思考の補助線 vol.1四間飛車の前提条件

まえがき

 先手番で、四間飛車を採用する理由は、少なくなってきているように感じられる。しかし、四間飛車は、将棋に習熟する上で、避けては通れない戦法の一つであると、僕は思います。
 他の戦法の源となる考え方や基本的な手筋は、知っておいて損はないどころか、知らないとまず負けることになります。よって、四間飛車は出来る限り、多くの将棋プレイヤーに伝えていきたい王道戦術となります。

 しかし、王道の戦術というのは、得てして、難しい理論が背後に隠れています。隠れているどころか、そこに屹然とある壁が行く手を阻んでいるように感じられるかもしれません。
 そこで、入門者・初級者のための、四間飛車の勘所を、出来る限り、段階を踏む形で紹介していきたいと考えています。
 いきなり一日で棋力が向上することはありません。とにかく、継続することでしか、物事は向上しないのが常です。
 ですが、方向性さえ間違えなければ、ある程度、その平均的な速度を向上させることができると、考えています。
 向きたい方向を見定めて、その準備を絶えず進めて行けば、やがて目標となる立ち位置へとたどり着くと考えます。

 よって、まずは、入門者篇を第五部に分け、その後、初級者篇と中級者篇、上級者編と区別して、有段者への道を開けるように工夫します。
 以上が本企画の趣旨です。
 まえがきばかり長くても仕方がないので、始めたいと思います。
 では、よろしくお願いいたします。


入門者篇第一部 対局の区分:序中終盤

 将棋の対局は、三つに区分されることがある。

1,序盤
2,中盤
3,終盤

 それぞれが、密接に絡み合っているため、どこからどこが序盤で、中盤はいつからかというのは、厳密には難しい。駒がぶつかったタイミングが、中盤に入った証だという人もいるが、僕はそうは思わない。
 まあ、そういった難しい理論は、ここでは触れない。
 
 まず理解してほしい考え方がある。
 
 戦法の手順を認知すること。(丸暗記ではないことに注意してください)
 そして、実践してみること。(大方失敗します)
 そこから、次の対局で工夫をすること。

 これが、将棋上達の全てである、と言いたいところだけど、実際はそうではない。色々な与件が絡んでくる。体調や心の余裕とか、そういったことを含めて総合的な戦いをするのが、将棋である。
 
 また、個人によって、認知、実践、工夫の学習の時間が異なっている。
 ある人は、1回見ただけで、指すことができる。ある人は、自分で駒を並べてみないと分からない。ある人は、実戦で指して、痛い目を見ないと分からない。

 一般的に言えば、一番最初の見ただけで指せる子が優秀とされやすい。
 でも、長期的な頭の強さは、後者に行けば行くほど強い印象だ。
 僕はどちらかというと、頭の回転に重要視していたが、今は、じっくり考えるというスタンスを身につけようと、躍起になっている。勝敗に拘らないようにしているからだ。
 勝敗というのは、その一時の結果であって、全てではない。次は負けるかもしれないし、次は勝てるかもしれない。
 次の対局があるか分からないが、そのあるか分からない対局に向けて準備する。これが勝ち負けがはっきりするゲームの努力する前提である。

 これまで、ごたごた述べてきたけれど、単に、序盤・中盤・終盤という用語を覚えてほしいというだけのことだ。

入門者篇第二部 定跡

 次に知ってもらいたい考え方がある。
 定跡という手順のことである。
  
 将棋には、こういう手順を選択すると、悪くなるという蓋然性の高い手順が存在する。
 悪くならないための手順である。
 今は、AIが出てきてから、その蓋然性の高い手順は、信用を置く人が増えてきているが、これは疑わしい。
 将棋のAIは、大体この局面では、こっちがいいという評価をしてくれる。評価するためのデータセットを取り込んでいる。人間も同様に、評価するためのデータセットを取り込む必要があると考える。
 そのデータセットのことを定跡という。

 定跡は、自分の局面を悪くしないようにするためのものであって、良くするためのものではない。
 良くするための手順を研究という。
 研究をするためには、定跡を知らなくてはいけない。
 研究をした結果、定跡が間違っている可能性に気づくこともある。

 といった理由で、形が無いものが、将棋の定跡である。

 では、考えを押し進めていこう。
 定跡は模様を悪くしないようにするためのものである。
 よって、勝ちたい・強くなるということは、模様を悪くしないという技術が必要となる。将棋が上達してくると、すぐには、悪くなることは少なくなってくる。相手も出来る限りの最善を尽くしてくるからだ。よって、ミスが少ない手を選ぶことが大事になってくる。
 しかし、勝負どころでは、わざと悪い手を指すこともある。これは駆け引きである。その結果、相手が悪手を指して、こちらが優位に立つこともあるし、丁寧に指し回されてしまう危険性もある。
 といった具合で、勝負の妙は難しい。
 
 悪くしないということは、この手以外の手は悪くなるということである。もしくは、悪くなりやすいということである。この手と他の手の違いについて理解する必要がある。
 この理解をすることが難しい。局面の理解は、ある程度、基礎体力が無いといけない。基礎体力とは、読む力や局面判断の正確さみたいなものである。そう言った事情で、定跡を覚えつつ、疑問を持って、実験する。これが、将棋の面白いところである。基礎体力を養い、対局や大会に臨む。分かりやすい図式である。

入門編第三部 基礎体力

 あゆみ将棋塾がサポートしているところは、基礎体力を養うことであると言っても過言ではない。
 基礎体力とは、将棋に取り組むことができる集中力や継続力のことである。

 簡単に言えば、どれだけ、長い時間・期間将棋に取り組めるか、ということである。独学で身につける人もいれば、中々身につかない人もいる。居つく人もいれば、ちょっとサポートしただけで先に進んで行く人もいる。
 とにかく腐らず、淡々とやるべき課題をこなしていくのがいい。
 では、どうやって基礎体力を養生するのか、考えていこう。

 まず基本となるのは、詰将棋である。
 将棋に熟達したいと言っているのに、詰将棋を練習しない人は、残念ながら話の方向がずれているはずである。本当にそうかと言われると、心配になるけれど、ある程度の手数の詰将棋は解けないと、物語が始まらない。
 よって、1手・3手詰迄は、確り固めておきたい。
 3手の読みが基本となると、他の棋士の方々が言うけれど、それは怪しい。基本は1手詰である。1手読めなければ、3手も読めない。
 1手集中して、これだという確信が無ければ、次の手数は、読めない。
 同様に、3手読めなければ、5手は読めない。

 ちなみに、なぜ奇数手詰になるのかというと、自分が最後に指して詰ませるため、自分が指して詰みだと、1手詰であり、自分が指して、相手が指して、自分が指すと、詰みの場合は、3手詰といった具合で、自分、相手、自分、相手、自分となるように、奇数になる。
 2手詰、4手詰は、基本的には無い。(構想としてはあるけれど)

 そのような次第なので、将棋が強くなりたい場合は、詰将棋を解くのが一番早い。将棋は、王様を詰ますゲームだから、王様を捕まえられない人は、負けるという身もふたもないいい方になってしまうが、弱いということなのである。ゲームのルールによって、強くなる方法が分かりやすいのが、将棋である。基礎体力はそこから始めていくのがいい。

入門者篇第四部 結局は、継続力である。

 身も蓋も無いことを言うと、将棋は継続力で、棋力が決まると思っています。どれだけの強度の稽古をどれくらい続けるか。それにかかってくる。正直言うと、頭の良し悪しは、ほとんど関係ない。頭の回転は、勿論、短期的に見れば、関係があるかもしれない。けれど、長期的な視座に立てば、頭の回転の遅速は、関係が無いどころか、速く知恵が回る人は、将棋を止めてしまうだろう。

 継続力が一番の大事なことだと、僕は思う。
 誰が何といおうと、継続力だと思います。
 続けることこそが才能である。
 でも、継続するというのは、結構難しい。
 僕は、12年間将棋を継続している。ほぼ毎日稽古をつけている。
 それで、今現在が、一番将棋について理解をしている。しかし、まだ足らない部分が多い。変化に対応することも面白い。脇道を歩くのもいい。
 散歩しながら稽古する。それが楽しいのだ。

 楽しく継続すること、これがあゆみ将棋塾で気を付けている点である。
 世の中を観察していると、人は楽しく継続することが苦手なようである。勿論、将棋が上達している気がしない時期も経験した。でも、そこも一山乗り越えた気がする。
 まずは、継続すること、それで、あゆみを止めないことが大事だ。
 いきなり将棋が強くなることは無いと思っている。
 そもそもいきなり将棋が上達する必要性も感じない。
 どれだけ年を取っても、変化し続ける。これが、目指すべき地点だと思います。
 とはいっても、まずは、基礎体力を付けなければならない。
 毎日の詰将棋と寄せの問題をこつこつこつこつこつこつこつこつ、やっていく他ない。それをやらなければ、先を行く人には追いつけない。僕は、中学二年生から将棋を始めた。今小学生や未就学児が将棋を始めている。これは、僕は、前を走り続けたいのだ。

 ひとまず、始めること。そして、変化を加えながら継続すること。

 これしか道はない。王道を歩むのが、一番の近道だと思います。
 でも、その近道は、周りの人からは滑稽に思われる可能性が高いです。
 ゴーイング、マイ、ウェイ、汝自身の道を行け。
 そう思って、毎日、小さな一歩を積み重ねていきます。

 でも、もしかすると、後ろを振り返ると、誰もついてきてないかもしれない。それが怖い。それでは、文化は引継げないかもしれない。少し尽力します。

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