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世一の閑題休ワ

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作品のためのヒントやみつけたもの、どこかで拾って来たもの、人からもらったもの、食べたり、観たり、感じたり…… 意外にも、五臓六腑に染みわたるようなものを集めた倉庫のような場所 因…
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#京都

詩編 『もう一つの夢殿』

人は泣きて生まれ落ちる 一生のうちに何度泣くかを告げられぬまま 知らされぬままに 潮満ちて人は笑うことをおぼえる 一生のうちに何度笑うかを告げられぬまま 知らされぬままに。 いつしか泣くことは、哭くことを選び 笑うことは嗤うことを選ぶ それぞれの夢殿を前に人 はたと気つく 何度泣けただろう 何度笑えたのか 哭いた数は九十九に及び 嗤た数は数知れず 生ける間に開けておくは 吾夢殿の扉であった と痴れば芳し          世一  さてまた随分と埃くさいものを