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うたがわきしみの宇宙Ⅱ

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140文字では収まりきらなかった、うたがわきしみの世界観。コラムやエッセーやうわごとじゃない。あくまで、なにかしら、きしみの宇宙を匂わす作品になっているものたち。主に詩。ギャグ系…
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2021年3月の記事一覧

気まぐれという必然を信じてるんです

一言で言えば巨大な豆腐船です あちこちうまくくり貫かれ 人が出入りできるようになっていて ふるふる震えながら 海の上に浮かんでおります 何もかも豆腐で出来ている為 乗る方も無闇に走らぬよう気を使いますが 何人かはすでに 甲板に埋もれているようでございます ではチケットの醤油をば…

たいていの場合 この世の終わりみたいな顔で 髪を切られるんです 鏡に映る君は 黒髪のおかっぱ姿 そばかすだらけの 軽く盛り上がった頬骨の先で つんとすました鼻が 意地を張るように ちょこんと鎮座してる その瞬間の君こそ 完璧な作品だったんだから 一生鏡に閉じ込めるしかなかった

ときどきは遠い物語を ポケットにしのばせて

絶対的に何かをしなければならない時ほど 絶対的に何もしたくないことが多く したがって日がな一日 ひたすら家の中をうろうろ うろつくことになるのです そうしてふと立ち止まり 普段なら けして見つけられないようなところに張り巡らされた 小さな蜘蛛の巣に見入って じっと佇んでいるのです

結局あたしは チンジャオロースなんだ せっかく温めて 忘れられてる チンジャオロースなんだよ 四角いレンジの中で 独りぼっちのさ 「もうチンジャオロースは嫌だ!」って 死んでいった友人もいた 青いピーマンみたいな顔してさ 本当はもう地球人全員が チンジャオロースになるべきなんだ

あの頃何を考えていたのかといえば恐らく何も考えてはおらず。けれど本当に何も考えてなかったかと言えば実はそうでもなく。「あぁ僕は何も考えてないなあ」などと、薄らぼんやりとしかし確実に考えていたのである。まるでドーナツの穴に質量があるみたいに。 うたがわきしみ著「おバカな天才」より

風の曲がり角におります

誰にも勝たなくていいよ 自分に負けなければ