であれば、創作にしろ

であれば、創作にしろお笑いにしろチャレンジできなくもない。
 
 だが、夢をみてそれを追いかけることのできる期間はわずかである。 かわいい女性をみつけて人並みに家庭を築くとなれば、それなりに貯金をしなければならない。
 投資とかで増やす算段もしておいたほうがいいだろう。
 
 それにはやはり、子宮環 定職についてコツコツ働くにこしたことはない。
 
 って、いまはそんな『単純だけどささやかな幸せ』っぽい人生設計はどうでもいい。
 
「それこそ、できったはったをつづけないと、すぐにでも路頭に迷ってしまいます。かといって、おなじ『げい』の道でも、ゲイのほうはむずかしいですしね。おねぇのように、みためがまぁまぁきれいなのでしたら売れっ子になれるかもしれませんけど、おれなんて女装してもきっとかわいくも美しくもないでしょうし……」
「主計っ、だまりやがれ。わけのわからぬことをべらべらしゃべりやがって」
「そ、そんな。だって、副長が『物語を書いたらどうだ』って、ふってくるからじゃないですか」
 
 いくらなんでも理不尽すぎる。
 
 ちなみに、いま引き合いにだしたおねぇ、つまりは、ゲイではない。おそらく、であるが。いま引き合いにだしたのは、おねぇがまぁまぁの器量だということをいいたかったのである。
 
 ちなみに、おねぇも『副長LOVE』なのである。
 
「馬鹿たれ。いっそおまえの推測どおり、三人のだれかに殺らせようか?斎藤にぽちたま、よりどりみどりってやつだ」
「副長。なにも主計に選んでもらわずとも、三人で殺りますよ。なぁ、ぽちたま?」
「無論でございます。でしたら斎藤先生、先生から主計の部位を選んでいただいてかまいません」
「わたしは、最後でいいですぞ。斎藤先生が頸なら、たまは心の臓でしょう?あるいはその逆?ならばわたしは、主計の大切なところにいたしますゆえ」
「ぽち、そりゃあ傑作だな。そういや昨日、兼定とおまえに『主計のアレを喰いちぎってしまえ』って、命じたんだったな」を果たしましょう」
「ちょちょちょ、このコントはいったいいつまでつづくんです?ってか、まったく意味がわかりません。なにゆえおれが頸を刎ねられ、心臓をぶっ刺され、アレを喰いちぎられなきゃならないんです?」
「そういや、なにゆえだったかな?くそっ、主計が馬鹿すぎて忘れちまった」
「副長。主計のダダもれの心のつぶやき、についてでございます。副長は、そのあまりの想像力と長さに辟易となされ、物書きになればいいとおっしゃりたかったのでは?」
 
 忘れちまった?あんだけひどいことをいっておいて、忘れたっていうのか?
 
 ってか、その副長にフォローをする俊冬は、以前となんらかわりはないみたいだ。
 
「そうであった。それだ、それ。おれが話があるっていっただけで、こいつがあまりにも突拍子のないことをかんがえつづけているので、ってことだ」
 
 それってば、おれが斎藤やぽちたまに殺られるかもしれないと危惧しているってところのこと?
 
 おれの心のなかなんて、あたりまえのことであるが最初から最後までダダもれしていたわけだよな。
 
「そこまで話をおおきくできるのだ。ゆえに、物語でも書いたらどうだ?ってすすめたわけだ」
「ああ、なるほど。たしかに、自分におこりえる最悪なパターンの筋書きは、いくらでも浮かんできます。しかし、なにゆえか最高のパターンの筋書きは、まったく浮かんできません。これはきっと、常日頃からいろんなものに抑圧され、搾取され、虐げられているがゆえに、前向きにかんがえたり夢をみることをすっかり忘れてしまっているからでしょうね」
「いいかげんにしやがれ。誠に物語りづくりに専念できるようにしてやろうか、ええっ!」
「それでしたら、副長。中島先生といっしょにしてくださいよ。絵描きの中島先生とでしたら、浮世絵風の漫画にしてもらえます。コミカライズってやつです。爆売れまちがいなしです」
「ぽち、なにをぼさっとしてやがる。とっととこの馬鹿のアレを喰いちぎりやがれ」
「すすす、すみません。つい調子にのってしまいました」
 
 慌てて謝罪するおれを横目に、斎藤がつぶやいた。
 
「たしかに、登さんの絵はすばらしい」
「そうでしょう、斎藤先生?じつは、中島先生が新撰組の隊士たちを中心に描いたものが、「戦友姿絵」として伝えられるんです」
 
 斎藤のつぶやきに、思わず喰いついてしまった。
 
「ほう。登の絵がな。無論、そのなかにはおれもいるんだろうな?」
「ええ。近藤局長もですが、副長はじつに恰好よく描かれていますよ」
 
 そこまでいって、ふと思いだした。
 
 明治時代に出版されたっていうか、されるはずの「徳川幕臣伝明治戦記 甲」という本がある。
 
 その本には、戊辰戦争で活躍した五十人の幕府側の人物が、浮世絵風に描かれている。描いたのは、中島ではない。だれが描いたのかは、わからなかったのではなかろうか。
 もっとも、おれが忘れてしまっているか作者の名を調べきれなかったのかもしれないが。
 
 その浮世絵の副長は、なんと髪型がアフロというかモヒカンの逆バージョンというか、兎に角草すぎるヘアースタイルなのである。
 
 とてもではないが、あれはイケメン土方歳三ではない。「吉本〇喜劇」にでてきそうなキャラになってしまっている。
 
 このことは、副長本人にはだまっておこう。
 
 伝えたが最後、なにをされるかわかったものではない。
 
「恐れ入ります、副長。いまだそのは果たしておらず……。なれば、さっそくいまから

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