みそわらびコラボ作品☆みそサイド

●おだてる上手さにワザも有り





勉強が得意技、運動が得意など、人には様々な得意技があるだろう。

私の得意技はというと、「切れ切れ攻撃」である。

切れ切れ攻撃とはロングヘアの女の子に髪をバッサリ切らせる技だ。

私は自分と同じ黒髪ロングヘアの女の子を見るとキャラが被ったようで嫌なのだ。
だから、小学校や中学校では切れ切れ攻撃をしてどんなロングヘアでもさっぱりと短くさせてきた。

最初は小学四年生の時だ。
同じクラスの美佳ちゃんはボリュームある綺麗なロングヘアだった。
私はこう言った。

「美佳ちゃんの髪の毛って長すぎてキモいって男子たちが言ってたよ。臭そうだって。だから切った方がいいよ」

美佳ちゃんはショックで泣き出してしまったが、休み明けの月曜日にはバッサリとショートカットにして来たのだ。
美香ちゃんの艶とコシのある美しいロングヘアを私の攻撃によって顎くらいのダサいショートカットにさせた快感は今でも忘れられない。

その時の快楽に味をしめた私はロングヘアの女の子には切れ切れ攻撃を繰り返した。

中学では、少し髪を切ろうかな〜と世間話程度に言った女の子に対して

「えぇ〜!美桜ちゃんがロングヘア卒業だって!バッサリ短くするんだって!」

と大きな声で話を大きくし、クラスの注目を集めさせて逃げられないようにした。

また、他にも、

「幸子ちゃんが好きだって言ってた芸能人が役作りのためにバッサリとベリーショートにしたね。もちろん、幸子ちゃんも真似するんだよね?さっぱりした幸子ちゃん楽しみだね!ねぇ、みんな!」

「失恋した?そっか〜。それは辛いね。そうだ!その長い髪を切って彼氏の事なんか忘れちゃいなよ!失恋したらバッサリ髪を切るってよく言うでしょ?短くしちゃいなよ〜」

「真由の髪ってすごい傷んでるよね。そんな傷んでるのに伸ばしても仕方ないから思い切ってショートにした方がいいよ!その方がモテると思うよ。切っちゃえ!切っちゃえ!」

どんなロングヘアでも私の切れ切れ攻撃でさっぱりショートにしてやった。今後も私の思い通りになるだろうと思っていた。

今日から始まった高校生活、ロングヘアが似合う美人な私は意気揚々と登校する。

この時の私は、自分が切れ切れ攻撃を受けることになるとは思いもしなかった…

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”切れ切れ攻撃”

なんていう遊びをしていた私ではあるが、別段学校で孤独であるとか浮いていたわけでもなくて

むしろ友達はたくさん居たし
人間関係もよろしく人付き合いは良好だった

敵がつくれない体質なのか、

攻撃の標的にした子らとも
なんだかんだで仲が良いのだ

しかし、高校進学で周りに変化があった

仲の良かった友人らとは軒並み離れてしまったのだ…
私と同じ進路を取った人がいなかったのはあまりにも想定外

というか、私が志望校を落ちて落ちて滑り止めに引っかかっただけなのだが、、、

最初から見知った顔が居ないというのは全くの新天地に来たのと同義

今まで当たり前に通用してきた友達ノリも、控えなければいけないだろう、、、

私の学生生活での人間関係は1からの振り出しに戻った

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ねっとりとした視線を感じるのは気のせいではないと思う、断言してもいいくらいだ

世の女性たちが背中に視線を感じると言っているのは決して自意識過剰な訳では無い

どんなに見ていない風を装っていてもイヤらしい視線には女性は気付いているぞ

ダメだぞ!男の子諸君!笑

私の場合は髪の毛に自信がある
世の女性が胸やお尻に感じる男性からの視線を髪の毛に敏感に感じる

それだけ私の黒髪ロングは男子たちに魅力的なのだから見られるのは当然!

と、、、

(若干ナルシスト気味で自意識の高い私の性格は、この環境下においてはよろしくなかったらしいということを後々に知った)

高校生活もだいぶ慣れてきた頃

私はさっそく仲良くなった友達らとわいわい話している中で、綺麗にしている髪の毛のことを自慢げに話題にしていた

それは、私のいつもの布石
”切れ切れ攻撃”への下準備だった

生まれながらの”S気質”なんだと思う

この子の髪もバッサリとイッちゃってもらおうかな☆

とか、、

どううまい具合にそういう方向に話題をもっていって、
どんな風に言って、その気にさせて、髪型を変えさせようかと思惑しながら会話をするのがもうクセになっているわけで

いわゆる”身内ノリ”が早くも付き合いの短い友人に出始めていた

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私は、先生とも友達感覚で話す

お堅くないフレンドリィな先生は、そういうのにも寛容だし
こちらも楽しい

私は、私と同じく長くて綺麗なストレートロングヘアの先生と親しく話すようになった、

比較的歳の近くて若い先生なので、話もよく合う

話題のスイーツの話、お化粧の話、

そして私たちロングヘアが共感する共通の話題の”ヘアケアの話”

「先生ってどんなケアしてるの?」

「いつから伸ばしてる?」

「切っちゃいたいな〜って思ったことない?」

こんな話題で親睦を深めていって
お互いにロングヘアあるあるなのか話題は何もかもが刺さり、共感して仲良くなっていった

マジで友達のように会話していたが、
同級生の友達たちよりも仲良くなっていってしまい、先生と話しているほうが多かったし
なにより楽しかった

そして、私はついに高校生になってからの第1号

”切れ切れ攻撃”の獲物をこの女性教師に決め、実行したのだった

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先生は、私と同じように
さらさら綺麗な黒髪ロングストレートだった

傍を通れば、ふわっと軽く舞う髪の毛に甘いシャンプーの良い香り

これこそ私が理想としている髪の毛と同じな

が、

私の言葉巧みな切れ切れ攻撃によって
なんと次の日にはもう散髪された姿をお披露目されることとなった

しかも、こちらの思ってた以上に短くなっている、、、

耳もスッキリと出されたベリーショート
ヘアに変身をしてきた

「どう!?よくないこれ!床屋さん行ってバリカンで刈り上げしてもらってきちゃった!」

しかもなんかめっちゃテンション高いし、、、

床屋、、、?

バリカン、、、?

と、想定以上の結果が出てきて驚いているところではあるのだがしかし、

”バッサリと切らせた”という事実が私を快楽へと落とし込んでいく

今回の場合は想定以上に切ってきたことで気分の昂りも強い

でもまあ、やはりというかなんというか
誘導して髪を短く切らせてきたからといって、悪い印象を与えたわけでもないし関係が変わるはずもなく

相変わらず先生とわたしは仲良く日々おしゃべりをしていた

そんな中で、ある日

「あかりちゃんってポニーテールしてること多いよね?ポニテが似合う人は実はベリーショートが似合うって言われてるんだよ?似合うと思うなあ〜絶対!もし短く切ったとしても勿体なくないと思うよ!」

「わたしのベリーショートも似合ってるでしょ?刈り上げはやっぱり床屋さんが上手なんだよ!」

「あかりちゃんもわたしとオソロにしようよ!黒髪ロング女子はベリショも似合っちゃうんだよ!」

ザラザラと音がしてくるかのように自分の後頭部を手で撫で付けながらニコニコと私に言ってくる先生

こんなことって初めて聞いたし、

ずっと自分の髪型はロングヘアが当たり前だと思っていた私にとっては
短いのが似合うかもって言われたことすらもなかったんだけど、

仲良くなった先生の言葉は心にジーンとくるものがあり、

そして丸々っとその気になった私は、

”もうロングヘアなんて要らない!バッサリ切っちゃいたい!”

”先生とオソロ!”

”床屋さん行ってみたい!”

と、一瞬にして洗脳されたかのように
大切にしてきた髪の毛に対する執着心が消え失せてしまって

もう、、、、

”切りたい切りたい切りたい切りたい…!”

状態に突入だった

その日の学校が終わったら、すぐ髪を切りに行こう!と決心していて、

授業中に隠れてスマホで

”床屋 近く”

で、ひたすらに検索をかけていた

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この”床屋”という
およそうら若い女性が利用する場所ではないのに
私がすんなりと入店できたのは
物怖じしない性格が理由のひとつにある

「お客さんですか?」

お店に入口から入ってきたんだからそうに決まっているのにそう言われてしまうのは
床屋さんに来るお客さんとしてはあまり見ない長さの髪をしている若い女性だから

髪を切りたい、という強い気持ちが一心にあったとしても
それだけの気持ちで普通の女性はわざわざ床屋さんに髪を切りに行かないだろう

”本当の刈り上げは床屋でしかできないんだ!”

そう思わせてくれるような髪型で私の前に現れた先生

先生と同じ髪型に、床屋に行って同じ刈り上げ頭にしたい!

みんながやらないからやりたくなる、
天邪鬼に少数派としての優越感に浸りながら、

わくわくの散髪タイムの始まりだった

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「全部短くして刈り上げちゃってください」

椅子に座り、散髪お決まりのてるてる坊主姿になったところで「どのくらいに切るりたいの?」って聞かれたので

私は内心はドキドキしていたが、何食わぬ顔でサラッと注文をした

入店した時は怪訝な顔をされたけど、
お客さんとして認識されてからはフレンドリー対応で、

「あらー大胆」

オーバーリアクションに手を口に当てる仕草をしながら冗談混じりにケラケラ談笑

私の注文した髪型に対しても引き止められることもなく通った

床屋のおばちゃんは

「スッキリやっちゃうよ」

と、この艶々ロングヘアを目にしてもなんの躊躇うことも無く、初っ端からバリカンを出してきた

人生初のこの散髪道具

よもや私が使われる日がくるとは思ってもみなかったモノが今ここに、、、

「え!?いきなり!?」

心拍数が途端に爆上がりした

使われることは想定してきてはいたものの、まさか鋏も使わず最初から出てくるとは思わず、、、

頭の動作をおばちゃんに支配される

クイッと下を向かされ、
長い髪の毛をかき分けてバリカンが首筋にヒヤリと侵入してきた

ヒューーーーーーーン

ジャリジャリジャリジャリジャリ

バリカンの甲高い機械音に私の髪の毛が刈り取られていく音が聞こえ出す

なんとなくふわついた心持ちなのか、まだイマイチ実感がない

一刈り、バリカンが後頭部から離されて
ざばっと目の前に滑り落ちてきた大量の長い毛を見て

”あ…”

と、ゾクゾクっとした

はじめての床屋
はじめてのバリカン
はじめての髪型

風に触れる髪の毛の爽快感
なにも体験したことのない初の感覚

私が切れ切れ攻撃によって髪を切った友達たちは
いくらバッサリとはいえどまさか床屋さんで散髪をしていたりはしなかっただろう、

はじめてづくしにご満悦
私は得をしたような気分だった

おばちゃんのバリカンの勢いは止まらない、、、

容赦なく刈り進められていくバリカンにコトバを挟む隙間もない

正直何を言っていいのやら声が出せなかった

あんなに大切にしていた髪がこうもあっさりと短くされてしまうんだと思うとなんか虚しい

今まで人のイメチェンを見ては楽しんできたものだが、やるほうは勇気いるなあと実感した

かくして私は、先生のようなスッキリとした超短髪
生まれて初めてのベリーショートヘアに向かって一直線に進んでいた

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耳に掛けられない髪
襟足がざらざらする

どこに手をやろうと、スルッとした長い毛を撫ぜる感触を見つけられない、、、

不思議な手触りを堪能しながら”先生とお揃いだ”とニヤニヤしながら歩いていると、

床屋さんからホントに出てすぐくらいの場所で、
偶然にも中学の時のクラスメイトの真由とバッタリ出くわした

「わゎ、、真由、、、!」

地元ではない場所でお店を選んだのに、なんというタイミングで、、、

真由は私の切れ切れ攻撃を受けて髪を短く切った一人だ、、、

それに、中学の卒業式以来会っていなかった

が、真由は変わらずショートヘアを維持し続けているようだった、
私が切るように仕向けといてなんだが、やはり真由にはショートヘアのが似合っていると思う

てか、
真由には黒髪ロングの私の像しかないだろうから、、、

「…ぁ、え!?もしかして、あかりちゃんなの!?」

「う、うん、、」

気付くまでに、やや、、
そりゃあびっくりするよね、、、

「いま床屋さんから出てきたよね!?」

「ーーーーーーーーーーーー」

そこから見られてたぁぁぁーーーーーーーー・・・・・・

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真由とあそこで偶然会えて本当によかった

私は腹を割って、事の経緯を説明して
ついでに中学生のときの”あれ”のことも白状した

なんだか、言いたい気分になってしまたたのだ、、、

で、話をしているうちに相談に乗っているようなカタチとなり、真由は真剣に聞いてくれて

真由からの結論は

”あかりちゃんとその先生は似た者同士”

だということだった、、、

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次の日、学校ではみんなにどうしたどうしたの質問攻めをくらった

ああ、あの頃に私が切れ切れ攻撃をした人はみんなこんな感じになってたなあ、

なーんて、

今になって当事者となり、その子たちの気持ちがよく分かった

すごく小っ恥ずかしい、、、

で、もちろん先生のところにも新しい髪型を見せに行った

いの一番に見せに行きたかったのだがガヤガヤ囲まれてしまったので仕方がない

しかしすでにもう先生に確認されているのはわかっている

授業の合間に廊下で遠目に
お互いニヤニヤした顔で
何回も目配せはしていたから、、、

そして、ようやっとゆっくりとした時間の取れる放課後に核心をドキドキしながら聞いてみることにしたんだ

「ーーーー?」

「ーーーー!」

真由の言った通りだった

そしたら先生は、びっくりするくらい私と思考が似ていたのだ

先生も、私の黒髪ロングを見て

”どうやったら短くしてくれるかな”

って考えていたらしい、、、

私から”切れ切れ攻撃”を食らったときにはもう先生は理解していたらしい

”あかりちゃんはわたしと同族”なんだと

せっかくの機会だからバッサリといってみたらしい

「内心はドキドキだったのよ〜笑」

そう口では言いつつも、この決断はなかなかできないだろうと感心してしまった

”私の”ベリーショート姿が見たいがために、自分の髪の毛をも生贄に捧げたのだ

私は、完全に敗北した思いだった、、

仕掛けているつもりが逆に仕掛けられていたのだから、、

裏を見せずに仕掛けられた巧妙な罠ってのは
気持ちよく引っ掛かるもんなんだなと自ら体験して気が付かされた

しかし、そのことがきっかけになり、
先生とは更に深く仲良くなることができた

思考は似たもの同士の友達感覚だが、あちらのほうが一枚上手で尊敬もできる
人生の先輩としてもいろいろアドバイスをもらったりもした

仲が良いとは思っていても実は表面上だけのこともあるから、自慢のようなことは同性には極力避けたほうがいい

とかアドバイスされた日には、、

私めっちゃやっちゃってたなあと思い返したら諸々出てくる反省点もあって、自分で自分が子供っぽいなと恥ずかしくなった

”切れ切れ攻撃”はたぶん生涯止めることはできないだろうとは思う

だって、知ってしまった快感なんだから

でも、今まで以上にうまいことこの仕掛けと付き合って、

世の中のロングヘア女性をバッサリとイかせてやろうと思う笑

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