さようなら、山本文緒

珍しい作家の本を読んだことは無い

本屋の入口近くの島に盛られた売れ筋の中から、
あるいは人から勧められた本、
またそれにより認知した作家の本を読む。

そんな自分が初めてジャケ買いした本

「シュガーレス・ラヴ」山本文緒

表紙いっぱいに好物の板チョコレートが描かれていた

ただそれだけで、それを見ただけで
何時だかなにかの賞で得た図書券を使って買った

今思えばチョコでも描かれてなきゃ
こんな女々しい名前の本など手に取るはずもない

しかしこの本、及び山本文緒との出会いで発見した価値感覚はついこの頃まで私の人生に深々と根を張っていた
それはもう深く、特別、恋愛においては

シュガーレス・ラヴ
これは本の題でもあるが、この本は短編集で、10編入ったうち1番最後に収まっている話の題でもある

10編それぞれに、どこか患い、病み、ハンデを負う女性が出演する。アルコール依存症や便秘、生理痛、肥満、自律神経失調症、味覚障害など。生活習慣病とでも言うんだろか。とにかく、この本に出てくるメインの女性はみんなどこかしら病んでいる。

ジャケ買いしたのは中学生の頃。というか私が本を読んでいたのなんて中学生時代くらいしかないもんだが、俗に言う多感な時期というやつで、教室へはまともに行かずに図書室にだけ現れて本を借りては家に帰る日を年に何度かやっていた。休日には家から2時間ほど歩いて都会へ出て本屋に行き、何か1冊買って帰る。そんなことをしていた時期があった。

そんな時に山本文緒の作品を手に取ってしまった。
だいたい作家は読んだ者の心や人生を変えてしまう自覚はあるんだろうか。こんなもの書いて。やられっぱなしだ

この「シュガーレス・ラヴ」という本、10編のうちどれが1番好きなんだと聞かれたことがあるが、当時も今もそれには答えられない。つまらなく言うが、どれも好きだからだ。

登場人物が病んでいるとは言ったが、それはただの味付けみたいなもんで、そこにドラマがある訳では無い。ドラマの末に病んでいる、その患いが枷になっている。

一般モブの社不の私が骨粗鬆症だろうが、不眠症だろうが病院にいけ、生活習慣を正せと言われてしまいなわけだが、この子達はそうはいかない。
だって短編の登場人物なのだから。不倫したり、恋人を取られたり、継母がいたり、社会からはみ出しちまったりしてるところで一悶着起きる。罪も犯す。

しかしその一悶着は自分の身にも起こりかねないことばかりだ、同じ境遇なら、同じことをしただろうと思える話もある。

山本文緒の作品には、そういう感情を抱くものが多かった。

いちばん有名であろう「恋愛中毒」

これなどその際たるもんで、主人公の女に大変共感してわかる、わかるぞと思いながら読み進めて行ったところ、この女性が犯罪者でありさらに罪を重ねる場面に出くわす。どぎまぎさせられたもんだ、まさか同じ様な思考の持ち主だと思っていた主人公が前科者で再犯しようとしているなどと思いもしない。なんだ、私は犯罪者と思考を同じくする者だってことかい。おお、怖。

「ブルーもしくはブルー」、「ファーストプライオリティー」「プラナリア」なども読んだ。

また眠たくない時に改めてそれぞれについては書き記しておきたいのだが、どれもこれも全く厄介な、私の人生の形を変えた作品たちだ。

これを読んでからというもの、男の人と関わるのにも苦労したよ。

いや、亡くなった方にそんな罪を押し付けるようなこと言っちゃあいけないね。山本文緒さん、すみません。でも本当に人生動きました。私はあなたの作品どれも本当に大好きです。何度も読んでしまう。


世間の歌なんかには女性の気持ちを歌ったものが沢山ある気がするけど、そんなのばかり聞いていたもんで、こういう女性を客観視した作品には心を動かされたもんだ。

あぁ、眠たくなってきた
また後日出直します。

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