臨床検査の『基準範囲』の真実〜その2
臨床検査の『基準範囲』にまつわるお話シリーズをお届けいたします。
今回は「その2」ということで、検査データを正しく判断するために知っておいていただきたい「前提」についてお話ししていきたいと思います。
そもそも『臨床検査の対象』とは?
今まで何度か「臨床検査とは?」というお話をしてきました。
臨床検査というものは、大きく分けて「検体検査」と「生理機能検査」があり、それぞれが「どのような目的」で「どのようなものを測定」しているか等をお伝えしてきたのですが・・・
「臨床検査の対象」とは何なのか?
というお話はしていませんでした。
そもそも「臨床検査の対象」というのは、人体や動物などになります。人体や動物から血液や尿の検体を採取したり、心電図や脳波計をつけて信号を得ることによって、様々な臨床検査が行われます。
その臨床検査のデータは「人体や動物の状態」を反映しているわけです。
人体や動物などを少し難しい言葉で「生体」と呼びます。臨床検査のデータから何を見ているか?というと、「生体の状態変化」を見ているということになるのです。
生体の変化の特徴
私たちも生体の一つ。そして私たちは絶えず変化をしています。
例えば、金属や物体の重量などを測るとすると、ほとんど変化が見られませんが、私たちの心拍数や体温、血糖値などはどうでしょう?安静にしていても細かく測れば常に変化をしているはずです。
生体には、変化である『揺らぎ』と、『ホメオスターシス(恒常性)』があります。
生体には常に『変化=揺らぎ』が起きていますが、『ホメオスターシス(恒常性)』というものが働いて、一定の範囲内の揺らぎでおさまるよう調節されています。
臨床検査のデータについて考える時には、『生体には揺らぎがある』ということをしっかりと理解した上で見ていく必要があるのです。
測定値が絶対ではない
生体は常に揺らいでいるという性質があるため、様々な目的とする臨床検査項目に適切な測定技術を選ぶこと、そしてその精度はどの程度か、という事が重要となってきます。
生体のあらゆる状態は常に変化していて、止まることはありません。その変化を適切に評価できるような方法や物差しを選ばなければ、状態を把握する事はできないのです。
そして、採取した検体などから、ある測定結果が得られた時というのは、生体の状態が常に変化している中のある瞬間を切り取った結果であり、その値がずっと変わらずに続いていくことはありません。
例えば、早朝空腹時の血糖値が80という値だったとしても、その後食事をすれば上がりますし、しばらくすると下がっていきます。食事をしないまま、一定時間おきに採血して測定しても、多少の動きはあります。80という値が1日中続くことはないのです。
このように、検査結果はあくまでもその瞬間を切り取ったもので、絶対的ではありません。実際には「止まることのない揺らぎ=変化が生体内で続いている」ということを頭において、検査結果を臨床的に判断する必要があるのです。
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