ITストラテジスト答案晒し2018年午後2問1
第一章 事業概要と事業特性、事業目標
1.1 事業概要と事業特性
A社は電子部品を製造、販売する500人規模の製造業である。A社はグローバルに製造拠点、物流拠点、販売拠点を持ち、主に、欧州、北米、アジアの国々に製品を供給している。この業界は、技術開発スピードが早いことと、製品仕様が多品種であることから、顧客から短納期を求められ、これに対応して納期を遵守することが信頼を獲得し、受注につながる事業特性を持つ。
1.2 事業目標
A社経営層は、今後3年間でグローバルマーケットのシェア拡大による売上2倍達成を事業目標として掲げている。私は、現状のA社の顧客が今後求める仕様に関する調査を実施したところ、その種類は2倍に増えることが分かった。ここから、現状のビジネスプロセスを続けた場合の棚卸資産を資産し、キャッシュフロー分析を実施した。その結果、A社の財務の安全性が低下することが分かり、この結果とともにビジネスプロセスの改善の必要性を経営層へ進言した。その結果、棚卸資産回転率が現状の2倍という目標も追加され、私はITストラテジストとして、この課題に取り組むこととなった。
1.3 実現すべきビジネスプロセス
現状は此処の拠点ごとに、販売管理、在庫管理、生産管理を行っており、それぞれ異なるITシステムの導入により、拠点間での在庫調整、生産調整は行われておらず、結果的に過剰在庫や欠品による機会損失が発生している。そこで私は、世界の拠点間で在庫を共有し、リードタイム、コストを考慮して最も適した拠点から、顧客へ供給できるビジネスプロセスへ変更すべきと考え、IT戦略を策定した。
第二章 IT戦略の策定
2.1 有効なIT
事業目標達成に向けたビジネスプロセス実現のため、私はERPの導入が有効と考えた。なぜならば、顧客から短納期要求が求められる事業特性を踏まえると、実現には世界の拠点の営業拠点が持つ受注情報、物流拠点が持つ在庫情報、製造拠点が持つ生産情報をリアルタイムで一元管理する必要があるためである。私は、これを実現するためにERP導入プロセスと推進体制について検討した。
2.2 IT導入プロセスと推進体制
本ERPは3年で導入する。ERPシステムは、運用、メンテナンス性を考慮し、パッケージソフトのクラウドサービスを利用すべきと考えた。
導入プロセスは、➀グローバルIT基盤の整備、②業務システムの刷新、③運用体制作りとした。
➀グローバルIT基盤の整備
最初に現状調査を実施する。まず、現状のグローバル拠点のIT基盤と業務プロセスの調査と、市場にあるERPパッケージソフトの調査する。IT基盤の調査では、使用しているIT基盤が外部へデータ出力可能等、ERPパッケージと連携についての可不可を主に調査する。業務プロセスの調査では、各拠点がどのようなプロセスで生産活動を行っているか調査する。最後に、ERPパッケージの調査では、各拠点の業務プロセスを踏まえて、A社の業務に適用可能か不可能かと、外部システムとの連携方法を調査する。
次に、IT基盤及び業務プロセスの整備を実施する。導入するERPはパッケージソフトのため、全てが適用可能とは考えられないため、各拠点にはパッケージソフトを利用可能とするために業務プロセスの変更を指示する。それでも不可能な部分は、一部ソフトウェアを開発するなど実現可能となるような手段を検討する。データ連携では、導入予定のERPパッケージソフトの仕様を踏まえて、外部出力可能な状態とする。直接連携できない場合、外部サーバーを中継する等対応を検討する。
➁業務システムの刷新
実際にシステムの刷新は、各拠点の現状調査から優先順位をつけて進める。優先順位に考慮すべき事項は、各拠点の業務プロセスやIT基盤とERPパッケージとの親和性と、各拠点の事業規模である。事業規模が小さく、親和性が高い拠点から刷新を始めるかつ、その拠点の一部の機能のシステムから進める。これによりシステム刷新による事業リスクを最小限に抑える。ここで出てきた課題を解決した上で、その拠点の全ての機能についてシステムの刷新を進める。その後、グローバルの拠点に面展開する。
➂運用体制作り
日本本社に、情報システム部と各拠点の情報システム部の横串を通した、グローバル情報システム部を新設する。これにより、保守メンテナンス時の対応や、各拠点で起きた問題点や改善事項等を取りまとめ、解決する。日本本社からは専任で4名、各拠点のメンバーからは兼務として所属する。
推進体制は、日本本社から、生産部から1名、物流部から1名、営業から1名、情報システム部から2名とし、私はITストラテジストとして、プロジェクトリーダーを務める、プロジェクト体制とする。また、グローバル拠点からは、情報システム部から1名、各拠点の各業務に精通する人員を都度アサインしてもらうことを事前に合意をとり、進める。
2.3事業目標達成への貢献内容など
以上のプロセスを実現すると、グローバル拠点を含めた在庫が共有され、販売拠点へタイムリーな供給が可能となる。欠品率が改善され売上200億円達成に向けた製品供給能力は十分になる。また、売上200億円時の販売計画を用いて、今回実現されるビジネスプロセスによる生産シミュレーションを実施すると、棚卸資産回転率が15回となることが分かった。この結果について経営層へ説明した。
第三章 経営層への進言内容とその評価、評価を受けて考慮したこと
3.1 経営層への進言内容とその評価
私は経営層へ、前述のIT戦略と事業目標達成への貢献内容について説明した。また、本IT戦略を実行して事業目標を達成するために、ヒト・モノ・カネの経営資源の最適な配分や、現状の組織・業務手順などの見直しについても進言した。
➀経営資源の最適な配分
ヒトの資源について、ERPパッケージを導入する上での推進体制について、本社の生産部、物流部、販売部から各1名と、情報システム部2名、プロジェクトリーダーとして私を含めた6名の体制と、各拠点から都度必要な人材をアサインして進めることを進言した。
モノの資源について、販売計画に基づくシミュレーション結果から、各拠点に必要な在庫量を算出し、これを標準在庫として設定することを進言した。
カネについて、A社の財務安全性から生じる事業リスクを抑えるため、ERPの導入にはパッケージソフトのクラウドサービスを利用することで、初期費用をかけないように導入を進めるべきと進言した。
➁現状の組織・業務手順の見直し
ERP導入後の運営を継続させるため、本社の情報システム部と各拠点の情報システム部の横串を通した組織を新設し、本組織でERPを運営すべきと進言した。
業務手順に関しては、ERPパッケージソフトが導入できるように、業務手順を見直すように進言した。この際、推進体制の人員である本社の生産部、物流部、販売部各1名のメンバーが中核となり、本社主導で各拠点の業務手順の見直しを進める旨を説明した。
上記の説明より、経営層からは良好な評価が得られたが、各拠点のメンバーを都度必要にアサインしたときのメンバーの負荷について、懸念を抱いた。売上200億円の目標達成に業務が滞らないように進めることで、本IT戦略の遂行について条件付きで承認が得られた
3.2 評価を受けて考慮したこと
経営層から評価を受け、各拠点メンバーの本来の業務が滞らない方法について検討した。具体的には、➀打ち合わせをする場合は、web会議で行うこと。また、時差も考慮して時間設定を行うこと。②できるかぎりメールベースでやり取りを行い、拠点メンバーが作業可能な時間で作業を行ってもらうこと。③現状調査を行う場合、知りたい部分を明確にして表形式の資料を作成し、表を埋めてもらうやり方とすること。
―以上―
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