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うたがわきしみの宇宙Ⅱ

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140文字では収まりきらなかった、うたがわきしみの世界観。コラムやエッセーやうわごとじゃない。あくまで、なにかしら、きしみの宇宙を匂わす作品になっているものたち。主に詩。ギャグ系…
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2017年6月の記事一覧

『はた迷惑な家族』

「え? 沖縄に出張って……信じられない…… どうして? どうしていつもそうなわけ?」 「フウ子ちゃん、我がまま言わないで。ね?」 「だって、次は絶対絶対絶対ッ四国に連れていくからって約束したじゃん!」 「お父さんだってお仕事なんだもの、仕方ないでしょう?」 「いっつもそう! 仕事仕事仕事って!」 「……」 「仕事が大事なのはわかるけど、私だってずっとずっと楽しみにしてたんだ! お父さんの仕事と同じくらい私にとっては大事な約束だったんだ!」 「フウ子、あのな――」 「言い訳なん

『飼い殻~KAIGARA~』

唯一の肉親だった祖母が死に、ボクの友達は絶望だけになった。 祖母だけは味方だった。 祖母はボクの全部だった。 女なのに「ボク」って言っちゃうのはどうしてなのか。 自分でもわからない。 ひたすらに絶望を研ぎ澄ませていると死の領域に入っていくしかなくて。そんな風にしか考えられなくなってしまうというのは、要するにボクはきっと、愚鈍な愚か者なのだろう。 死ぬ前に何か楽しいことはないかとふらりと入ったお店だった。看板には巻貝っぽい不思議な絵が描かれており、なぜか貝本体がいるべきは

『覚醒』

気が付くとそこに立っていた。記憶喪失だろうか。自分の名前すら思い出せない私以外の連中も同じなのだろうか。みな、寡黙に押し黙ったまま茫然としている。 番号のついたネームプレートをつけられ、綺麗に整列させられているところをみると、何か悪いことをしでかした報いを受けているのだろうか。 青ざめた顔してる奴もいれば、血の気のひいた白い顔の奴もいれば、肝臓に疾患があるのか、病的に黄色い顔の奴もいた。 ――っう! 突然、頭の中に白い閃光が走り、記憶がフラッシュバックする。無骨で無機

『ちーちゃんとかれはさん』

丘の上のまん中に、白くて大きな建物がたっていました。 その中庭に、太っちょの木が一本はえていました。 太っちょの木がいいました。 「オラオラ! はっぱども! さっさと光採りこんでエーヨー運ばんかい! 太陽はんかて、いつまでも 照ってるワケにはいかんのやで! 陽がくれてまうわ!」 はっぱをかけられた はっぱたちは 夏のあつい陽射しの中、汗をカキカキ働きました。 たくさんの光をエーヨーにかえては 太っちょの木に送らねばなりません。 はっぱたちがヘーコラヘーコラ働いている間

『父親のかけら』

人には言えぬ苦労の末、 私はついに有名女優へとのぼりつめた。 ――それが届いたのは、 ブログで婚約発表した翌日だった。 蒸発していた父の訃報だった。 3年前、リストラされた父は 私たち家族にその事実を打ち明けられないまま、 姿を消した。 警察の話では、 季節労働者としてあちこちを転々とし、 暮らしていたらしい。 その日――ネットカフェにいた父は、 突然血相をかえ、どこかへ飛び出したという。 そして、大きな荷物を抱えて 戻ってくるところをトラックに跳ねられた。 運

東京には風がない。本当の意味で風を理解してる人がいないのだから。

好き、という鎖 嫌い、という楔

恋愛銀行から恋を引き落として 愛人バンクに愛を振り込まないと

マルチLOVE 多角的に愛して

「I LOVE YOU」をnoteの世界で意訳すると 「あなたというマガジンをフォローしました」 意訳:うわがわきしみ

雨なら引き出しの中で降り続けてる

君の時間と心 奪いたくて書いてる うたがわきしみ

「前へならえ」が苦手

『雨ソムリエとして名高いうたがわきしみがあの○井○里ぱいせんに寄せて書いてみたコメントはこちら』

したたりを、一行で、音で、言葉で、ぼくは表現して、それはそれで成立してるんだけど、ちくわさんは、それを拡大鏡を使って、1を100にして見せてくれる。神は細部に宿るというけど、天才は遊び心に宿るんじゃないかなあ。 詩の遊び方、味わいかた、もちろんそれは人それぞれでいいんだけど、これまで、そんな情緒の世界というか、僕たちが見てる言葉の海を、今まで振り向きもしなかった人たちにまで、ほら、ね?楽しいでしょ♪って垣間見せて、重奏的に、あるいは、重層的に見える化して、人生を豊かにしてく