「世界の片隅」 とがみあや #短編小説

 太陽と空は世界の片隅で、二人仲良く暮らしていた。 

ある小さな一軒家で、二人仲良く暮らしていた。

 太陽はよく面白いものを発見し、空はとても物知りだった。   

太陽が走り回って発見したものを、空が調べて記録して。 

太陽はある日疲れた顔をして空に言った。   

「会社を辞めた。僕は自分の目でもっと色んなものを見たい」  

 太陽は押し入れからリュックを取り出して旅の支度をするのだった。  

「人生は、一度きりだから」             

空は驚いた。

自分に相談も無しに決めてしまう太陽に批判をした。     

「君も僕と一緒にこないか」       

空は考えた。太陽の気持ちの考えながらも空は強い口調で言った。    

「私は、今解いている数式がどんな風にすれば解けるかを、とても楽しみにしているの」         

「僕は君と一緒に、世界中の景色を見たいんだ」         

「世界は私たちを中心に広がっていると思う」 

 太陽は空を抱きしめた。  

 「僕はそうは思わない」 

 太陽はリュックを背負って、旅に出かけた。

空は太陽を見送った。     

時が経ち、   

空は本を読んだり文章を書いたりしたけれど、

頭の中は太陽のことで一杯だった。

難しい数式を解こうと机にかじりついても、いつも太陽のことを想った。

−太陽は事故に合ってないかな?そそっかしいから危ない目にあってないといいけどな。

空は太陽の写真を見たり、昔太陽が空に書いた手紙を眺めるのでした。   

時が経ち、                  

太陽はずっと歩いていた。美しい景色も、植物も、人の表情も

全て自分の目で焼き付けようと何枚も何枚も写真を撮り、

現地の人とお話をするのだった。沢山の出会いがあった。

けれども太陽は空のことを片時も忘れることはなかった。         −空は僕のことを忘れたりしていないだろうか?空は考え込む癖があるから、何か思い悩んでいないだろうか?                  

太陽は沢山の光景を見ながら、空に見せたら喜ぶものを探していた。    

時が経ち、                              

太陽は世界を一周して空と一緒に住んでいた家に帰ってきた。       

太陽は少し緊張しながらドアを開けた。                 

空は太陽の足音に気づき、太陽の元に駆け寄った。           

「お帰りなさい」                          

「ただいま」                            

「疲れたでしょ」                          

「心配させたね」                           

「色んなものを見たのね」                      

「数式は解けた?」                         

「うん、解けた。太陽は見つかった?太陽が探していた答えは見つかった?」                               

「…ううん、何も見つけられなかったよ」               

「そう。私は数式の答えは導けたけど、あなたのことばかり考えていて、物事が手につかなかったよ。後悔もしたよ、太陽と一緒に行けばよかったんじゃないかと」                            

「そうかい。僕も後悔をしたよ。ここに居て君と色々話をしたり手をつないでいれば良かったんじゃなかと思っていたんだ。」           

「旅の話を聞かせて」

太陽は背負っていたリュックを下し、開けた。   

「おみやげ」                             

太陽は沢山の珍しい品物を空に渡した。                 

「あなたは色んなものを見てきたんだね」               

「空が喜ぶかなって思って」                      

空は太陽を抱きしめた。                        

空はあったかいスープを、心を込めて作った。              

そしてそのスープを二人で美味しくいただいて、

一晩中語り明かした。

太陽と空は世界の片隅で、二人仲良く暮らしていた。    (終)    

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