【海外の代表的なタコ料理】


 本当に有名な料理だけですが案外面白い発見もあります。最初にギリシャ。日本以外でタコをよく食する国で代表的な国、それがギリシャ。実は英語の『オクトパス(Octopus)』は元々古代ギリシャ語からだそうです。そして現在のギリシャではタコのことを『クタポディ(Χταπόδι)』と言うそうです。何でかな? 古代ギリシャ語が英語になって、その元の古代ギリシャ語が今は別の単語になって...? でも意味は同じだそうです。古代も今もそれぞれ『8本の足』という意味なんだそうです。

因みにギリシャや南イタリアでは食堂のことを『タヴェルナ』、『タベルナ』といいギリシャのタベルナの店先には天日干しされたタコが吊ってあるそうで、そこでは炭火焼やマリネが定番のようです。ところで、
『食堂 = タベルナ』って... ねぇ... 偶然でも... ねぇ...。そうそう我がBROGLDでは『タコの赤ワイン煮』というメニューがあります。これはギリシャの代表的なタコ料理です。タコを大雑把にブツ切りにし、オリーブオイル、玉ネギ、トマト、香辛料、そしてもちろん赤ワイン(当店ではルーマニア産黒ワイン)などで柔らかく仕上げた逸品です。特に海外のお客様からの評判が高いいですね。パンと赤ワインが欲しくなる一皿です。

 それはそうと、兵庫県の明石、もちろん日本で一番有名なタコの産地明石ですが、ギリシャと同じくタコを干したものを港町で見かけます。それこそ『凧』を連想させるような平たいものです。竹を用いて形が作られていて、丸い胴体から足(腕)が下にぶら下がっていて、それらが規則正しく並んだ状態のものです。これは後でちょっと触れますね。

 次、情熱の国イタリア。イタリアもタコをよく食べる代表的な国。パスタの材料になっているのは皆さんもよくご存知かと思いますが、サラダ、マリネをはじめいろいろな料理に使われています。最近になって知られるようになったアクアパッツァもありますね。でっ、ここではポルポ・アフォガートを紹介します。ポルポは『タコ』、アフォガートは『溺れる』という意味で日本語では『溺れダコ』と呼んでいます。先程のギリシャ料理とちょっと似ていて、オリーブオイル、ニンニク、鷹の爪、トマト、塩、パセリの茎、そして違うのは赤ワインではなくて白ワインで煮込みます。こちらは白もしくはロゼワインで楽しみたいですね。

 スペインで有名なタコ料理といえば、もうこれですね『タコのガリシア風』。スペインのガリシア州の伝統料理。ガリシア州ではポルボ・ア・フェイラといい『正調タコ料理』という意味なんだとか。スペインの他の州ではポルポ・ア・ラ・ガジェーガというらしく、それを日本語にしたのが『タコのガリシア風』。なんだかガリシア州の

「他の州と一緒にするんじゃねぇっ!!」

感が伝わってきますね。日本で言う『明石焼』を神戸・明石の人が『卵焼き』と言うのとちょっと似ているのかも知れません。なんでもガリシア州にはこの料理専門の女性料理人もいるのだとか。また同州のオカルバジーニョというところでは夏にタコ祭りが開かれ2018年には世界最大のポルボ・ア・フェイラ(正調タコ料理)の記録に挑戦したらしいです...。ゴメンなさい。明石と一緒にするレベルではないみたいです。ギネスには申請しているのかな?

ガリシア州はスペインと言っても地中海に面した場所ではなく、スペイン北西部にあり、ポルトガルの北隣、つまりはイベリア半島の北西の角に位置する大西洋に面した所にあります。言語の話になりますが、スペインはもちろんスペイン語。ですがガリシア州はカスティーリャ語、ガリシア語が公用語(固有言語)となっています。なんだかややこしそうですね。以前バルセロナのあるカタールニャ州の独立問題もありましたし、結構地域間の問題が複雑で大変そうですね。そういえば元々スペインという国はイベリア半島に3つあった内の2つの国の王族が政略結婚してできたと聞いたことがあります。ポルトガルだけそのままなんですね。日本でも福岡市と北九州市、鳥取県だと因幡と伯耆みたいに『一緒にするなよ~っ。』って感じの地域ありますからね。王族が違ったわけですからもっとすごい確執があるのかも知れません。

まぁそれはそれとして、その『タコのガリシア風』。茹でたタコをこれまた茹でたジャガイモと木の皿に乗せるのが定番です。タコは茹で方がたりなかったり、茹で過ぎていてもダメだとか...。いわゆるパスタのアルデンテみたいなのがいいそうです。オリーブオイル、パプリカパウダー、カイエンヌペッパー(一味唐辛子の細かい粉末)をぶっ掛けて出されます。なんでも伝統では水を飲みながら食べてはいけないそうです。赤ワインの若いものとあわせるのがいいのだとか...。ちょっとコレ知っていると大人カッコイイかもしれません。ただ、残念ながら最近では衛生上の理由で木の皿が衰退しているそうです。う~ん... 残念ですねぇ...。でも私の店では専用の木皿に盛り付けていますよ。

 続いてアジアに飛びますが、韓国の『サンナクチ』。サンナクチとは『生きたタコ』と言う意味だそうで、生きているテナガダコをぶつ切りにして、ごま油やコチュジャンに絡めて食べる料理。見た目のインパクトが大きいので知っている方も多いと思います。TVでもちょくちょく紹介されています。前述しましたが、日本でも提供する店が増えているせいでテナガダコの価格が上がっているようです。私の立場では、吸盤の中など雑菌の対策がちゃんとされていることを願うばかりです。まぁ大きなニュースになっていることを聞いたことがないから、基本的に大丈夫なんでしょう。しかし、上手く食べられない場合、喉に吸盤が張り付いて最悪窒息死することもあり、イギリスの大衆紙サンでは『世界の危険な食べ物8つ』とういのが掲載され、このサンナクチが含まれているそうです。因みに、日本のフグ料理も掲載されているそうです。


 世界のたこ料理はこれくらいにして、って言うか... タコでないと成り立たない料理をこれくらいしか知らないのでゴメンなさい。そこで日本のタコ料理で知られるものは多々ありますが、その幾つかの料理の中でも特別な一つ『たこ飯』。この『たこ飯』についてちょっと書かせていただきます。

 一口に『たこ飯』と言っても色々あります。地方や産地でレシピが違うようです。まず有名処の兵庫県は明石。先にも書きましたが、ギリシャ同様干したタコがご当地のノスタルジックな風景の一部にもなっている程です。ここではその『干したタコ』が『たこ飯』の材料。1~2日天日干しにしたタコを軽く炙り、ハサミで細かく切って醤油、酒、味醂、出汁を米と一緒に炊く。もっとも明石でも最近では生タコを使う店が増えていると聞きますが、明石の伝統的(?)な『たこ飯』はこの干しタコを使うのが基本のようです。当然明石の人はそれが一番美味しいと言っています。天日干しで味に深みが出て風味も増すのだとか。

 次のパターンは、タコを出汁で煮て、それを冷ましてからお米と一緒に炊くというものです。結構この手法を使っているところは多いようです。でも何で態々煮てから冷まして炊くのでしょう...。生のタコとお米と出汁で炊いたらいいと思います。が... 恐らくこれは保存のためなのでしょうか? 衛生的には優れたやり方でしょう。冷ましてから冷凍したり、レトルトのように熱処理しても問題ないわけですから。

 さて次は、出汁とタコを煮て、それを炊き上がった白ご飯に混ぜるというやり方。炊き込みご飯ではなく混ぜご飯ですね。これはこれでアリなんでしょうけど、やっぱり一緒に炊いた方が『たこ飯』としては王道のような気がします。

 でっ最後。私の店もそうですが、やはり生のタコと出汁と米を一緒に炊く方法。明石の方には申し訳ないですが私はこの炊き方が一番と考えています。干したタコの風味、旨みも魅力的ですが生のタコを直接炊いた場合、そのタコの食感が他の方法とは段違いです。

 他の諸先輩方の調理法をアレコレ言ってなんですが... 申し訳ありません。まあしかし、ここまで書いちゃったのでついでにもう一つ言いたいのですが...  

「ごちゃごちゃと色んな材料を入れるのはどうなんでしょう?」

牛蒡に人参、インゲン豆や大葉。彩りは確かにいいかもしれませんが、タコの味わい・旨みがわからなくなっていないですか? 折角のタコの旨みが他の材料に消されてしまっていませんか? そういう『たこ飯』に何度も出会いました。生姜の香りをちょっと利かせる程度で、あとは何も必要ないくらい美味しくなると思うんです。タコの味を邪魔せず、ふくよかな香りと艶を与える油揚げなどはその量によってタコの美味しさを増幅させますが、アレもコレもと野菜を入れるのは良くないのではないかと考えています。あと、砂糖を多く入れて甘ったるい味付けにしているのもよく見かけられます。質の悪い、旨味が抜け切ったタコを使っているからでしょうか? 砂糖の甘味でごまかしているように思えてなりません。本当に美味しい『たこ飯』を食べたことがない人が作ったんじゃないかと思ってしまいます。タコの旨味・風味がご飯に沁みてこその『たこ飯』です。そうでなればソレは『たこ飯』ではなく具にタコが入っている『醤油や酒の味付けご飯』です。こんなことを続けていると永遠に『イカ飯』に勝てないですよ。(そこに行くんかぁ~いっ!!)


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