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ITストラテジスト答案晒し2021年午後2問2

第1章 個別システム化構想の策定

1.       1 事業特性と背景となった事業目標

 A社は、電子機械を製造する従業員500人規模の製造業である。電子機械業界では技術革新が進み開発スピードが速く、顧客が求める製品要求が多様であり、製品ライフサイクルも短いという事業特性である。そのため、過剰の在庫を抱えると売れ残りが生じ商品価値の低下や収益の悪化が生じる。そこでA社は、製品在庫の保有リスクを低減するため、在庫回転率2倍を事業目標として掲げ、私はITストラテジストとして、事業目標達成のための個別システム化構想策定を担当した。本個別システム化では、製品製造における生産計画策定から製造・出荷までの生産業務が対象である。

1.    2 事業戦略に掲げられている変革の概要

 現状の問題点として、➀人の経験や勘による需要予測で生産計画を策定しており欠品や過剰在庫が生じており、②伝票紙ベースでの情報伝達のやり取りによりリードタイムの長期化している。在庫回転率2倍の事業目標を達成するための事業戦略としては、➀AIを活用した需要予測による生産計画策定システムの開発と、②情報伝達スピードを向上のため各部門間の業務やサプライヤーとの情報をデータ連携できるシステム開発、が掲げられ、上述の問題点を解消する。

1.       3 関係するステークホルダ

 事業戦略を受け私は、事業部門である技術部と生産部と資材部からそれぞれ1名、IT部門である情報通信部から2名、本社部門である経理部から1名、IT子会社から1名、合計8名でプロジェクト体制を組み、個別システム化構想の策定を進めた。

 次に述べるように、私はITストラテジストの立場で試案を検討し、各ステークホルダと試案について協議、意見の調整を行った。



第2章 個別システム化案の概要、ステークホルダとの意見の相違、意見調整と意見調整で工夫したこと

2.1 個別システム化案の概要とステークホルダとの意見の相違

➀あるべき業務及びシステム

 現状は、事業部門受注後は設計部品表を基に製造を行っていた。製造に関する情報は経験や勘に頼っており、各従業員の暗黙知とされていた。そこで本システムでは、技術部門で設計部品表から製造部品表を作成した上で、製造を開始するように業務を変更とともにシステム化し、形式知化する。製造部品表が電子化されるため、生産部、資材部に電子データとして情報伝達ができ、AIを使った需要予測可能となる。

➁投資効果と開発スケジュール

 投資効果として、在庫回転率2倍を設定した。開発スケジュールとしては、今回開発する個別システムを1年で全ての機能を実装させる想定で試案を作成し、チームメンと共有した。

➂ステークホルダーとの意見の相違

 前述の試案を共有したところ、各ステークホルダーから以下の意見が出た。

 技術部からは、製造部品表の作成業務が追加されるため、工数が増加する点、情報通信部及びIT子会社からは、社内のリソースから全ての機能を1年で実装させるのは、開発規模が大きいため難しい点、経理部からは、巨額の投資となることから1年で投資実行すると、キャッシュフローに問題が生じる点、が伝えられた。

2.2 ステークホルダとの意見調整と意見調整で工夫したこと

➀技術部との意見調整と工夫したこと

 システム化を進めたうえで技術部の負荷のみ増加することが問題点と捉え、私は、システム化導入前後の業務を可視化と業務負荷の部門間で平均化することが課題と考えた。そこで、業務フローを可視化し各部門の業務負荷変化量を技術部、生産部、資材部で共有した。その結果生産部、資材部でそれぞれ1人削減できることが分かり、技術部に異動させることで合意が得られた。

➁情報通信部及びIT子会社、経理部との意見調整と工夫したこと

 意見を聞いたうえで、私は開発を進めるために開発負荷とキャッシュアウトフロー時期の明確可が課題であると考えた。そこで、システムを機能別に分割し優先順位を付けて開発を進めることとし、改めて機能別に開発スケジュールを作成し共有した。加えて、開発スケジュールからキャッシュフローの計画も作成し、情報通信部及びIT子会社、経理部と共有と調整を実施した。その結果開発計画に合意が得られた。

 上記の調整を行ったうえで、内容を確定した個別システム化構想について経営層に説明した。

第3章 経営層からの評価と評価を受けて改善したこと

3.1 経営層からの評価

 経営層には、開発スケジュールを含めた個別システム化構想とステークホルダーの意見とその調整結果、事業戦略の影響、投資効果などについて説明した。その結果、A社の事業特性を踏まえて、目標値を在庫回転率としたことや、事業部門へ部分最適でなく全体最適の視点で提案し意見が調整できたことが評価された。加えて、機能別にシステム開発を進める工夫は、開発の業務負荷やA社のキャッシュフローを考えても実効性があると評価された。その結果、経営層は、構想は妥当であると判断された。

 一方、改善事項として、スクラッチ開発でなくパッケージソフトでSaaSを利用して初期投資コストを抑制することと、投資効果が在庫回転率のみでなく、システム導入によるNPVを算出すること、定量評価だけでなく、定性的な評価も実施することが言い渡された。


2.       2 評価を受けて改善したこと

 経営層からの評価を受けて私は以下の改善と、経営層への再説明を実施した。

➀SaaSの活用への対応

 私は情報通信部とともにSaaSベンダーの調査を進めた。事業部門の現状の業務内容から、3社のベンダーが適用可能であると考え、事業部門にその内容の共有と適用可否の判断を実施した。その結果、1社のベンダーのサービスは、一部の業務内容を標準化すれば適用可能と評価し、事業部門と業務内容の変更を実施することの合意を得たうえで、そのベンダーと協議を進めることとした。

➁NPVへの対応

上記のSaaS導入を踏まえて、システム導入前後の、在庫維持費やスペース、人件費を含めた在庫管理コストと、棚卸資産の変化、各部門の業務負荷工数の評価を改めて実施した。得られた結果から増加するキャッシュフローを算出した。その結果から金利を含めたキャッシュフロー計画を作成し、NPVを算出した。

➂定性的な評価の対応

 事業部門の従業員の平均年齢は50台と高齢であり、熟練した社員の定年退職が問題となっている。現状の業務は人の勘や経験に頼ることから、本システムの導入により、入社まもない社員でも業務の品質に影響を受けないと評価できると考えた。

➃経営層への再説明

 経営層へ再度説明した。SaaSの活用と、NPVが5年で正となることと、A社の課題である熟した社員の定年退職問題の対処に着目した定性的な評価が妥当であると判断され、構想化の承認が得られた。

-以上-

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