ゼルダの伝説 夢をみる島 (1)未プレイの人のために

(この文章は、ネタバレをしないように書かれています。未プレイの方も安心してお読みください)

 ゼルダの伝説 夢をみる島(ゲームボーイ対応:1993/6/6)、ゼルダの伝説 夢をみる島DX(ゲームボーイカラー対応:1998/12/12)任天堂


あなたがまだ、ゲームボーイの「ゼルダの伝説 夢をみる島」かその改良版である「ゼルダの伝説 夢をみる島DX」をプレイしたことがないなら、
どちらでもいいので、プレイすることを勧める。
また、プレイしたことはあるがまだクリアしていないのであれば、ぜひ結末をその目で見てほしい。


この「夢をみる島」は、「ゼルダの伝説」シリーズのその他の作品とは決定的に違う。

その他の「ゼルダ」では、ストーリーは付け足しでしかない。
心に残るサブイベントはあるが、全体を通してのストーリーはないも同然である。
それは、魅力的なストーリーを用意しなくてもゲーム自体が面白いからだ。
用意できないのではない。用意しなくてもよいからあえて用意していないだけだ。

一方、「夢をみる島」は、ひじょうに優れたストーリーと、そしてそれを表現するための上手な演出がなされている(次回以降に詳述)。
もちろん、ストーリー以外のゲーム内容が他の「ゼルダ」と比べて劣っているわけではない。ちゃんと“ゼルダ”している。
それが、筆者が「夢をみる島」を最高傑作と評する所以である。


しだいに明らかとなる世界の秘密。
それを知ったとき、主人公はどうするのか?
プレイヤーは、ひとつの決断を迫られる。
それは、「はい/いいえ」の選択肢で選ぶような性質のものではない。
主人公の、プレイヤーの行動によってその結果は出る。
ただし、マルチエンディングではない。(※)
結末はただひとつだけ。
問題は、プレイヤーがその結末を受け入れるかどうかということだ。


この「夢をみる島」と並んでゲームボーイの代表的なアクションRPG「聖剣伝説」も、
そのストーリーを評価されることが多い。

おそらく、それは偶然ではない。
ゲームボーイはモノクロ画面で、ドット数も少ない。使える音色も少ない。
つまり、奇麗なビジュアルやサウンドでプレイヤーを圧倒することはできない。
だから、中身、つまりシナリオで勝負してきたのであろう。
単なる「タイニーゼルダ」にならないために。独自の持ち味を追求したのだ。
それは、見事に成功をおさめている。

ついでに言うと、両者に共通しているのは、必ずしもハッピーエンドではないことだ。
が、悲劇的結末、というわけでもない。
ネタバレ寸前なので、この辺でやめておく。ぜひ結末をあなたの目で確かめてほしい。


次回は、「夢をみる島」をクリアした人のみに読んでもらいたい文章である。
未プレイの人は、次回の文章は読まないでほしい。
ぜひ自分で「夢をみる島」の真相を究明してほしい。
一度「夢をみる島」をクリアしてほしい。

※ただし、一度も死なずにクリアすると、エンディングにあるグラフィックが一瞬追加されるが、
 結末が変化するというほどではない。
 ただ、追加点は本編のあるシーンが伏線となっているので、ぜひ見てほしい。

付記:「夢をみる島」は漫画化されているが、漫画版は基本的にゲームと同ストーリーなので、プレイ前は読まない方がよい。
受動的な物語である漫画では真の意味でこのストーリーを味わうことはできない。
プレイ前に読むと損である。
(1999/5/7 綾茂勝太郎)

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