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うたがわきしみの宇宙Ⅱ

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140文字では収まりきらなかった、うたがわきしみの世界観。コラムやエッセーやうわごとじゃない。あくまで、なにかしら、きしみの宇宙を匂わす作品になっているものたち。主に詩。ギャグ系…
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2023年3月の記事一覧

【自由律絶句】 友達なんていらなかったくせに

本日死神と手を切りました なので僕は二度と死にません むしろ死ねません 表面的には人間として衰え ひとたび滅びはしますが 本質的には不老不死で永遠に属します いのちは壊れないのです 壊せないのです 僕にも 誰にも ひとえにそれがわかるための 生涯でございました あなかしこ

僕という孤独の立方センチメートル #自由律絶句 #自由律俳句 #一行詩 #詩人 #詩 #生きて会えたら絶対又吉直樹と友だちになれてる

【五行歌】ふたりで独りの夜

【ストレートプレイ】 傷つけて ぶつかり合って 痛み抱く夜 初めて気付くふたりの距離 冷めない温度は何処? 【きしみフィルター訳】 とうとう君の脛がぱっくりと たらば蟹の脚のように割れ 中から果肉みたいな蛇が出てくる 私の血が重かったせい? 股を開いても会えない夜

【詩】春が弾けない

君の死体 ピアノみたいに弾いてみたい 棺の上で自慰するように その小さな胸の黒鍵も 下の茂みの白鍵も 指を開いて蜜まで届く 「いま何が弾けるの?」 何でもさ 雨とか灰とか神様とか 弾けないのは春くらい 「私の部屋のドアノブを舐めた時 初めて勃起した曲は?」 ああ 君のあそこは 確かに業火の味がした 無音の海 桜の煙が染みて逝く 春が弾けない 弾けそうにない 《了》

【詩】ちゃんと愚かで忌まわしい

愚かさまで ちゃんと愛せちゃったんじゃない 苦しいのは 痛いうちが華 痛くないなら恋でもない 雨に濡れた 自転車のスポークを 目に刺しても 見える血になるの 宇宙の背骨という背骨を抜いて 骨抜きになるまで 抱かれ果ててさ 翌朝には 干からびた子猫の死体から 可愛いピンクの舌がのぞく

【一行詩】 永遠の三秒前で生きてます #一行詩 #詩人 #詩

【詩】風景

半裸で裸足の娘が 往来の真ん中でペタンとしゃがみこみ 「死にたいよ~!死にたいよ~!」 と泣き叫んでいる 母親が覆い被さるように 娘を抱きしめるが 悲痛な声は激しくなるだけ 父親は口と腰に手をやり 青ざめた顔で立ち尽くしている それを 皆見ない 視界に入ってるのに 見ない 僕だけが見てる

【自由律俳句】 あなたのバス停で待ってます 咲く:うたがわきしみ

【一行詩】 冷めてもおいしい珈琲みたいな人、君 咲く:うたがわきしみ

【詩】胸騒ぎ

湯が出しっぱなしの浴室 踊りたいだけの姉が家中でターン 洗い場で古いストーブが焚かれる 僕は嫉妬深い大型犬と戯れ 風呂桶から溢れた湯がストーブを浸す ジュッ 湯を出した母は戻らず 脱衣場にも湯が満ちる 次女は母を呪って働かず 踊る姉は汗を振り乱す 湯を止められない僕はただSEXする

【詩】ぬくもり

お婆ちゃん もう目見えないの? 耳も? リウマチ…指もダメってこと? 膝も? じゃあずっと寝たきり? 歯も無いし 全然美味しいの食べれないじゃん てかあちこちガンだらけで トイレも一人で無理って… もう一緒に旅行も行けないじゃん ねぇ お婆ちゃんて あと何ができるの? 「まだお前を愛せるよ」

【詩】どしゃぶりの声

遠くから書かなきゃいけない 一番遠くから 螺旋の端の大渦の 泣いてるでしょ そこだって もう 雨が甘かったら 無かったことにできた? 立っていられた? 傘は 一人で 死にました 中芯部の笑顔には声が無い 吃音を獲得できたどしゃ降り 言ってみれば ずっとストーブの後ろ側で 生きてきた 寒い飛沫

姿無き殺人者 その名は、孤独 孤独は人を殺す 音もなく忍びより じわじわと苦しめ 放っておくだけで 確実に息の根を止めに来る 普段は影に棲みつき 昼でも夜でも襲ってくる 独り身老齢病身 連中の大好物だ いつ誰がターゲットになっても不思議はない 人は皆死神を飼って生きている