申し訳なさそうに頭を下げた。俺が彼女の前にそっと箱を差し出し「その方が助かる、禁煙中なんだ」と言うと、彼女は改めて箱を見て、それから俺の顔を見てニコリと笑い「ああ、もちろん大丈夫ですよ!」と言ってカウンター席の方へ向かった。その背を見届けながら、箱からココアシガレットを一本取り出し、それを咥えていると、店員の女性は入り口付近のカウンター席に座る一人の女と、何か話し始めた。
 この店には今、俺とそのもう一人の女しか客はいない。女は若く、十代に見えた。目立つ黄色いジャージ、それに毛先だけ赤く染まったボブ。この席からだと二人が何を話しているかまでは聞こえなかったが、ジャズの音色が心地良い店内に、時折その女の笑い声が場違いな音量で響いていた。
 俺が追って来た女、炎(ほむら)だ。
 渋谷の氷を殺すよう依頼されてから、俺は飼っている情報屋に呼びかけ情報収集に努めた。その際に名前が上がったのが、あの女、炎だった。氷と同じく渋谷を拠点としており、奴もまた何でも屋として活動しているようだ。何でも屋と言っても、町の便利屋さんというわけではない。迷い猫探しから殺しまで何でもやる、そういう意味での何でも屋。何でも屋に関してはスーツ女にもらった資料にも記載があったが、しかし炎、あの女の存在に関しては独自に調べなければ分からなかった。やはり他人に与えられた情報などアテにはならない。見たところただのガキだが、生憎俺は相手の嘘は見抜けても、相手の強さはわからない。俺にとっては格闘家だろうとそこら辺にいる高校生だろうと、勝てないことに変わりはないからな。
 だから、充分にある。
 あのガキが化け物である可能性。
 そもそも、店持ちでもない野良のチンピラが何でも屋なんてやれることがおかしいんだ。そんなことをしていれば、どこぞの組か警察か、あるいは組織が真っ先に潰そうとするはず。それも渋谷なんて目立つ土地だ。資料にもこっちの調べでも、渋谷の氷は二十そこそこの若造。そんなガキが殺されずにいるということは、俺の知らない化け物を飼っているか、それともーー。
「お待たせしました、ブラックです」
 考え込んでいるうちに、いつの間にか店員の女性は俺の前にいて、注文したコーヒーをテーブルに置いた。よく見ると綺麗な店員で、歳は俺の少し下くらいだろうか。茶色のエプロンには可愛らしい珈琲豆のイラストが描かれていた。
「ねぇ、お姉さん。あの赤毛の子ってよく来るの?」
「ああ、炎ちゃんですか。ええ、でも狙っちゃダメですよ。炎ちゃんには相手がいるんです。そう言ったら、きっと怒られちゃうんですけど」
 渋谷の氷のことだろうな、恐らく。
「また勘違いさせちゃいましたかね。俺は子供じゃなくて、貴方みたいな大人の女性に惹かれるんです。今晩どうです、お食事でも?」
「もう。掃除屋さんみたいなこと言って」
「掃除屋?」
「ああ、すみません。そういう常連さんがいて」
「その人は、あの赤毛の子とも仲良いいかい?」
「ええ、私にはそう見えますよ」
 彼女はそう微笑んで、またカウンターの方へと戻って行った。咥えていたココアシガレットを片手で持ち、もう片方の手で珈琲を口に運ぶ。舌の上に苦味が広がると、俺はカップを置いて天井を見上げた。手に持っていたココアシガレットを、そっと口に咥え直す。
 最悪だ。
 予想していなかったわけじゃない。渋谷は奴の管轄で、その渋谷で好き勝手に振る舞うクソガキのバックに奴がいることは、簡単に想像がついていた。だからこそいつもより入念に、丁寧に、わざわざガキを尾行してまで調べていたんだ。だが、だが。クソッタレが。渋谷の氷がいくら強かろうと、炎がどれだけ強かろうと、そんなものは晒し屋の前では関係ない。せいぜい同時に相手をすることのないよう配慮すればいい程度のことだ。晒し屋に負けはない。弟が負けることはあり得ない。
 だが、掃除屋は別だ。
 奴と戦いたくなくて、ずっとはぐらかしてきたってのに。
 混乱する俺の頭の中が整理されないまま、カランコロンという音と共に、その男は店内に姿を現した。白髪に黒のパーカーを着たその男は、炎の隣に座った。
 間違いない、奴が渋谷の氷。そうだ、今ここで奴を殺せば全てが終わる。依頼は達成され、掃除屋と戦う必要はーー、馬鹿が何を現実味のないことを考えているんだ俺は。俺に殺せるわけがないだろう。仮に殺せたとしても、掃除屋が報復に来たら結局戦うことになる。弟と、関わらせることになる。それだけは絶対にダメだ。それだけは、それだけはーー。
 待て、冷静になれ。
 まだ報復されると決まったわけじゃない。
 調べた限り、掃除屋は交友関係が広い。確かにこの喫茶店、そしてあのガキどもとの関わりはあるんだろう。だが、それだけだ。今確定していることは、それだけ。掃除屋にとって、奴らはそこまで大切な存在なのか?掃除屋だって、晒し屋の強さは知っているはずだ。もし正面から戦うとなれば、それは命を賭けた戦いになる。掃除屋にとってあのガキどもは、そこまでしてやる義理があるのか?もしああいうチンピラを複数飼っているとしたら、いいや飼っているに決まっている、だとしたらそんな奴らの一人や二人が死んで、それで晒し屋と手打ちになるなら、安いものじゃないのか?奴らとの交友関係も、本心からとは限らない。
 そうして俺はココアシガレットを噛み砕いて飲み込むと、席を立ち、奴らの座るカウンター席へ向かった。歩きながら、手をズボンのポケットに入れる。中のものの感触を確かめ、呼吸を整えた。
 思考は整理され、俺は冷静さを取り戻した、そう思っていた。だが後にして思えば、このとき俺はまだ動揺していて、自分の思考が事実に基づくものではなく、希望的観測の根拠集めに走っていたことは否めない。あらゆる情報から結論を導き出すのではなく、結論ありきで情報を求めてしまった。
 氷を殺せばそれで終わる、そう思いたかった。
「待てよ、おっさん」
 カウンター席に近づくと、背を向けていたはずの氷は、椅子を半回転させて俺の腕を掴んだ。その勢いによろめいた俺は、カウンターに手をついた。氷の隣に座っていた炎は、何事かと体を傾けこちらを見ていた。
「その手、ゆっくり出せ」
 俺はカウンターから手を離すと、氷に掴まれたもう片方、ポケットに突っ込んでいた手を言われた通り、ゆっくりとズボンから出した。
「弟が好きでね」
 氷に見せたのは、個包装された飴玉だった。氷が俺の腕から手を離し、舌打ちして「紛らわしい」と吐き捨てると、隣に座っていた炎が「紛らわしいのはテメーだ馬鹿!」と氷の頭を思いっきり叩いて、そこからはなんの意味もない言い争いに発展していた。何を見せられているんだ俺は。
「騒がしくてごめんなさいね」
 そう言って店の奥から出てきた店員に「いえいえ」と返事をして会計を済ませている間も「どう見ても怪しかっただろうが!」「怪しいのはアンタの白髪だボケ!」と二人は言い争いを続けていた。本当になんなんだこいつらは。
 兎にも角にも喫茶店を後にした俺は、ポケットからイヤホンを伸ばして耳に付けた。このイヤホンはスマホと繋がっていて、このスマホは受信機の役割を果たしている。事務所に向かって道路沿いを歩きながら、スマホの音量を上げていった。
『お前はもっと疑うことを覚えろ』
『そんなんだから白くなるんじゃん?』
『馬鹿過ぎて赤くなるよりマシだ』
『おじさんにお洒落は分かりませんよーだ』
 よろめいて手をついたときにカウンターの裏に貼り付けた、小型盗聴器の調子は良好だった。これで有力な情報が得られれば。なんでもいい。例えば掃除屋に対する不満、反抗心、とにかく奴ら二人と掃除屋に深い絆のようなものが無ければなんでもいいんだ。
『ーーさん、笑い事じゃないんだ』
『ごめんなさい。でもやっぱり仲良いなぁって』
『どこかだ!』
『どこがぁ!』
『ほらね』
 聞き逃したのは、恐らく店員の名前か。まぁそれはいい。しかしこいつら、もっと他に話すことはないのか。仕事の話とかよ。さっきから無駄話ばかりで全然スマートじゃねぇ。こんな一般人に毛が生えたような奴ら、やはり掃除屋が重宝しているとは思えないが、、、。
『(カランコローン)』
『あらいらっしゃい、そ(ブツッ)』
 そのとき音が途絶え、俺はその場で立ち止まった。誰が盗聴器に気づき、破壊したのかは言うまでもない。結局、有力な情報は得られなかった。それどころか『誰かに盗聴されている』という情報を与える結果になった。このときになって俺はようやく、自身の焦りを自覚した。
 だが、収穫はあった。三人が懇意にしている喫茶店、あそこの店員を拉致でもすれば、弱みの一つや二つは握れるかもしれない。あるいはあの店員自体が、奴らの弱みである可能性もある。まだだ、まだ。掃除屋と直接ことを構えずに済む方法はある。あるはずだ。
 確か喫茶店の名前はーー。
 そのとき抱いた違和感の正体を確かめるため、俺は掃除屋と出会すリスクを承知の上で、来た道を引き返した。結果として、氷にも炎にも掃除屋にも、会うことはなかった。同時に、さっきまでいた喫茶店を見つけることも、できなかった。
 俺は唯一の収穫である喫茶店の場所も、その名前すら、思い出せなかったんだ。


 その晩、翼竜の腹の中はいつにも増して静かだった。テレビが消えているのはいつものことで、ジャズの音量が小さかったわけでは、恐らくないだろう。ただカウンターで一席空けて隣に座る目の細い常連が、無口だった。ロックグラスを傾けると、氷がカランと音を鳴らした。先に沈黙に耐えられなくなったのは、俺だった。
「俺はいつから、間違えていたんだろうな」
 グラスを見つめたままそう呟くと。
「間違いではありませんよ。ただ、知らなかっただけです」
 隣からいつもより低い声音の返事があった。
「知らない方が良いことばかり、考えない方が良いことばかりだ。だが、情報は俺を必要とし、俺もまた情報を必要とした。その結果がこの様だ。何もかも上手くやろうとして、何もかも最悪のシナリオを進んでいる」
「仕方ないのでしょうね。互いに、自分の家族を守るので精一杯ですから」
 もう腹の探り合いをするつもりはなかった。
 どうせ今日が最後の夜になる。
「言っておくが、謝るつもりはない。俺は出来るだけのことはしたつもりだ。例えそれが結果的に状況を悪化させるものだったとしても、俺にはこれ以外に道は無かった。ただ、それだけのことだ」
「それは私も同じことです。仕方がありません。それに結局、避けては通れない道であったような気もします。先延ばしにすることはできても、結末を変えることはできない。元から、そういうシナリオなのでしょう」
 すると目の細い男は徐に立ち上がり、マスターに会計を頼んだ。奴のグラスの氷はまだ、半分も溶けていない。
「実はまだ、仕事を残していましてね。今日は早めに帰るとします。お転婆な後輩二人だけでは、心配で酔ってもいられませんから」
「お転婆なのは息子と娘、じゃなかったか」
 男は「そうでしたっけね」と微笑むと、支払いを済ませて店を出て行った。するとマスターが俺の目の前に、スッと何かを差し出して、それからさっきまで奴がいた席に視線を送った。俺はグラスの中身を一気に飲み干すと、胸ポケットからココアシガレットを一本取り出し、それを、、、親指でへし折った。
 僅かに散った白い粉が、目の前の壊れた盗聴器にかかった。 



 いつから間違えていたのか。あの喫茶店に足を踏み入れたとき、違うな。炎を尾行したとき、それも違う。氷殺しの依頼を引き受けたとき、いいや違う。最初からだ。晒し屋になったあの日から、こうなることは決まっていた。あいつは俺の弟で、俺はあいつの兄貴なんだ。名前なんか必要ない。これまでなんて関係ない。邪魔する奴は片っ端から、晒してやればいいだけだ。最初からそうすればよかった。シンプルで、スマートな答え。

 掃除屋、あんたには死んでもらう。
 弟の過去と共に、消えてもらう。



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