【断片文学】誰も知らない首の日
ただの生首より
耳を削ぎ落とした豚の生首の方が
いっそ丸々として
驚くほど惨めだった
この世の中に
あんなに悲しいボールはない
裸足の少年たちに
雨と泥の中
西瓜のように激しく蹴られ
転げて回る豚の首
白く突き出た頚椎の鳴き声が
冷たく濡れそぼった足の甲に刺さる
少年がぎゃっと叫び
途端に蹲って
どしゃぶりの石になる
みんな黙って
立ち尽くし
知らない顔になった
手には手の子供がおり
足には足の母親がいる
首には首の妹がいて
血と泥と一緒に掻き抱かれ
寂れた一本道を