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うたがわきしみの宇宙Ⅱ

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140文字では収まりきらなかった、うたがわきしみの世界観。コラムやエッセーやうわごとじゃない。あくまで、なにかしら、きしみの宇宙を匂わす作品になっているものたち。主に詩。ギャグ系…
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2023年4月の記事一覧

【詩】 炎だったかもしれない 風だったのかもしれない 細い布団を敷いても 助からない命 思い出せない 空の名前 頭の中が燃える合図 キラキラとした雪解けの川を 黒板が流れて行く 六畳一間に沈む 最後の授業 「春を消さないで」 #いのち時間シリーズ #写真 #詩人

【悪夢】ちょぷっ!

絶対に想像しないで聴いてください 時間は正午くらいだったと思います 雨は降っていませんでしたが 薄曇りで 風がやけに肌に纏わりつき 生ぬるい水槽に浸かっているような 気味の悪い天気でした あなたが散歩に出ると 近くの国道を大型トラックが頻繁に 相変わらずの猛スピードで ビュンビュン飛ばしています ゴツくて大きいタイヤを見つめていると なんだか吸い込まれそうです 実際 体が少し 持っていかれた気もしました ぞくりと身震いがして 背中に嫌な汗が吹

【掌編】びいどろ先生

びいどろ先生 檸檬は将棋に入りますか? 人から目玉が失くなっちゃったよ 多分神様とかのせい 最初みんなただ真っ暗で 盲になっただけかと思った でも顔を触ってみると 目の辺りがのっぺら坊みたいに つるつるで 触って失神する女の人もいれば パニックになって走り出して 車に轢かれる男の人もいた 誰かさんは 口を開けっぱなしの 仮面ライダーみたいになって ひゃめんひゃいだー ってうわ言のように繰り返してた 百々目エノキのせいだね どどめえのき? 人くらいの巨大なエノキで

【詩】綺想曲

アンキロサウルスを 銀座に突っ込んで にぎにぎしてやる 家に着いたら 下腹部が心地いいように アロエを舐め回すんだ 夕食後はサボテンを水槽に沈め 己のトゲで自殺するまで 小一時間眺める 何かの雌が 虹色の宿便を ひねり出す瞬間も 忘れずに録画する 夜は覚えたての非鳴法で 鳴き声を殺して眠る もうすぐ五度目の脱皮が始まる 海という海が死んだ 誰も知らない人類の王国で 唯一割れなかった鏡が 後ろめたく潮騒を取り戻す 映し出された音は誰? 夜の尻尾は悪魔色 遠くで月が跳

【掌編】君の赤いマフラー

――その日 一人のホームレスを 純粋に助けた 君 君だけは 救われると思ってた 神様が ちゃんと見てるはずだから なのに―― 富裕層だったから? 髪が金色で美しかったから? 正義なんて不純なものを愛してたから? 見つかって 集団でホームレスに輪姦され ――翌朝 交差点の真ん中で 全裸に剥かれたまま 冷たくなってた 幻みたいなマフラー巻いて 神様 見えますか 見えてますよね 首だけ―― 首だけが赤くて寒そうです ホームレス達が商店街で叫んでる 一枚 また一枚 シャ

【詩】儚くも最終兵器

寂しさは人を破壊する それで時折 畜生に堕ち 精液を撒き散らすしか出来ぬ化物となる 貧しさは人を腐敗させる だから時々 餓鬼道に墜ち 何を得ても満たされぬ獣となる 病と老いは 物心両面で人類を駆逐する 神の最終兵器だ 我々が対抗措置として その保持を許されたものは たった一つ 希望だったか

【断片小説】微少女

機械なのに人と同じく 言霊を扱えるようになった 人形少女―― 生きていることが 奇跡みたいな 微少女だった 拮抗した生死のうち 痛みだけを触手に握らせ 井戸の底で深淵の綱渡りを続け 僅かに生の表面張力で流れ落ちずに しがみついていられただけの 性奴隷人形 二人で 魂を共有するように 嘔吐いた 〈了〉 ※↓インスパイア先、ゾクゾクします

【詩】 転がっていく花びらみたい 君の骨 月の灰と一緒に風になり 夜色を纏う桜を死に染めていく 膝から崩れ落ち 黝い幹で額をかち割れば 血吹雪の中で笑ってる 君に会えるだろう 何度でも 何度でも 春は僕の血で甦る

黒縁メガネをかけ 隙あらば口を尖らせ 「トゥーートゥットゥー!」 って鳴いてる女子高生 肩口までの黒髪が白い制服の上に映え 清潔そうに見える ドングリまなこは鳴いてる時寄り目がちになり シャボン玉を吹いている幼い少女に見えなくもない 多分 宇宙人だ うちの団地の 好きだな

【断片小説】青から覗く白

毎日 傷だらけで訪ねてくる君を 絶対助けないと決めていた 無論理由も訊かない 空き缶拾いのこの僕と SEXする理由も 互いに涙を溜めながら 体だけで交わす 海と膿 霧雨けぶる川沿いの小屋 ビニールシートの青から覗く白い乳房 胸の刺繍 女工の匂い 舌を入れると 歯が一本も無い 〈了〉

【詩】クラムボン

『クラムボンは死んだよ。』 世界から光が消えた闇の中でも ザリガニは泡を吐くだろう 黒目もつぶらに光るだろう 群青色の胞子が散る星空みたいなドブ下で 清潔なコンクリートか 深海のコールタールか 選べ 『クラムボンは殺されたよ。』 一生涯 正座もでぎずに軋む ニホンザリガニの背骨 それが僕 君がコンビニで煙草を買う時の 千円札と 僕が泥水の中で握りしめた 千円札は 同じ味だと思うかい まったく同じ一杯のラーメンでさえ その味の重力は誰にも選べない 『クラムボンは死ん