〖余談〗の時間 その参


 私は京都生まれの大阪育ち。幼稚園入園くらいから高校生時代まで、大阪府の東大阪市で暮らしていました。ごちゃごちゃした街で低所得者が多く、長屋住まい、お風呂は銭湯という住民も多く。ある意味とても大阪らしいところでした。そうそう、全国でも知られる『河内弁』の地域でもあります。
 そんな私が育った東大阪の下町。昭和40年代中後期は10円でタコ焼が3~4個買えました。ごく普通の住宅地の道路、車もたいして通らないような場所で小さな屋台をおばあちゃんが一人でやっていたり、一般家庭の主婦が自宅一階で家事をやりながら片手間に営業していたりと... ちょっと今では考えられないような光景ですね。そういう感じの店が東大阪だけじゃなく大阪中にありました。大阪人の『たこ焼』の文化はやっぱりすごいものです。筋金入りですよ。それはそうと、そんな店って保健所の営業許可取ってたのかな? 多分取ってなかったんじゃないかな? 

 そんな大阪の庶民の町で育った私からすると、たこ焼について京都人が話すワードに違和感を覚えるものがあります。10~20年くらい前のことで最近はあまり聞きませんが、そのワードとは『タレ』。大阪及び全国の人だと恐らく『ソース』と言うところ、京都の何割かの人が

 「タレ塗ってください。」

と言うんです。これには驚きました。焼き鳥やみたらし団子ならわかるのですが、たこ焼のソレをソースと言わないんです。既に幾つかの有名メーカーなども『たこやき用ソース』が販売されている時代なのに一定数の人が『タレ』と言っていたのは今思い出しても不思議なことです。

 また、関西以外の地域の人なら理解もできなくはないのですが、当時(20数年くらい前)の京都の多くの店では刻んだキャベツが普通に入っていました。おそらく古くからある有名人気店がそうしていたからだと推測されます。そして私の店がキャベツを入れていないことを知ると、

 「キャベツをケチるなよ。」

と言ってきたお客もいた程です。ところで大阪以外の人にはピンとこないかも知れませんが、キャベツをたこ焼に入れるのは大阪人には基本的にタブーです。大阪人のほとんどは、

 「そんなん、丸いお好み焼きやないかっ!!」

と言うでしょう。京都と大阪はすぐお隣。往来の頻繁な同じ京阪神くくりの土地なのに、こんなに違うんですね。海外で提供されている和食がとんでもないモノになっているのも仕方がないことかも知れません。


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