競争力CA:グローバル化は伝統文化によって脅威であるか
競争力CAについての記事です。
「グローバル化は伝統文化によって脅威であるか」という議題で行われました。
記事
780年以上続く福岡の「博多祇園山笠」で、西流に所属する最若手の山笠人形師、西川直樹さん(38)が自ら手掛けた人形を披露する。平均年齢が66歳と高齢化が進む一方で若手の活躍が期待され、西川さんは「伝統を守り継ぎたい」と語っている。7月15日の「追い山笠」で自作の山笠を担ぐ予定で、西川さんの作品は仲間から高評価を受け、次世代への継承の重要性が強調されている【栗栖由喜】。当記事では、高齢化が進む伝統文化に関わる産業に関して、意欲的な若手の活動が示された。しかし、全国的に伝統文化の保存の担い手が減少している課題がある。
立論者はグローバル化は伝統文化にとって脅威であるという立場から立論し、他の参加者はグローバル化は伝統文化にとって脅威でないという立場から反論した。
前提質問
Q.伝統文化が産業として発展するという立論はありか
A.あり
意見・論点
1.経済的な影響
→伝統文化の維持には多額の費用がかかることが多く、特に地方自治体にとっては大きな財政負担となる。例として、古い建造物の修復や保存、伝統行事の開催費用などが挙げられます。文部科学省の調査より、「近年の経済のグローバル化・成熟化や社会構造の変化等に伴い伝統工芸品への需要が低迷し、関係者の間で伝統的な工芸技術に用いられる用具・原材料(以下、用具・原材料)の入手難が深刻化し、製作活動や伝承者養成等に支障が出るなど伝統工芸の維持・継承が難しくなっている」とあり、伝統工芸の持続的展開を促していくためにはこれら用具・原材料の量的・質的な維持・安定供給を図ることが必要で、幅広く経済的負担が強いられる。
グローバル経済の中で、伝統産業や伝統工芸品が競争力を失い、経済的に厳しくなる場合がある。安価で大量生産された製品に対抗するために、伝統産業が存続するのは難しくなる。
2..現代社会との乖離(若者の関心の低下)
→伝統文化は現代社会のライフスタイルや価値観と合わない場合があり、若い世代には受け入れられにくいことがある。例えば、漆器はプラスチック製品に代用され、伝統工芸品の売上低下が進んでいる。グローバル化により、若者が伝統産業よりも海外の文化やトレンドに興味を持つようになり、結果として伝統文化の後継者が減少し、その文化が廃れてしまう恐れがある。
Q.SNSが進化している。コロナ禍で売上が売り悩んだ工芸品をSNSで宣伝したら話題となり、売上も伸びた。若者にあったマーケティングをすれば関心の低下も防げる。
A.伝統工芸品に注力する人は実際にいるのか。
3.文化の均一化
→グローバル化により、世界中で同じような文化が普及し、伝統文化が埋もれてしまうリスクがある。多国籍企業や国際的なメディアの影響で、ファッション、食文化、娯楽などが均一化し、地域ごとの独自の文化が消失する可能性がある。
4..文化の商業化
→グローバル化により、伝統文化が観光地や商品として失われることがある。文化が表面的なショーとして消費されることで、その深い意味や歴史が軽視されることが懸念される。
予想される反論・再反論
1.文化の国際的発信
グローバル化は、伝統文化を国際的に発信する機会を提供する。伝統文化が世界中に認知されることで、その価値が再評価され、保護・継承の動きが活発になることがある。
→国際的に認知されるのは確かである。しかし、その過程で文化の本来の意味や価値が歪められることが多い。
Q.グローバル化しなかったら伝統文化が廃れてしまうのではないか。文化が少し変化してまた日本に入ってくることもあるため文化が残っていくという視点ではいいことではないか。
A.形を変えて残るものは文化ではなくただの商品であり、本来の歴史的意義がなくなる。
Q.受け継ぐ人の高齢化は認知が進んでいないから起こる。とりあえず若者に認知を広めるという点ではいいことではないか。
A.若者に上手く伝わらないのではないか。
Q.新しいものを取り入れて広げているものもある(ワンピース歌舞伎など)。これまでも変化して残っているものが伝統文化ではないか。
A.新しいものを取り入れたとき、本来の言葉の意味や歌舞伎の意味が失われている。
Q.外国人に認知されることで文化遺産の認定などにつながることもある。
A.文化遺産などに認定されるものが全てではない。失われていくほうが多いと考える。
2.観光産業の促進(地域社会の活性化)
伝統文化の維持と継承は、観光産業にも大きな影響を与える。外国人観光客は日本の伝統文化に強い興味を持っており、これが観光収入の増加に繋がる。例として、京都や奈良の伝統的な祭りや寺院は、観光客を引き寄せ、地域経済の活性化に貢献している。
→経済的支援をもたらすかもしれないが、長期的には伝統文化の質を低下させるリスクがある。市場の要求に応じて大量生産やコスト削減が求められるため、伝統工芸品の品質や制作過程が簡略化され、本来の価値が失われることがある。
3.技術と情報の共有
グローバル化により、技術や情報が国境を越えて共有されることで、伝統文化の保存や復興に役立つ新しい技術を活用して文化財を記録・保存することが容易になる。
→デジタル技術の活用は確かに伝統文化の記録や保存に役立つが、デジタル化そのものが文化の体験価値を薄める可能性がある
その他
Q.伝統的なものをどうやって残すか。
伝統は2つに分けられる。1つ目は生活実態としての伝統、2つ目は共同幻想としての伝統。
グローバル化が脅威だというのは①の伝統。これに関しては行政などの支援で小さいながらも継続さえしていればいい。
1つ目の伝統について、昔は全員着物を着ていたが、今は実際に着ている少数の人が残っていて、そのイメージも残っている。
A.本来の意味が残っていないのではないか
Q.国際機関などのトレンドは多元主義(その国の伝統文化を認める)。海外でも伝統の継承が問題となっている。どんどんグローバル化を推し進めて国際機関が文化の均一化を止める施策をとってもらうといい。なんとなくのグローバル化は脅威だが、しっかり進めるのはいい。
A.日本はグローバル化に対応できるのか。人材のリソース不足などの問題が多くある。
Q.担い手が日本人でないといけないという意識があるのでは?
外国人が日本文化に興味を持って新たな担い手となることはいいことだと考える。
A.グローバル化=文化が世界に広がっていくという認識。ただ外国の人が日本に働きにきているだけで文化が外に広がっているわけではない。
参考文献
・『博多祇園山笠「伝統守り継ぐ」次世代担う最若手38歳人形師』
(毎日新聞. (2024). 伝統文化の継承に関する記事. 毎日新聞.
URL: https://mainichi.jp/articles/20240712/k00/00m/040/107000c)
・総務省, 統合報告書, (https://www.soumu.go.jp/main_content/000818483.pdf)(最終閲覧日:2024年7月12日)
・木谷 忍, 長谷部 正, 飯塚 聖司, 2011年, 「持続可能な地域づくりのための伝統文化活動の可能性」(
https://www.jstage.jst.go.jp/article/srs/41/3/41_3_731/_pdf)(
最終閲覧日:2024年7月12日)
・高水山古式獅子舞, 2003, 「地域の伝統文化・伝統芸能を継承することの今日的意義」(http://takamizusan-sisimai.o.oo7.jp/tiikibunka.html#:~:text=%E3%80%8C%E6%96%87%E5%8C%96%E8%B2%A1%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%20%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E5%85%B1%E5%90%8C%E4%BD%93,%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%8B%E3%81%A8%E6%80%9D%E3%81%86%E3%80%82)(最終閲覧日2024年7月12日)
先生のコメント
愛媛県にある神社の建物がボロボロだったが、国際機関が文化遺産に認定し、予算がつき、整備されたことがある。
外国人が日本の文化の担い手となり、日本の伝統文化が輸出産業となる。
文化を守るという観点では売るほうがいい(多少変化しても)。
ヨーロッパの芸術は日本に比べると細かい部分はアバウト。
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