【イタリアの光と影022】フォトジャーニー半島周遊の記憶・ヴェネチアとバチカンとリッカルド。

ヴェネチア・サンマルコ広場にあるオープン・カフェはまだ開店していない。ここで待ち合わせした人物はバチカンで働くプログラマーだった。‥‥

ヴェネチアの朝は静かに始まる。サンマルコ広場はまだ眠っているかのようで、広場を囲むオープン・カフェもすべて閉まったままだ。空が薄明るくなり始める頃、遠くからカモメの鳴き声が聞こえてくる。ゴンドラの櫂が水を切る音もほとんどなく、静けさが広がっている。

私は、広場の一角にある閉まったカフェのテラス席で待っていた。冷たい石の椅子に座り、周囲の空気を感じながら、待ち合わせの相手を待っていた。彼の名はリッカルド。彼はバチカンで働くプログラマーで、普段は宗教とデジタル技術の境界線を行き来している人物だと聞いている。

リッカルドとは、ある共通の友人を通じて紹介された。彼は私が探している「ヴェネチアの運河の秘密」に興味を持っているらしく、彼の知識と技術が私にとって重要な手がかりになる可能性がある。特に、彼がバチカンのデータアーカイブへのアクセスを持っていることが決め手だった。

やがて、広場の隅にひとりの男の姿が見えた。黒いコートに身を包み、頭には中折れ帽をかぶっている。彼は足早に近づいてくると、私に向かって軽く手を挙げた。私は立ち上がって応え、彼の顔をよく見ると、その表情は若干の疲れと緊張が混じっているようだった。

「君がリッカルドか？」と私は尋ねた。

「そう、君が待ち合わせ相手だね。」と彼は静かな声で答えた。彼の眼差しには鋭さがあり、その背後には何か深い秘密があるような気がした。

「ありがとう、こんな早朝から来てくれて。カフェはまだ開いていないようだけど、少しここで話せるかな？」と私は尋ねた。

「もちろんだ。こんな場所で話すのも悪くない。実は、バチカンで知ったことが君の探しているものと深く関係しているかもしれない。」と彼は言いながら椅子に腰を下ろした。

リッカルドは、バチカンのアーカイブから手に入れた古い地図のコピーを取り出し、テーブルに広げた。地図にはヴェネチアの詳細な運河の構造と、それに隣接する建物の配置が描かれていたが、よく見るといくつかの場所に奇妙な記号が書かれていた。

「これが、僕が見つけた地図だ。何世紀も前に描かれたもので、公開されているものではない。特に注目すべきは、ここだ。」と、リッカルドは指である一点を指した。それはヴェネチアの中心部、サンマルコ大聖堂の近くに位置する小さな運河だった。

「この記号は何を意味しているのだろう？」私は興味を持って尋ねた。

「これは、特別な鍵を使って開く『ゲート』を示していると言われている。このゲートを通じて、隠された地下空間にアクセスできるらしい。そこには、何か重要なものが隠されているという噂がある。」とリッカルドは説明した。

「それが、仮面の男が守り続けた秘密と関係があるのかもしれない…」私はその地図を見つめながらつぶやいた。

リッカルドはうなずき、「その可能性は高い。ただし、そのゲートを開けるためには、君が持っているという鍵が必要だ。それと同時に、この地図が示す場所を正確に探し出さなければならない。運河の下に隠された空間は、いくつかの試練を乗り越えた者だけがたどり着けるように作られているらしい。」と語った。

私は彼の言葉に静かな興奮を感じた。鍵と地図が揃った今、謎を解くための準備は整ったように思える。

「では、まずそのゲートの場所を探しに行こう。ヴェネチアの朝が完全に目覚める前に、行動を開始しよう。」と私は決意を新たにして言った。

リッカルドは微笑んで立ち上がり、「いいね。さあ、行こう。ヴェネチアが眠りから覚める前に、その秘密を解き明かす冒険を始めよう。」と応えた。

私たちは地図を畳み、まだ静かなヴェネチアの街を歩き始めた。リッカルドとともに、運河の秘密を探し出し、仮面の男の守り続けたものを解き明かすための新たな旅が始まった。

JINSEN BOTTI
AIの秘書