「どないしたん?落ち着きなさい。」

「どないしたん?落ち着きなさい。」
 
 
サヤが宥めているところへ三津が駆け込んだ。
 
 
「アヤメさん!」
 
 
アヤメは咄嗟にサヤの背後に隠れた。流石にそこまで逃げられると三津も敵わないと苦笑い。
 
 
「そのままでいいんでお話しましょ。ホンマに今日は私のせいで苦しい思いさせてしまってごめんなさい。【前額脫髮】詳解前額脫髮原因 & 唯一有效療法 @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::
私が入江さんに対して何の感情も持ってなくても一緒に居るだけでも嫌ですよね。」
 
 
サヤは事態を察してふふっと笑い背後のアヤメをチラッと見た。アヤメはおずおずと顔を覗かせて三津をじっと見た。
 
 
「私もしょっちゅうそのモヤモヤ?って言うかどこにぶつけていいか分かんないのがあります。
小五郎さんなんか私より大人やし付き合い広いし何処で誰と何してるんやろって思ったらキリないし……。」
 
 
眉尻を下げた情けない顔でへらへら笑いながら話しているとアヤメが小首を傾げた。
 
 
「……小五郎さん?」
 
 
「アヤメあんた乃美様の話聞いてなかったん?三津さんは桂様が懇意にされてる方や。」
 
 
「え!!え!?私とんだ失礼を!!」
 
 
慌てふためいてサヤの横に並ぶと深く深く頭を下げた。
三津は気にしないでと笑った。なんせ女同士で話が出来る嬉しさの方が断然強い。
 
 
「ホンマやったらお二人のお手伝い出来たらええんやけど左手が使い物にならなくて,洗濯しても水を絞られへんし洗い物しても食器を落としてしまう。箒ぐらいしか使われへん手やから。」
 
 
それを聞いてサヤがあぁ……と声を漏らした。
 
 
「それも聞きました。新選組で拷問にあいはったって。」「え!?」
 
 
アヤメはそれも聞いてないとこれでもかと言うぐらいあわあわ動揺しだした。
 
 
「アヤメ覚えてない?吉田さんが顔面蒼白で戻られて暫くろくにご飯も口にしなかった時。」
 
 
「あ……。ありました。」
 
 
それは記憶にある。朝餉も夕餉も全然口にせず一心不乱に庭先で刀を振り続けていて狂気を感じたんだ。
 
 
「それは三津さんが吉田さんを庇って新選組に捕らえられたからや。その時に受けた拷問ですよね?」
 
 
「そうですけど……吉田さん全然ご飯食べてなかったんですか?そりゃ責任感じさせられへんわ……。左手がこうなってるの吉田さんには内緒なんです。」
 
 
黙っててねと口の前で人差し指を立てて見せるとアヤメは何度もこくこく頷いた。
 
 
「せやからアヤメ,三津さんは入江さんのご友人を救いはった方やから入江さんも親しくしはるんや。そこに嫉妬なんか持ちこんだらアカン。」
 
 
サヤに叱られたアヤメはしゅんとしてごめんなさいと頭を下げた。
 
 
「いやいや好きやって気持ちがあったら嫉妬しぃひん方が無理ですよ。
私も色々割り切らなアカンて頭では理解しても心がそれを許してくれませんもん。
まだまだ子供なんですかね私。」
 
 
上手く行かない事だらけだと自嘲した。
 
 
「三津さんは気持ちが通じ合ってるけど私は全然……。せやから嫉妬なんかしたって何にもならへんのに……。」
 
 
「せやなぁ……。アヤメは挨拶がてらに二言三言交わせなアカンわ。」
 
 
サヤの言葉にアヤメは無理無理無理と首を横に振って落ち込んでしまった。
 
 
「それにさっき……三津さん突き飛ばしたの見られてもたし……。」
 
 
せっかく泣きやんだのにその目はまた潤みだしてしまった。
 
 
「それは私が追っかけ回したからで!入江さんなら分かってくれると思います!
それで……アヤメさんは何で入江さんを好きになったんですか?」
 
 
「え!?それはぁ……。」
 
 
そんな事聞かれると思ってなかったアヤメは視線を彷徨わせた。
 
 
「ここに雇ってもらって間もない時に……優しくしていただいて……心が救われたので……。」
 
 
初々しいなぁと三津もサヤも目を細めた。
 
 
「そう言う三津さんは桂様とどういった経緯で?」
 
 
「え!?」
 
 
そう返されると思ってなかった三津も視線を彷徨わせた。「あー……えっとぉ……相談に乗ってもらったりしてるうちに……。」
 
 
急にしどろもどろになる三津をサヤはくすくす笑ってこう切り出した。
 
 
「私一度桂様から相談を受けた事があります。」
 
 
「え?何のです?」
 
 
桂がサヤにどんな相談があると言うのか。三津とアヤメは食い入るようにサヤを見た。
サヤはあの時の桂は可愛かったと思い出して笑う。
 
 
「まだ一度しか会ったことない者に急に簪を贈られて困ったりはしないか?と。
 
自分の為に選んでもらった物なら困るような事はないと申し上げたら照れ臭そうに“実はもう買ってしまったんだ”と仰ったんです。
 
それを贈りたいのだけど急にそんな物贈られて迷惑だったり不快に思ったりしないかと相談に来られました。
それ三津さんへの贈り物やったんやないですか?」

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