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うたがわきしみの宇宙Ⅱ

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140文字では収まりきらなかった、うたがわきしみの世界観。コラムやエッセーやうわごとじゃない。あくまで、なにかしら、きしみの宇宙を匂わす作品になっているものたち。主に詩。ギャグ系…
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2016年7月の記事一覧

『悲しみレンズ』

三角定規で透かした空の 突き抜けた青さは 残酷なほど空っぽで 誰もいない公園で のざらしになったブランコは 今日も静かに揺れるでしょう 赤いハサミは 伸びた前髪を切るためじゃなく 引き裂かれた制服は どこにも行けないわたし 頬にタイルの冷たさと 指の隙間に屋上の風 厳格な祖母の尖った声と 暗い倉庫の錆びた匂い 生きている言い訳を 糸みたいにたぐりよせ 死んではいけない理由を アルパカの瞳のように 雄弁に語れたら 自分の呼吸を見つけられただろうか? 夏の太陽も好きにな

『みどりなす草原へ』

みどりの風がざわざわと鳴く みどりなす草原の真ん中で ドングリ色の丘ネコが 直立不動で立っているよ 大きい瞳をギランとさせて 口元はウシシと笑っている また椅子を忘れてきたのだろう やけに嬉しそうだ 何をしているのかはきかないよ “ナニモシナイ”をしているに決まっているから 草原にかかる七色の虹は 七つの宇宙で一番ぐうたらな線路 みどりの風がざわざわと鳴くときだけ きまぐれでうっかり出てくる 線路がかかると 虹色電車が キラキラごとんとやってくるよ 虹色電車が 丘ネ

『朝焼けになった君』

――毒々しいほど赤く あでやかな朝焼けを見るたび 夜空を、殺してしまったことを思い出す 君を、永遠にしたかったわけじゃないのに 空の匂いをかぐとき 顎をつんと反らせて 瞳を閉じる君は まるでそよ風に溶けるように 透明な顔になって ボクを一人にする (こんなに美しい白い喉をボクは見たことがない) だから僕は空にメスを入れる すっと線をひくようにスマートに びらんとめくれあがった空の裏地は 恥ずかしいほど夜色で 星屑が蜜のように溢れだす ボクがそうすると 君は一瞬眉を八の字