ルイージ誕生の意味──協力と対戦  マリオブラザーズ

マリオブラザーズ(アーケード版:1983 ファミコン版:1983/9/9)任天堂


NINTENDO64ソフト第一弾「スーパーマリオ64」は、「スーパーマリオブラザーズ64」ではない。
それにはちゃんとした理由がある。そう、彼は出てこないのだ。
彼とは、言わずと知れたマリオの弟、ルイージのことである。

いまでも、「マリオカート」シリーズなど主に対戦ゲームで出番を与えられるルイージ。
「スーパーマリオブラザーズ2」(日本版)のように、脚光を浴びたこともなかったわけではないが、
基本的にマリオの引き立て役に徹してきたルイージがこの世に現れたのは、
「マリオブラザーズ」からだ。


「マリオブラザーズ」。そのタイトルの意味するところは、マリオ兄弟。
すなわち、「マリオとルイージ」である。
このゲームでは、一人プレイではプレイヤー1はマリオを操作するが、
二人プレイにするとプレイヤー2はルイージを操作し、二人同時プレイが楽しめる。
そのタイトルが示している通り、二人プレイこそがこのゲームの楽しみ方であり、
二人プレイを前提にしたゲームデザインがなされているのである。

元になったアーケード版では、
インストラクションカードに、
「2人で遊べば100人力、友と遊べば又楽し!
 協力し合うか それとも… 裏切るか…」
と書かれており、ゲーム画面にも、
"TWO PLAYERS CAN PLAY AS A TEAM
 OR
 COMPETE AGAINST
 EACH OTHER"
とはっきり表示される(※)。

「マリオブラザーズ」の最大の特徴は、「協力も対戦もできる」ことに尽きる。
相手と協力して敵を倒し、相手のピンチを救っていれば比較的容易にゲームオーバーにならずに先の面に進むことができる。
また、相手を突き飛ばして敵の餌食にしたり、相手を突ついて相手の行動を不能にしたり、相手が倒そうとしている気絶した敵を目覚めさせ、相手を倒すこともできる。
ただし、直接的に相手を攻撃することはできない。
あくまでも、相手の邪魔をするか敵の手助けをするだけなのである。
もちろん、相手を助けようとして、結果として相手の不利な条件になってしまうこともあるし、
相手の邪魔をしようとして墓穴を掘る可能性もある。

「マリオブラザーズ」では、画面構成は左右対称となっている。
これは、左右から登場するマリオとルイージの条件を一緒にするためだ。
ファイヤーボールがマリオを優先的に狙うなど若干の差はあるが、基本的に二人は対等な条件下にある。


協力プレイも対戦プレイも自由にできるゲームというのは最近、ほとんど見かけない。
二人同時プレイといえば、対戦がほとんどで、シューティングなどにたまに協力プレイがある程度である。
一方、「マリオブラザーズ」は、協力も対戦もできる自由なフィールドをプレイヤー達に提供している。
箱庭を提供し、後は自由に遊んでもらうという発想は、このゲームを手がけた宮本茂が最近「スーパーマリオ64」や「ゼルダの伝説 時のオカリナ」で指向しているものと近いといえるかもしれない。

大ブームは過ぎたとはいえ、ゲームセンターでは格闘ゲームを中心とした対戦プレイが依然流行っている。
しかし、「同盟」の要素を持つ戦争を主題としたシミュレーションゲームはともかく、協力も対戦もプレイヤーの意志しだいで(モード選択なしに)可能としているものはその後、ほとんど出ていない。

仮想世界の構築を主題とした最近のネットワークゲームでは、プレイヤーが他のプレイヤーと協力することも敵対することもできるようなシステムが復活しているらしい。
味方となるか敵となるか。善となるか悪となるか。
ネットワークゲームでようやく実現されようとしているプレイヤーの行動の自由度、それはすでに「マリオブラザーズ」に存在していたのである。

※参考:「帰って来た名作ゲーム1978~1987」リイド社 1995
(1999/4/26 綾茂勝太郎)

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