小説「夢殿・笑うひと泣くひと」第三形態 本文5287文字
筆名 飛 鳥 世 一
22年02月作品
画・不染鉄・夢殿(昭和42年頃と推察するも詳細不明)
斑鳩の地を濡らす秋の長雨は糸を引くようだ。伽藍周辺でも季節変わりの雨を途切れることなくみせている。雨水に染まった玉石は濃い鼠色を纏ったまま微動だにせぬ。
柔らかな陽ざしさえあれば、白地に薄く藍を溶かし込んだ「石」本来の姿は訪れる参詣客の足元で、心地よい旋律を奏で聞かせるに一役買ったはずである。さながら天と地が繋がった合図を思わせるようで雨をおとす