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【振り返り】2024年3月

こんにちは。東です。

さて、2024年3月を振り返っていきます!




【臨床】今月の臨床

テーマ|胸の痛みと変形性腰椎症

10年以上ご来院下さっている患者さんよりご紹介頂きました。

この数年にあった過大なストレスによって狭心症を発症。

次第に姿勢が悪くなり、変形性腰椎症となってしまいました。

結果的にはタコつぼ型狭心症と言って、一般には自然回復する比較的予後良好な、狭心症に似たの症状を発症する病気でした。

とはいえ、ストレスに起因して狭心症様の症状を発症します。

一度は非常用のニトログリセリンを使用するほど苦しくなり、救急搬送された経歴を持ちます。

現在でも鍼療の際には、非常時のお守り用ニトログリセリンを枕元に置いております。


1.胸の痛み

鍼灸院ではこのように、病院で検査し、現代医学と並行されながら鍼灸治療を受けられる患者さんはとても多いです。

この場合に鍼灸師の立場としてやらなければいけない事は、西洋医学的な検査や投薬の判断は西洋医学に任せて鍼灸の力を最も発揮できるように、東洋医学的に診察して、東洋医学的にアプローチをすることです。

この患者さんの症状は、脈診所見とツボの現れ方、会話の内容を判断材料として、肝鬱気滞に心脾両虚を兼ねた証として診定めました。


2.胸の痛みの主治

全身調整は証に随うとして、胸の痛みの主治(標治)穴として使用したツボは、手厥陰心包経手首に位置する内関穴(ないかんけつ)と、手少陰心経手首に位置する神門穴(しんもんけつ)

とても古い『鍼灸聚英』という書物の中に出てくる主治法方になります。

一応、枕元のニトログリセリンはお守りとして備えておくものの、現在では胸の痛みは訴えておらず、夕方になると変形性腰椎症による姿勢維持の困難さがありましたが、からだが伸びてきたとおっしゃっておりました。

まだ治療がこれで終わりとなるのは先の話になると思いますが、鍼灸が力になれたことは嬉しく思いました。

めでたしめでたし。


【教育】東塾

テーマ|膝痛の治療

今月は19,21日の2回やりました。

内容は「膝痛」です。


1.膝痛で考える西洋医学的なこと

膝痛を一つとってみても、思索をめぐらすことが沢山あります。

鍼灸師が膝痛で気を付けたいのは蜂窩織炎(ほうかしきえん)という化膿性病変です。

糖尿病の患者さんや浮腫みのある患者さんで小さな傷がある場合には、蜂窩織炎が潜在している場合があります。

その他にも、通常は足の親指あたりで起こるはずの痛風が、膝で発症する場合があります。

スポーツなど激しい運動をされていた方の中には、膝関節の中に小さな骨が挟まる関節ネズミで痛んでいる場合もあるし、靭帯を痛めている場合もあります。

必要に応じて病院での検査をする必要もあります。


2.膝痛で考える東洋医学的なこと

当院では大きく、下肢のフォルムと局所の状態という2つの指針で治療計画を立てています。

下肢のフォルムでは、股関節が外に開いているか内に巻いているか、足首の捻じれや土踏まずの崩れをみます。

それによって、変形性膝関節症の傾向か神経痛の傾向かを大まかに判断します

局所の状態では、炎症の有無を確認し、炎症の鎮静を第一に周囲の緊張を調えるようにします。

あとは、五感を駆使した東洋医学の診察と診断で証(今の体調や体質)を判断し、膝の治療に加えて体調全体を調えるように治療をします。

膝の治療には、お灸をしてから鍼をすると効果的です。

当院の4種ブレンドのモグサ

特に、竹輪灸が良く効きます。

竹輪灸


【研究】医学史の講座②

テーマ|統合医療の時代―現代の医療が東洋医学や相補代替医療に求めるもの

東郷俊宏先生による医学史の講座です。

【概要】

漢方や鍼灸だけでなく、アーユルヴェーダ(ヨガを含む)、アロマセラピー等の相補代替医療は90年代の欧米で現代医学を補完する新しい医療として注目されました。本講では

①早期から代替医療の先駆者として活躍してきたAndrew Weilの著作や90年代の米国医学界に衝撃を与えたHarvard大学のDavid Eisenbergの論文を読み解きながら、欧米における相補代替医療の再評価と今日の統合医療(Integrative medicine)へ向かうトレンド(日本を含む)について解説していきます。

②また同じ90年代に西洋医学も含めて医学界で中心的な考え方となったEBM(科学的証拠に基づく医療)について、「EBMの父」と呼ばれたアーチ―・コクランの戦争体験から説き起こし、その意義を解説するとともに、なぜ鍼灸分野をはじめとする相補代替医療分野の臨床研究は難しいのか、その理由についてお話ししていきます。

参照:東洋医学の未来と愛を考える歴史教養講座


1.本講座の感想

私が興味深かったポイントは、EBM(科学的証拠に基づく医療)という発想の根底にあった、アーチ―・コクランの戦争体験について、東郷先生が語っていた内容です。

要約としては、戦時中という心身共に過酷な戦禍の中でも生き残っている人間の自然治癒力に対する感嘆から、自然治癒力とは何か、そして自然治癒力が正しく再現性をもって機能するにはどうしたら良いかを追究することが、EBM(科学的証拠に基づく医療)に繋がったというものです。

アート&サイエンスの心を忘れないように。


2.日程

次回は第三回で、4月21日(日)の21:00~22:30。

期間は、2024年2~12月の全10回。

毎月、第3週の日曜日の21:00~22:30までやっています。

中途参加でも、過去のアーカイブを視聴することができます。

興味が出た段階でご参加頂いても全く問題ありませんので、ぜひ申し込みしてみて下さい!


▼申し込み|歴史の講座

講座の詳細はこちらからも見られます。



【連携】地域医療連携カンファレンス


テーマ|40代男性『主訴は腰痛、腹痛。医師の診断名 : 尿管結石』

一般的には泌尿器科で超音波粉砕治療を行う尿管結石という病態ですが、鍼灸治療で疼痛管理ができた珍しい症例報告でした。


1.カンファレンスの所感

今回も良き学びがありました。

尿管結石による腰痛は、総合病院ではコモンディジーズ(日常診療でよく見られる症状や病気)といわれます。

代表症状は側腹部にかけての腰痛

わき腹から膀胱の前にかけて痛んでくる症状です。

尿管結石による側腹部痛がなぜ起こるのかというと、尿管の平滑筋が石を出したいために攣縮することに依ります。

そのため、間欠痛(痛んだり、痛くなかったり波上)に痛みます。

多くの患者さん方は、健康診断で腎臓結石があると指摘があり、自覚がある場合も多いそうです。

一般に石のΦ1.0cmを基準とし、Φ1.0cmより小さければ自然に排出されることも多くΦ1.0cmを超える大きさになると超音波で破砕する必要があるそうです。

「Φ1.0cmより小さい結石による尿路結石の腰痛の緩和には、実は鍼灸治療は非常に良い方法なのでは?」という医師のコメントが印象的でした。

とはいえ、痛みが取れたために見逃してしまう1.0cmを超える結石についてのレッドフラッグは、感染による発熱です。

大きい石の場合は、尿管の平滑筋が石を出したいと思っていても、詰まってしまって排出することができず、感染して発熱することがあります。

小さい石では痛みは間欠痛でしたが、大きな石の場合はぎゅーっと詰まってしまうので、だんだんと持続痛に変わっていきます。

この辺りの基準を知っておくと、尿管結石という内科疾患であっても、鍼灸で対応できる範囲が説得力をもって広がるのではないかと思います!


2.参考論文

Acupuncture treatment for the management of urolithiasis: a case report|尿路結石症の管理のための鍼治療:症例報告


Effect of Adjunctive Acupuncture on Pain Relief Among Emergency Department Patients With Acute Renal Colic Due to Urolithiasis: A Randomized Clinical Trial|尿路結石症による急性腎疝痛の救急科患者の疼痛緩和に対する補助鍼治療の効果:無作為化臨床試験


3.参加資格と日程

【参加資格】
鍼灸を加えた地域医療連携・多職種連携に興味のある医師・コメディカル・介護・医療従事関係者、鍼灸師、及び学生です。

【講座形態】
動画配信(ライブストリーミング配信)ですので、全国どこからでもご参加いただけます。

毎月、第2・月曜日の20:00に行っております。

ご興味のある方はぜひお問い合わせ下さいませ!


▼申し込み|DAPA

4月8日(月)は、私、東が症例報告致します!


5.【開発】Φ3.0㎜の鍉鍼

弟子達と削りました。

純銀99.9%のΦ3.0㎜の鍉鍼

925や950といった純度の銀では、肌に硬くて冷たい印象を与えますが、この純銀製の鍼具は、柔らかく温かいものです。

自分で製作できるものもありますよ。

造りたい方はご連絡下さい。



今回も読んで頂きありがとうございます。ISSEIDO noteでは、東洋医学に関わる「一齊堂の活動」や「研修の記録」を書いています。どんな人と会い、どんな体験をし、そこで何を感じたかを共有しています。臨床・教育・研究・開発・連携をするなかで感じた発見など、個人的な話もあります。


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