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ワタツミの護符カードケースを作る

さて、アズレンの小物をちょくちょく作っているのですが、ヤーデの端末が8割くらいまできた。もうあと一歩だ!という頃に信濃が以下のものを取り出しました。

ワタツミの護符

お?何かめっちゃ良さげな小物じゃないですか。信濃そんな良さげなもの持ってたの。いいなぁ。ぼくも欲しいしちっちゃめのキーホルダーとか作るの良さそ……

この時ふと、脳内に以前見た上記フィラメントがちらつきました。これは3Dプリンターで使う原材料なのですが、なんと蓄光するそうです。蓄光と言えば淡い緑の光。ワタツミの色も緑。なんならちょっと光っててもよさそう。ワタツミの護符、光らせたくない?


光らせろ!!!!ワタツミの護符!!!!

さて、上のフィラメントで護符を作りたいところですが、どのように作りましょう。スクショは斜めなので比率はわかりませんが、まぁカードサイズとかでいいんじゃないでしょうか。そう言えばこれ中にいい感じにカードを入れて使えそうじゃないですか?ということで、標準的と思われるクレカのサイズが86mm × 54mmなので、これが収められるサイズで作るのが良いのではないでしょうか?

またこの護符は二層構造になっているように見えるのでどのようにケースとして組み立てるか考える必要があります。また今回は光らせる関係上加工は研磨のみに限られます。きれいに表面を加工することも考えないといけません。そこら辺を考えつつとりあえず立体にしていきましょう。

表面の柄

まずはInkscapeで表面の柄を作成します。

目コピ手作業でがんばる

斜めなので全部目で見て頑張ります。左上の桜は桜の形としてはちょっとあまり見ない形ですが、とりあえずこのスクショっぽさを優先します。

CADで全体像のモデリング

とりあえずざっくりとモデリングします。

模様を取り込んだ以外は基本操作で作成

模様部分の大半は浮き出ているだけのように見えましたが、勾玉だけはちょっと滑らかっぽかったのでちょっと淵を滑らかにしてみました。

またカードを上から入れられるように以下のように隙間があります。

カードを入れる隙間

完全に高さは適当なので、その付近はいい感じに調整できればと思います。

分割

次に中空モデルはプリントが厳しいので、上下に分割します。今回は完全に接着剤でくっつける気まんまんなので、それを考慮してズレがないように作ります。

中空構造が発生しないように頑張る

ここでテスト印刷をやってみましょう。ちなみに3時間超えです。でかいのは時間がかかりますね。

ひとまず出力して確認です。

カードはよさげ
無加工できっちり合体できる

大型の出力をしたときに生じる熱の歪みがあるものの、モデル自体には問題なさそうです。後は表面処理のテストです。もしきれいに削れない場合は模様を更に分離する必要があり大変です。

表面処理

さて、3Dプリンターの出力物と積層痕の問題は切っても切り離せません。今回は塗装やパテ埋め等の手法は使えないので、表面を物理的に削るなどの方法を使うしかありません。

そんな中、自分の使っているフィラメントであるPLA素材の積層痕を消すために、アクリサンデーを使う手法があるそうです。

PLAの接着に使ったのですが、こいつはPLAを溶解させて接着するタイプの接着剤です。つまりこれを表面に塗れば多少溶けてちょっとマットっぽい質感になるとのことです。ちょうどこちらを持っているのでその溶解による表面処理を試してみましょう。

塗料皿に出して表面に塗ってみる

とりあえず100均の筆があったのでそれで塗ってみます。

大量にかかった部分とそうでない部分がわかる

明らかに大量にかかった部分に関しては表面のザラザラがかなり軽減されています。この作戦なら表面処理も何とかなりそうです。

勾玉の調整

さて、中央勾玉ですがちょっとのっぺりしすぎなので頑張ってモデリングしてもう少しそれっぽくしていきたいと思います。

滑らか勾玉に進化

出力すると以下のようになります。

だいぶ滑らかになった

箱の調整

さて、持ち運びのために上の穴に紐を通すわけですが、実際に紐を通すとカードがいい具合に出入りできません。何らかの工夫が必要になってきました。

ひとまずスライドレールを作って箱と蓋を紐穴側にのみ動くようにできるかテストします。

上下にずれないスライドレール

ただし色々試作した結果縦スライドではなく横スライドの方が都合が良いことが色々あったので変更したり、ロック機構などもつけて以下のようになりました。

完成形

試作完成品は以下です。

閉じた状態
開いた状態

光らせよう

いよいよ本番です。蓄光フィラメントで出力していきます。まずはお盆明けに届いたフィラメントを確認してみましょう。

通常
蓄光

さて、どうなるかな?早速出力してみましょう。

デフォルト
蓄光!

光りますね。ただ問題点があります。3Dプリントでの生成物は時間とか原材料の節約とか軽量化とか諸々の関係で、充填率と見えない部分の形を決めていい感じにスカスカの状態で出力します。そのインフィルというのかな?の6角形の構造がモロに出ていて、模様が光ってしまいます。

使ってるソフトの充填パターン

思ったよりもフィラメントの透明度がありましたね……確かに言われてみればあの蓄光部分ちょっと透けてる感じあったわ。そんなわけで作戦変更して試作をしてみます。

左から100%、3Dインフィル、六角形

この結果から大雑把に以下のことがわかります。

  • 使うフィラメントの量が多いほど光量が強い

    • 同じ時間LED電球に光を当てて明確な差がでている。

    • ただし明るいとその分模様が見えにくい

  • 3Dインフィルの場合模様が見えなくもないが規則正しいモザイクみたいな感じになっている

とりあえず今回は3Dインフィルでもいいのでは?という気がしたので、こちらで行こうと思います。

表面処理

さて、ヤーデの端末を作ったときには研磨と溶きパテを駆使して削って盛って削って……の後塗装しました。しかし今回は蓄光を活かすため研磨以外の選択肢はなしです。とりあえずあれから試行錯誤してアクリサンデーも万能ではないらしいことが判明してきました。

  • 塗りムラが発生する

  • 大量に塗るとぶつぶつができる

    • 溶ける→なんかのガス発生?溶け方の差?中の空気が押し出された?

    • よくわからんけど過剰はNG

かといって研磨も厳しいです。

  • PLAが結構固くて普通にヤスリがけするのは途方もない時間がかかる

  • ミニリューター+平面のピット?を使うといい感じに削れるが問題あり

    • 細かい部分が削れない

    • 熱を持ちすぎてPLAが若干溶ける

    • つまりパワーが有りすぎる

  • ミニリューター+ワイヤーブラシは削れすぎる

    • いい感じに出っ張ってるところが削れるかと思ったがそうでもなさそう

    • むしろあんまり削れてないように見えて滑らかな部分が削れて穴が開く(中空構造なので)

  • ペンサンダーも若干非力

    • ミニリューターよりパワーが落ちる……というか押さえつけると軸が止まってほぼ削れない

だいぶ厳しいな?PLAの加工が難しいってこういうこと?

とりあえず各種問題を解決すべく以下のようにしました。

  • アクリサンデーを容器に入れて表面をさっとつけて引き上げる

    • 塗りムラと過剰に乗るのを阻止

    • ただし換気必須だし取り扱いが難しすぎる

    • 時間経過でちょっと歪む

  • 裏面は大まかに金属ヤスリで削る

  • その後お湯を利用して調整する

    • 表はお湯をかけて歪みを矯正

    • 裏はお湯をかけて耐水サンドペーパーで削る+これによる歪みを矯正

PLAはお湯に弱いとかそういうのを駆使して頑張った結果が以下です。

頑張って削った

加工にめっちゃ苦労した……誰だよこれなら楽勝でしょとか思ってたやつ!

さて、ここで再度ワタツミの護符(原作)を見てみましょう。

ちょっとテカってる?

多分勾玉を意識した石を磨き上げました!!みたいな加工になってそうなので、透明感と光沢感を感じます。もちろん本当なら研磨のみでここまで仕上げられたらいいですが、恐らくそれをやるならパーツごとに分離するかなんかこう言うのを作るのに適した研磨用の道具が必要でしょう。なんにせよ今の自分にはレベルが高いです。そこで、表面に光沢を出す透明なトップコートなるものを使ってみましょう。

何が水性なのかとか全く理解をしていないですが、こいつは透明なので蓄光に必要な光を遮ることもないでしょう。これを使って光沢を出していきます。

とりあえずやってみた

若干裏の凹凸が吸収しきれてないかな?でも同じ塗料なら重ね塗りOKらしいことはなんとなく把握しているので、何回かにわけて重ね塗りしていこうと思います。

完成!

そんなこんなで完成したワタツミの護符を見ていきましょう!!

テカリと模様はそれっぽい

いい感じですね。諸々の関係で白いですが模様とかテカリはぎり許容レベルにまで達してると思います。

開いた感じ

加工の都合で若干歪みが生じていますが、ちゃんとケースになっています。

そして今回のメイン機能である蓄光です!!


これが……
こうなる!!!光ってる!!!!!

単純な男の子なのでめっちゃ興奮してます。うっひょおおおおお!!!ワタツミの護符光ってる!!ちゃんと淡く光ってる!!!!

まとめ

ま、これくらい簡単やろ!勾玉ちょっと苦労するかもだけど、さっさと蓄光で光らせてきゃっきゃうふふするぞ!!と意気込んで作った箱もといワタツミの護符ですが、なんだかんだきっちり閉じれる箱として作ったり、勾玉の曲線を頑張ってモデリングするのとか結構初めての事が多くて大変苦労しました。(記事ではサクッと作ってますがなかなかいい感じにスライドせずに試作品が結構ゴロゴロ転がってる。)そしてそれを遥かに凌駕する表面処理のしんどさ……そうか……塗装ってかなり楽できたんだな……。また、素材に関する知識は仕入れておくもので、PLAは60度くらいから柔らかくなるから容器には不適切みたいな記述をさらっと読み流していたのですが、そこから応用してお湯で柔らかかくなるならそこから研磨すればそこそこ楽できるのでは?作戦がある程度効いたのは良かったです。他にも底が薄すぎて研磨限界が早めにきてしまったりその他設計の無理さなどが露呈したりとかなり苦戦しました。

そんなこんなでかなり想定外の苦労をして予定の何倍もの時間がかかりましたが、その分経験値もだいぶ得られたかなと思います。正直周年に間に合って本当に良かったです。また蓄光フィラメントは本当に楽しいので、表面処理を意識した作りにして何かを光らせたさが高まりますね。

ちなみに、未研磨ボディがいくつか転がってるので、なにかいい道具とかあれば別の方法で仕上げてみたいですね。

おまけ

試作品が完成した朝、前哨戦ストーリー:朱染断章3話が開放されたので読みました。

緑の淡い光……蓄光では?

ほんとに光ってて笑う。信濃ごっこできるぞ!

その他工作


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