暗号紹介:ベーコンの暗号 暗号の仕組みとその特徴
用語について
ベーコンの暗号は英語ではBacon's cipherというが、厳密にはサイファー(個々の文字を別の文字に置き換える)とは別物である。これは一見して「これは暗号だ」と分かる文章ではなく、何気ない文章を装いつつ情報をその中に隠す技術・ステガノグラフィーに属する手法である。このことに注意。
ベーコンの暗号とは
ベーコンの暗号は、イギリスの哲学者フランシス・ベーコン(1561-1626)が1605年に考案した情報秘匿の手法である。
ウィキペディア(英語版)「Bacon's cipher」
暗号解析サイトdcode.fr内のベーコン暗号化・復号ツール
暗号化方式
まず、AからZまでのアルファベットを、aとbからなる符号に変換する。
変換の方法は2種類あり、「IとJ、UとVを同じ符号に当てはめる」方法(第1バージョン)と「すべてのアルファベットに個別に符号を当てはめる」方法(第2バージョン)がある。ここでは後者を用いる。
要するに、Aを0、Bを1、Cを2、……、Zを25に当てはめ、その数字を5桁の二進法で表現し、0をa、1をbに置き換えたものがベーコンの暗号(第2バージョン)である。
「example message」を符号化すると次のようになる。
「aabaa babbb aaaaa abbaa abbbb ababb aabaa abbaa aabaa baaba baaba aaaaa aabba aabaa」
アルファベットをaとbで符号化したが、そのaとbの羅列そのものがそのまま暗号文として17世紀イギリスの闇を飛び交っていたわけではない。そんなことをすれば、「解読してください」と言っているに等しい。
ではこのaとbは何なのかというと、2種類の文字の書体を表している。例えば、aは通常の、bは太字の文字といった具合である。実際に、次の例文に「example message」を仕込んでみた。
Francis Bacon was an English philosopher and statesman who served as Attorney General and as Lord Chancellor of England.
これはあくまでも分かりやすい例である。しかし、不自然に文字が強調されたりされなかったりすると、やはりあからさまに怪しい。実際のところ、どのようにして当時の人たちが秘密を仕込んだのかは分からない。しかしベーコンは手書きの文字の書体をわずかに変えることで、2つのタイプを表現するという手法を紹介しているようだ(後述の参考動画も参照)。これだと、意識しないと気づけなさそうである。
手書きの文書ならば書体の微妙な書き分けが容易だが、現代のコンピューターテキストでは2つの書体をさりげなく仕込むのは、なかなか難しそうに思われる。
復号方法
暗号化とは逆のことをすればよい。文字を5つずつ切り分けて、予め取り決めていたように2つの書体をaとbに分けて、メッセージを復元する。
解読方法
まず、秘密の存在に気付いている時点でもう暗号を破ったも同然である。あとは文字を5文字ずつ切り分けて、2つの書体のどちらがaかbかを試しつつ、解読すればよい。
逆に、そもそも文章が巧みに2種類の書体で書き分けられているということに気づけなければどうしようもない。
ベーコンの暗号の特徴
・なぜか太字や斜体の文字がある、など文字の書体が頻繁にかつ不自然に入れ替わっている文章を見たら、ベーコンの暗号を疑ってもいいかもしれない。
まとめ
・ベーコンの暗号は、正確にはステガノグラフィーの手法であり、情報の存在自体を表向きの文章などに秘匿するものである。
・表向きの文章を、2種類の書体を使い分けつつ書き、その書体の違いに秘密のメッセージを仕込む方法である。
参考文献・資料
・ウィキペディア(英語版)「Bacon's cipher」
・The bacon Cipher Explained
参考動画。
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