本物の景色

私は演出している時によく

「景色」

と言う言葉を使う。


私はいつも劇場の最後列で時間を共有している事が多い。

お客様の呼吸、

明かり、音、場所、生きる人。

観ていると真っ黒に塗りつぶされた劇場が

景色に変わる。

その景色には色がある。

そして役者にとってスタッフにとっても舞台上から見える景色がある。

それは本当に毎回違う。

全力で生きる人。

気持ちを受け取る事を本気で観てくださる人。

互いに本気だからこそ

そこにある景色。


その景色には特徴がある。

ただの感覚だけど、

この場所だけじゃなく、

どんどん広がる世界に見える時がある。

まだまだ私はその世界に広がる

圧倒的な景色は産めたことがない。


一度打ち上げで今回の千穐楽惜しかった。

あったよあの先にまだあったよ世界。

と言ったことがある。

役者も同じ気持ちだった。

悔しいとしっかり思えて、

まだまだ楽しい世界だと確信した。


毎回確実に見える景色はあれども

まだまだある事はわかっている。

その景色を、その場にいる人全員に見せたくて

戦っている。


だから、自分にも創作者にも厳しくあるようにしている。

本気同士だからこそ。



お客様にはその空間へ誘導出来るように

客席にも細心の注意を払っている。


注意出来ない人は、それを一つ諦めている。


怒らない人は相手にも期待してないし、

創作物に期待もしてないと感じる。



かと言って私が現場でよく怒っているかと言うと

そうでもない。

理由はキャスト、スタッフのみんなが

間違いなくしっかりと目標を持っているから。

同じ方向を見ているから。



もう一度言います。

笑って逃げる、逃すときは、

相手に期待してない時です。


そんな創作者同士は


本物の景色なんか観られるはずがない。



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