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つなげたい想い。技術者としての使命。

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第9回
6 Sep.2021
【 登壇者 : Code for Japan:関 治之さん 】

第9回目の講義は、「ともに考え、ともにつくる社会」を合い言葉に、「シビックテック」と呼ばれる活動を推進する非営利団体「Code for Japan」の関 治之さんにレクチャーしていただきました。

技術の活用に対する疑念

2011年3月11日東日本大震災。
エンジニアとして活動していた関さんは、オープンソースのソフトを使って震災の情報をみんなで集めて、マッピングしていくサイトをいち早く設計しました。(sinsai.info)
SNSでの呼びかけで、一晩で100人もの人が協力し、サービスをローンチしました。


しかし、sinsai.infoを続けていくうちに、関さんの中には大きな疑問が生まれました。
「このサイトは果たして誰の役に立っているのだろうか」
実際に、被災時にはボランティアの方から「現地の状況を把握できた」などの声があったが、一番情報を必要とする被災した人がスマホを持っていなかったり、電波が繋がらなかったりと、本当に彼らの役に立てたのかと感じるようになったのです。

「技術は人を幸せにするのだろうか」
関さんは技術者として自身の存在意義までを考えるようになたそうです。


「伽藍とバザール」行政のあり方

また、一方でエリックレイモンドの「伽藍とバザール」にあるように、日本の行政が伽藍を組み立てていることにも、疑念を抱いていていました。

ここで伽藍とバザールについて簡単に説明します。

伽藍方式とバザール方式のソフトウェア開発のスタイルのことを指します。
伽藍は、大聖堂(Cathedral)を立てる時のように、設計者が緻密にプランを立てコントロールすること、バザールは、市場(Bazaar)のように、訪れた人々がお互いに必要なものをやり取りすることを表現しています。https://www.amazon.co.jp/伽藍とバザール-S-Raymond/dp/4904807022

行政が伽藍モデルであることは、市民がサービスに関与することが難しく、一つの組織にノウハウが溜まりそれをうまく社会に還元することができない状況に陥ります。また、伽藍の構築は、変化に弱く、現代の変化の激しい時代において、何年もかけて作ることは無駄な行為です。
この問題に気づいた関さんは、行政の仕組みをバザールモデルに適用することを考えました。
そうして生まれたのが「CODE for Japan」なのです。


CODE for Japanの活動

シビックテックと呼ばれるCODE for Japanの活動は多岐にわたります。
人々が集まって何かを提供する「場」を提供しています。そこで生まれたアイデアをプロジェクト化し、知恵を社会へ還元しています。
その活動は、日本各地に広がり、現在は80もの拠点で活動が行われているのです。

事例
東京都COVID-19対策サイト
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp

行政サイトのオープンソースは前例がなく、とても画期的なことでした。このサイトをオープンソース化したのには、大きく二つ目的があり、1つには、他の自治体にもソースコードを活用してもらうこと。2つには、GitHub(※1)を通じて、改善提案を受けることをが目的でした。
それにより、変化の激しい新型コロナウイルスの状況に合わせて、ユーザーからの声を元に、エンジニア達がサイトの最良の改善をいち早く行うことができています。
また、他の都道府県での活用も実現し、多くの人々に使いやすい情報サイトを届けることに成功したのです。



※1 GitHub … エンジニアのプログラム共有の場。他の開発者とともにコードのレビューを行ったり、プロジェクトの管理をしながら、ソフトウェアの開発を行うことができる。


活動1


活動2

活動3
https://decidim.org/ja/


つなげたい想い。技術者としての使命。

講義の冒頭に出された「技術は人を幸せにするのだろうか」という問いに対して、関さんは自身で「技術は人を幸せにする。ただし、正しい目的に使えば。」と答えを出している。
その答えの通り、関さんの活動は、技術を通じて、人々の暮らしを豊かにより良いものにすることを実現しています

では、何が彼の活動を突き動かしているのか。
関さんは、講義の中でこうおっしゃいました。
「なぜやっているのか、それは後世に良いものを残したいからなんです。」

モノを作りだす技術者として、作って終わりではなく、それを社会へ還元し、技術を繋いでいく。
関さんの活動の根源にはそうした熱い思いがあることを知りました。


まとめ

同じ目的を持ったコミュニティでオープンな関係を築き、参加者一人ひとりがそれぞれに役割と責任を持ち、テーマを共有して知恵を出し合って価値を生み出す取り組みを行っているCode for Japanの活動は、コ・クリエーションが叫ばれる現代において、最良にあるべき形なのだと感じました。


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