『幸せ屋』~岸和田老人の奇妙な一日~
岸和田はどうも健康すぎると日頃から思っていた。齢九十にして意気益々健康、血気盛ん。精力絶倫にして毎夜酒池肉林の宴を催す日々。特に健康なのは歯だ。入れ歯も差し歯もなく、あろうことか虫歯にも一度も縁がない。ある日これではいかんと思い立ち、岸和田は早速、虫歯屋に向かうことにした。
梅雨が明け、外はすでに猛暑の夏の気配。なにもこんなうだるような暑い日に、とも思ったが、思い立ったが吉日と、岸和田は最寄りの駅へと駆け込んだ。
当前のように線路はうどんでできていた。
干からびもせず、白