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2023年の学び① エフェクチュエーションについて

あけましておめでとうございます。

年末まで非常に忙しく過ごしており2023年に学んだことをまとめようと思っていたら年が明けてしまいました。かつ文章を書いているところに地震もあり、アップが遅くなりました。
ビジネス現場での経験から得られた学びもたくさんありますが、経験外(書籍や情報メディアなど)から得られた示唆を自分なりにどう活かしていけそうか考えたことを何回かに分けて整理したいと思います。
今回は、今話題のエフェクチュエーションについて。


エフェクチュエーションは現場の実感と合う

エフェクチュエーションについてはずっと気にはなっていましたが、わかりやすい本などがなかったのでなんとなくしか知らなかったのでもやもやしていました。そこに「エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」」が発売されたとアマゾンで発見し、すぐに購入して読みました。非常にわかりやすかったです。

「手中の鳥の原則」「許容可能な損失の原則」「レモネードの原則」「クレイジーキルトの原則」「飛行機のパイロットの原則」、この5つの原則は実際のビジネス活動で行なっている内容に近いためしっくりきます。
人・モノ・金・技術・スキル・情報に限りがある中で、ビジョンやプロダクト・サービスの構想を掲げながら、リソースの範囲内で試しながらやってみる(手中の鳥の原則、許容可能な損失の原則)。当然最初に描いた構想通りにはいかないので、都度軌道を修正したり、やってみてわかったことを取り入れたり、さまざまな関係者を巻き込んで進めていく(レモネードの原則、クレイジーキルトの原則)。このような状況をコントロールしながら進めていく(飛行機のパイロットの原則)。
ざっくりとこのように理解しました。実務レベルで活動している感覚には非常に合います。

最近はアジャイルやPoCの考え方が定着しつつありますが、意識、心構えが計画ありきのコーゼーションのまま、手法だけアジャイルやPoCと掲げて進めようとしていることが多そうに感じています。

僕もそうですが、エフェクチュエーションはスタートアップや新規事業を創出しようとしている人たちにっとっては勇気づけられると思います。スタートアップや新規事業を立ち上げようとしている人は、戦略や計画が無い、よくわからない、などという批判を内外から常に受けるものです。しかし、戦略や計画が見えないものに対して資金を出せないというのもわかります。そのため、戦略らしく物を絵に描いて説明したりすることもありますが、やってみないとわからないことも多くあり、戦略や計画を作っている暇があればプロダクトやサービスをつくるほうにリソースを使いたいというのが正直なところです。

エフェクチュエーションの考え方が広まれば、事業の立ち上げ時は共感が得られやすくなる可能性がありそうです。起業家にとっては良い方向に行きそうな予感がします。

エフェクチュエーションに戦略は必要ないのか?

目標を設定し、どのように実現していくか戦略を立てる従来のアプローチがコーゼーションです。不確実性が高いことにチャレンジしようとしているのに、確実に目標を達成するための戦略や計画を立てることは、随時ピボットすることが前提とはいえ、正直嫌気がさします。

戦略を立てるということは、ある程度未来を予測することになります。予測できる範囲において状況をコントロールをするために戦略を立てる、ということになります。一方、エフェクチュエーションにおける「飛行機のパイロットの原則」はコントロールすることに集中して、コントロールできる範囲内では未来を予測する必要はない、という考え方です。不確実性の高い、事業の初期段階では、戦略立てるよりも「飛行機のパイロットの原則」のほうが実務レベルではしっくりきます。

とはいえ、本当に戦略は必要ないのかと言われると、それも疑問が残ります。エフェクチュエーションは起業や新規事業を立ち上げようとする場合には非常に共感しますが、事業を1から10にしていくあたりからは、ある程度戦略や計画も描く必要があるかと感じています。ある程度戦略が立てられるようになったタイミングが、事業を拡大しにいくタイミングなのかもしれません。

エフェクチュエーションは暗黙知の範囲が大きいのでは?

起業や新規事業には、計画や数値には表しきれない、当事者にしか感じれられない感覚があります。事業の規模が数人で単位であればそれでもよいですが、20人近くになると感覚やコミュニケーションだけでは伝わりづらくなり、ある程度戦略という道標がないと、経営陣以外の従業員やビジネスパートナーが、今自分たちが何をやっているのかがわからなくなってしまう感覚においちります。そうするとモチベーション低下につながります。そのような経験をしてきました。
エフェクチュエーションにおける各原則、特に「レモネードの原則」「クレイジーキルトの原則」「飛行機のパイロットの原則」は、形式知よりも暗黙知の比重大きいのではないかと感じています。暗黙知の問題は、内外への説明が難しいことです。
新しい事業を興すには、プロダクトやサービスの開発だけではなく、顧客や従業員、ビジネスパートナー、資金の提供者など様々なステークホルダーを巻き込む必要があります。その際に、エフェクチュエーションだけでは内外のステークホルダーへの説明が難しく、ビジネスを推進していくには難しい状況に陥る可能性が高そうに感じます。
エフェクチュエーションの、恐らく形式知よりも暗黙知の比重が大きい各原則の内容を、どれだけ形式知かできるかという点も重要になってくるように考えています。

いずれ戦略は必要なくなる時代が来るか?

元LINE社長の森川さんは書籍で「戦略は必要ない」とおっしゃっていますが、変化が非常に早いインターネット業界などでは規模が大きくなっても戦略を立てるよりも「飛行機のパイロットの原則」のように進めるのが良いのかもしれません。ただし、現時点では全ての業界がインターネット業界ほど変化は早くはありません。コーゼーションだけで進められる業種は、もはやほとんど存在しないのかもしれませんが、多くの業種ではある程度未来の予測はでき、戦略が立てられるはずです。一方で、テクノロジーの進化が早くなってきているため、予測できる未来がだんだん短くなってきており、コーゼーションの比重がだんだん小さくなっていくことは間違いないように思います。
とはいえ、恐らくコーゼーションは全てNGでエフェクチュエーションが100%正しい、ということにはならないでしょう。コーゼーションとエフェクチュエーションのバランスをどのようにとっていくのかが経営者の腕の見せ所になってくるのでは?と考えています。そのためのポイントは事業のステージ、ステークホルダーとの関係(どれくらい巻き込む必要があるか)、企業風土などになりそうです。


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