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うたがわきしみの宇宙Ⅱ

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140文字では収まりきらなかった、うたがわきしみの世界観。コラムやエッセーやうわごとじゃない。あくまで、なにかしら、きしみの宇宙を匂わす作品になっているものたち。主に詩。ギャグ系…
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2017年8月の記事一覧

『ハサミ男』

毎週日曜日なると、うちのドアポストにハサミを入れる男がいる。静まり返ったベッドタウンの深夜、午前零時から始めて1時間ごとに1挺ずつ。 アパートの二階から見下ろせる電信柱の裏にその男が今も佇んでいる。いつもそこから一時間ごとにポストに通ってくるのだ。 夏だというのにトレンチコートで身を固め、両ポケットにじゃらじゃらとたくさんのハサミを入れている。 顔は目深にかぶったキャップで見えないが恐らく人ではない。それだけはわかる。 カチャン。 午前三時、また1挺追加されたようだ

ラング・ド・シャって口にしたいのばれてる

すごい、を、すこい、にしたら、世の中少しだけ間抜けになって平和になれる気がすゆ 地球という星は、すこい、すみよい♥

「わたし、カフスと結婚します」というので「ボタンの?」と訊くと「概念の」と応え姿を消して、そのまま行方不明です。妻が。

あなたが煮たブリ大根だけでロボットを作ってほしい

魚を得た水のように笑った

雨後のちょっと増水した川が、好き

駄目男こそ好きになる女の幸薄さにこそ惹かれる駄目男

そばかすがあっての君

『夜空をポケットに』

むかし夜空がまだカーペットだった頃 砂漠には月の欠片がたくさん落ちていて それを目印に旅をしていた 星の骨を拾う気持ちで 涙の化石を探しては ただひたすら途方にくれていたっけ あのときの夜空が今では宇宙を包み込み まとった星さえ泣かせてる さざめくようにしか輝けない 僕の空みたいに