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おやすみアザラシ 人語台本


(遠洋漁業に出ていたら氷山にぶつかり座礁し、南極辺りに漂着して辛うじていきいるがもうすぐ死にそうな人間。喋る気力はない。アザラシが全部勝手に話してる)
あざらしなのでふわふわ、整合性はない 
あの一人称は『あ~』。中性的でのんびりとした少年風  夢先案内人のような、死の世界に連れて行ってくれる青白い無邪気さ

ねぇ、ねぇ~ぇ  君、だぁれ。
わかんないの? ふぅぅん、面白いねぇ
あ~もわかんない 。 でもまえきたきみみたいなのは、あ~のことおさえてアザラシっていうんだよ アザラシってなにかな?
なんでここでねてぇるの?この間までおっきくてこわいやつの住処だからね、ちかよんなかったんだ  でもね。
最近見なくてさ。海が静かだから来ちゃった、そしたらね、きみがいたからね! びっくりしたけどはなしかけてみちゃった。 おかあさんにばれたら叱られちゃうかも、あ、ふふふふ!

ねるのたのし?あ~もすきだよ でもおかーさんは好きじゃないみたい こわいっていうよ
 最後にみたお母さん 知らない色だったなぁ
おかあさんは?ね、あの明るいのがずっと出てる頃、食べられちゃったの あのおっきいのに おきたら食べられてたの あ~、逃げてきたんだ
かなしくないの?って、氷に聞かれたの
ぴしぴしおとたててさ!かなしいってなあに?
おいしいと楽しいと怖いのほかに何かあるの?
……わかんない?そっか?
わたしもわかんない、ふふ!
つかれちゃったのかな さっきより眠そう 
あのね……もうこわいのからにげなくてもいいんだよ  こわかったよね 辛いんだよね もう。動けないんだよね。
きみはこんなにおっきいんだよ 
もう十分頑張ったんだね 生きてこれたんだね
いきぬくってさ 大変だよね
まいにち、いきると、しぬ ねむると、おきる
でもときどきずっと眠っちゃいたいなって 
生き続けるってくるしいなっておもわない?
でもこんなに大きいんだもんね ずっと、生きているんだね 何度も苦しみに耐えてきたんだよ 気づかなかっただけで、ずっと、耐えてきたんだよ
 すごい あ~は、まだまだだもん あ~は明日のご飯探しちゃうけど。やっぱりそれは大変だもん
でも、だから、つかれちゃったのかな ねむぃ?
そうゆうぱりんぱりんのとき あ~も知ってるよ
力をぬいちゃおうよ、うん、そうやって目を閉じてごらんよ ほらとじて 目の中にね、夜をあげるの 
その毛皮似合ってるね。知らない色だ
ちがういろってさ こわくない?あ~は世界と同じ色だけどきみみたいなのだとこわいのにすぐ見つかっちゃう
ちがうと仲間外れにされたりするしさ あ~もね、ちょっと脚の形ちがうんだ だからねけっこうまいにちこわいよ
でもね ご飯食べて寝ちゃうんだ いきていけちゃうんだ 生きてこれちゃったから生きてしまうんだ
こわいよ 怖いけど 生きるしか出来ないよ……でも生きないのだって、本当は怖いよ 
ときどきあの怖いのに近づいてみたくなる 世界の色した、冷たいあのおっきい命 怖くて怖くてたまらないよ でも近づいてしまいたい日だってふと、あるんだ
眠るって諦めることだよね このぐらぐらのうえで夜を待っていたら、あの大きな命の前にあ~を投げ出してすべて捨てちゃうことになるんだ
それはあ~にはできない あ~は生きていたい あ~は、生きなくちゃいけない 体がね、そういうんだ 
でもきっときみはもう生き続けられないんだろう 、ね?こんなに体を冷たくして。ここで倒れて眠ることしかできない。
それでいいんだよ
君はこんなに大きくなるまで本当によく頑張ったんだ 大丈夫 だから眠りについちゃえばいいの
がんばるのって、たいへんだよね 
あ~も、ごはんさがすのたいへん! おっきくて怖いのも毎日どこにいるかわかんないし、いや!
たくさんたくさんたいへんだ この苦しみはね、きっといつまでも続くんだ
ふふふ
耐えきれないと思うのなら眠っちゃえばいい 
それもまた、しあわせなんだ 星はいつもそう言うよ

ねぇわかる?夢ってね、掌の中にあるんだよ 
息の苦しくなる世界の中にいると掌の中に沈み込んでるからきづかない わすれちゃうの
でもね、ふとね、ご飯食べてゆっくりできたらね
思い出すんだよ あるの ぱちぱちって
空気ができる世界にいるのに 苦しいとき おもいだすんだ
目を閉じて眠ってると見る夢は全部 作りごとなの
ぜんぶにせもの いきてるって、そういうことじゃないかな わたしの生き方も お母さんの真似っこ 
ぜんぶぜんぶあ~のものじゃないよ でもぜんぶぜんぶだれかのものでもない
むずかしいね  ふふふぃ

そーだ!ふふ
もっと眠れるように音、あげる!!
お母さんがねよくくれた音があるの お母さん昔ね味の違う知らない息のできない世界にいったんだって
その時であった音なんだって  
(七つの子の鼻歌)


ふわわぁ、あれぇあれぇ 本当に寝ちゃった ふふ ふふふぃ…
ふふ、ほんと、お母さんみたい(ちょっと悲しげに)
ふふふ わたしもねむぃなぁ
さらさらって、苦しみも何もかも、眠っててもわすれられないよね  凍っちゃうだけ  また目が覚めた時、自分の中に冷たいものがあるなんて、逃げられないなんてきっと苦しいよね もうずっと、眠っていたいんだよね
だからね 
(食べる音)
全て背負うね。 おやすみ きらきら 世界はうつくしいかな? わかんないや 今日はね、きっと良く眠れる 今度はおんなじ色で出会おうね まってるよ 
(水に帰る音)

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