時代のうねり - バニラとトンカ豆の香り-

2019年を振り返るポストを書こうかと思っていたら、
もっと大事なことを忘れていた。

前回、次のタイトル予告までしておいたが、
全然変わっていることは、気にしないことにする。

去年の終わり頃、友人数名と我が家で集まることがあった。

メンバーはみんなグルメで、それぞれがオススメのケーキやら何やらを持ち寄ることになっていた。

僕は、そういうイベントごとが苦手で、何を持っていくかもアイデアがなくて、どうしたもんかと困っていた。

スイーツに詳しい知人に何かオススメの美味いケーキはないかと聞いてみたところ、あるケーキを教えてもらった。まだそれほど有名ではなく、知る人ぞ知るケーキらしいが、販売すると即売り切れてしまい、入手困難だという。

シャインマスカット、いちじくは大好きだが、ケーキはそれほどだった自分も、説明を聞いて興味が湧いた。

お店の場所を聞いたところ、予想外の答えがかえってきた。
てっきり、西荻窪か自由ヶ丘あたりに店舗を構えるケーキ屋さんかと思っていたが、店舗はなくECサイトでの販売のみらしい。

ネットで買えるケーキがどんなもんなのか想像できなかったが、
他に候補もないし、気にもなったので、そのケーキを手配することにした。

サイトを見ると、我らが鶴ちゃんのBASEで販売されていた。
商品写真やメインビジュアルもケーキというよりは多少のアパレルっぽさもある独特のオシャレな感じだった。色んな種類のケーキがバーっと並ぶわけでもなく、商品はたった一つしかなかった。

細部へのこだわりから感じられる職人気質でセンスの良さを感じる部分と、ネットに強い人がおらず、荒削りに前に進めている手作り感の両方が感じられた。

日曜日の朝イチという限られた時間しか販売しておらず、それもすぐに売り切れるというので、代わりに買ってもらって無事手に入れることができた。

あんまり良く分かってなかったが、届いてから冷凍のチーズケーキだと知った。

会の当日、食事を終えて、ケーキのタイミングがやってきた。

事前にテーブルに出しておいて、数十分くらい経つと、いい感じで解凍されてきた。

一口目を食べたとき、これは美味い、、、なんじゃこりぁああああ、、とシンプルにそう思った。

香りが心地よくて、柔らかいんだけど、それだけじゃない独特の食感と、甘いのに酸味があって、でもくどくない、みたいなそういう感じで癖になる感じがあった。

これはそりゃ人気になる、職人さんはすごいな!!!!!と、そう思った。

これが僕とMr. CHEESECAKEの最初の出会いだった。

一言でいうと、ただ知人に進められたケーキを買ったら、やたらと美味かったので2019年の一番美味しかったケーキとしてオススメしたいというのがこのnoteの趣旨、の訳がない。

Mr. CHEESECAKEのサイトから、作っているシェフのTwitterにも飛んでフォローをしてみた。

田村浩二というらしい。

そうしたら、アレ、、なんかめっちゃ見たことある、なんだっけなーと思い返してみると、

一時期ドハマリしていたヨーグルトにドライマンゴーをぶっ刺して、一日冷蔵庫に置くだけのバカ美味い最強レシピがTwitterでバズってた人だった。

あのTweetを見た時、こういう専門家の人もこんなにSNSを使うこなす時代が来たんだな、やっぱりプロのコンテンツは違うな〜とか思っていたので、よく記憶に残っていた。

情報発信だけじゃなくて、今は自分のプロダクトも作ってるのか、凄いなーと尊敬した。

Mr. CHEESECAKEの消費者としての興味から、職人・クリエイター・起業家としての田村さんにも興味が湧いていった。

newnは、Empower doers というテーマで、ネット的モノづくりで新しい価値を生むブランドを生み出していきたいと思っているが、

自分たちでブランド立ち上げを検討していく上で、色んなリサーチをするわけだが、世の中には素晴らしいブランドやプロダクトが

本当にたくさんあることが分かっていた。純粋にそうしたブランドを一緒に大きくしていく取り組みができないかと思っていた、前から

思っていたこともあり、こういう本当のクラフトマンがどういう風に考えて、どういう想いでモノづくりをしているのか、色々と話を聞いてみたいと思っていた。

田村さんのTwitterをフォローしてみると、newnのCIもお願いしている伝説のデザイナー、タカヤ・オオタとリプライで楽しそうにじゃれ合っていた。

Mr. CHEESECAKEというプロダクトとTwitterや記事から垣間見れる田村さんの人柄にも惹かれていて、とにかく会って話してみたい、

と思いタカヤに紹介してもらうことにした。

恵比寿で3人でお茶するはずが、タカヤはいつもの調子で、当日のドタキャンをぶっ放してきやがった。それっぽい言い訳をしていたが、ただのすっぽかしだろう。

約束していた恵比寿の喫茶ヴェルデに入りかけた、やたら背が高くて、デカくて強そうな田村さんと初対面を交わした。

コーヒーと手作りのシフォンケーキが美味くて、お気に入りのお店なのだけど、わいわい話す感じの店でもないことに気づき、代官山方面に2人で歩いて別の店に入った。

簡単な自己紹介をして、なんでMr. CHEESECAKEをはじめたのか、どういうビジョンでやっているのか、

どこを目指してやっているか、困っていることや力になれそうなことがないか、色々と話した。

職人として本物であることは、顧客としてとにかく美味いというプロダクトパワーで会う前から魅せつけられていたのだけど、

実際に話してみると、料理人としての確固たる土台がありながら、数字と論理に強く、時代の変化に柔軟で正直な人という印象だった。

運営のことを聞くと、作る事を任せられるキッチンメンバーはいるが、その他は田村さんがほぼ一人でギリギリ回している状態だった。

「田村さんって、Mr. CHEESECAKEどうしていきたいんですか?」

「まずは日本で一人でも多くの人に食べてもらいたい。そしてトーキョーチーズケーキというカテゴリーができるくらいMr. CHEESECAKE世界に広めたい。ニューヨークチーズケーキというカテゴリーができたのと同じように。

ただ、ここまでは何とか走ってきたが、今まで料理人だった自分にとってはどんどん未知の世界なってきているんですよね。」

食という世界共通のテーマであることや、ヨーロッパで修行していたバックグランドからきているのか分からないが、

世界展開を恋い焦がれるものではなく、当たり前であることが抑揚がない淡々とした会話からも伝わってきた。打算的にデカイことを言うというのの真反対だった。

僕自身はすでに顧客としてMr. CHEESECAKEのファンであったが、実際に創っている人の想いと味へのこだわりを聞いて、より一層このブランドとプロダクトの可能性をより感じていた。

そして、Mr. CHEESECAKEを食べたときに僕自身が感じた日常の小さな幸せを、もっと多くの人に届けたい、そう思った。

日をおいて、キッチンに見学を行かせてもらって分かったことは、(当たり前だけど)

なんといっても、Mr. CHEESECAKEのコアは、キッチンから想いを込めて、一つずつ丁寧に手作業で生み出されるチーズケーキ自体と、そのチームだった。

キッチンの方々が、大切な人に贈り物を作るつもりで作っていると言っていて、これこそが根幹にある強さなんだと気づいた。

プロダクトをより多くの人に届けていくことや、田村さんができないこと、苦手なことをチームとして支えるパートナーとして、

グループとして一緒にやれないかと、世界にMr. CHEESECAKEを広めたいと、一緒に戦っていきたいと想いを伝えた。

田村さんがこのとき、どう思っていたのかちゃんと聞いてみたことがないが、意気投合して、僕らは一緒のチームとして世界を目指すことになった。

そこからは、まずはサイトのリニューアルだ。
田村さんは人の縁をとても大事にする人で、そういった意味でもタカヤとやりたいと言ってくれて、CIだけでなく幅広くブランド作りをやろうと声をかけた。

システムの改善だけでなく、ポップアップ、急成長に負けない生産基盤の拡大のためのキッチンの移転準備、配送数の増加によりロジスティクスの抜本的改善と色々と怒涛のような数ヶ月が過ごしてきた。

newnからフルタイムのメンバーさやぴーが出向し、田村さんの想いを形にするチームの一員として何から何まで物凄い馬力で大活躍してくれた。

Mr. CHEESECAKEに頼れる新メンバー(麻子さん、もろんのん)も入り、着実に組織になってきた。

有り難いことに、事業としても急成長をし続けているMr. CHEESECAKEであるが、まだまだ生産が追いつかず、買いづらい状況が続いてしまっている。年明けからは大きくなった移転先の新規キッチンから、日本中に、世界中にお届けできるように頑張っていきます。

LVMHが、クリエイティブとビジネスの融合を経営システムとして編み出したように、newnなりのD2Cの新しいシステムを田村さんと一緒に創り出していきたい。

2019年もありがとうございました。良いお年を。


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