3回生CA:カスタマーハラスメント(カスハラ)規制強化の是非

3回生のCAについての記事です。
「カスタマーハラスメント規制強化の是非」という議題で行われました。

記事

相手の嫌がることをして不快感を覚えさせる行為全般を「ハラスメント」と言い、近年になりパワハラやセクハラなど○○ハラという言葉を多く耳にするようになった。その中の一つにカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)の過激さがニュースで取り上げられた。ニュースではタクシードライバーに対して、繰り返し同じクレームを入れ長時間拘束し、人格を否定するような言動などが問題として取り上げられていた。被害を受けたタクシー会社(つばめタクシーグループ)では、カスハラ客に対して乗車を断り慰謝料を請求する可能性もあると強い姿勢を示していたにも関わらず起きた事件であった。パワハラやセクハラは法律上で定義され、行政法による規制がなされているが、カスハラは法律による明確な定義がなく、クレームとの線引きが難しい。もちろん行き過ぎたカスハラは刑法上の暴行罪や名誉棄損罪などに問われるが、実際に起訴された事例は多くはない。また、HNKの調査によると2年以内にカスハラ被害にあったと回答したのはおよそ2人に1人であったという。カスハラの対策は企業や地方自治体による条例(例として、東京では罰則を設けない方針)に任せているのが現状である。

立論者はカスハラ規制強化に反対の立場、他の参加者は賛成の立場から反論を行いました。

前提条件

Qカスハラにパワハラは含まれるか
A「カスタマー」ハラスメントなのでお客さんからそのような行為があれば含める

意見・論点

1.正当なクレームとの線引きが難しい
→明らかに理不尽なカスハラ(一方的な侮辱発言、暴力など)誰が見ても100%顧客が悪い場合を除いて、どの範囲までをカスハラとして扱うのかの設定が難しい。また、カスハラと認定するのが受け取り手(従業員・社員)次第な部分があるので更なるトラブルに発展する可能性もある。

Q.従業員のストレスとカスハラしないように心がけるストレスは違う。規制することで従業員のストレスは緩和される。顧客はストレス発散のはけ口として店員さんにカスハラをするのはおかしい。
A従業員の態度が悪くなるなど、別のところでストレスを発散するようになるのではないか。

Q.パワハラも線引きはあるがグレーゾーンはある。カスハラも規制強化は実現可能ではないか。
A.その通り。だが、受取手次第という部分が大きい。意見・論点の3にあるようにカスハラは潜在的加害者が多い。コンビニで購入時にカスハラがあってもそのまますぐ立ち去ってしまい、特定できない。


2. サービスや商品の質の低下を招く可能性がある
→正当なクレームのつもりでも罰則の対象になる恐怖を顧客に押し付けることになる。正当なクレームのつもりでもカスハラとして受け取られたらたまったものではない。結果、正当なクレームも満足に入れることが出なくなることでサービスや商品の質の低下を招く可能性がある。

Q.組織であれば相談窓口などがあるため、サービスの質の低下は起きないのではないか。
A.正当な意見が入ってこなくなるのではないか
Q.自動車に対する規制もあるけど運転しないと決める人は少ない
A.自動車の規制にはスピードなど指標がある。カスハラには指標がないので曖昧になる

Q.神の見えざる手が働いてなんとかなるのでは。クレームを入れられなかったら売上が下がる。賢明な企業であればそこで改善が行われる。
正当なクレームの必要性がわかる企業は意見をくださいという積極的な発言があるのではないか。
A.その通り。


3.潜在的加害者が多すぎるうえに、特定するのが難しい
→パワハラやセクハラは大抵会社内で完結するので特定することが簡単である。そのため、行政法上の規制と社内教育などで規制効力が発揮される。しかし、カスハラの場合は国民一人一人が潜在的加害者でありカスハラが起きる現場は不特定である。そのため、「いつ」「どこで」「誰が」カスハラをしたのか特定することが不可能である。よって、規制したところでその効力は発揮されないと考えられる。

Q.カスハラに対応する場面は店か電話。特定できるのではないか。
A.通販など記録は残るが、監視カメラでの特定は不透明ではないか。設置の問題だと思うが顔が見にくいなどで特定できないのではないか。
Q.カメラの技術は発展している。
A.監視社会になりうる。高性能なカメラを設置できない店も多い。
Q.政府がお金を出せば良い。(規制は政府がするから) 問題があったときに見るだけだから監視社会にならない。今でも監視カメラはある。
A.特定のためにカメラがお客さんの近くにあるのは心理的ストレスになる。


予想される反論・再反論

1.従業員・社員の精神的ストレスが緩和される
→確かに、顧客からのカスハラが規制され減少した場合は精神的ストレスが緩和されるだろうが、別の場所でストレスが発生する可能性がある。従業員や社員は生涯ずっと従業員・社員というわけではなく、一人の顧客としての立場もとる時間がある。(例えば、コンビニ店員の場合、勤務時間は従業員だが勤務時間外でスーパーを利用しているときは顧客である)顧客としての立ち位置の時、自分自身もカスハラをしないように心がける必要がありストレスが蓄積する。

Q.従業員として働くときにストレスがかかるから自分が顧客になったときにカスハラをしてしまうのではないか。
A.ストレスは他のところでもかかる。カスハラをしている人の年代のデータを見ると高齢者が多い。つまり仕事から引退していてハラスメントをしている人もいる。

2. お客様は神様ではない 、従業員と顧客は平等な立場であることを示すきっかけになる
→三波春夫の「お客様は神様である」という言葉の意味が捻じ曲げられ、店員が顧客にこびへつらうように半ば強制されていたことは確かに問題であった。しかし、近年ではSNSなどを通じて言葉の意味が再確認されてきている。
また、規制強化した場合、顧客がカスハラに取られないように言動に気を付けることで逆に従業員側の態度が傲慢になる可能性が考えられる。


参考文献

・日テレNEWS「タクシー車内で『老害が!まじで』―後を絶たない”カスハラ”東京都が初の条例、難しい線引きは?」https://news.ntv.co.jp/category/society/df7426d38f9f49518d78143ccb4c0e94
・NHK”カスハラ”約2人に1人が被害に 労働組合が実態調査https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240429/k10014436331000.html
・KEIYAKU-WATCH「カスタマーハラスメント(カスハラ)とは?」https://keiyaku-watch.jp/media/kisochishiki/customer-harassment/
・東洋経済ONLINE「『カスハラ』法整備でもそう簡単に解決しない事情」https://toyokeizai.net/articles/-/756698?display=b
・ITmediaビジネス「カスハラ被害が多い職種は? カスハラ経験と離職の関係」


先生のコメント

昔は「お客様は神様」という言葉を日本中が知っていたがカスハラに繋がるようなものではなかった。また、消費者軽視の傾向にあった。その後消費者庁ができたことなどもあり、今の若者はカスハラはよくないという規範が身についている。この流れはよりよい社会につながるのではないか。


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