タコの種類・タコの旬


< タコの種類 >

 では次のお話。タコの主な種類について。世界にはタコは200だの300種だのと書きましたが、なんと言ってもマダコですら変な姿と生態。同じ仲間でも、マダコと似たタイプからエイリアン? を連想させるようなかなりの変わりモノもいますが、ここでは日本近海に生息し食用となるもので、マダコ以外のものを取上げます。

 先ずはミズダコ。世界最大のタコ。身が柔らかく水っぽいことからその名が付いているそうです。オオダコとも言われます。日本では東北から北、アラスカやカナダ、アメリカといった北太平洋に生息。足(腕)を広げた大きさが3~5m。体重も50kgにもなるそうです。因みに最大記録ではなんと体長9.1m、体重272kg。加熱した肉はマダコにくらべコリコリしていると言われ、それを理由として大阪の某有名タコヤキ店ではこれを使っているそうです。んっ... マダコより安いからじゃないのかな...。

 イイダコ。東アジアの浅瀬に生息。最大30cm。卵の一粒が米粒と似ているからイイダコ(飯蛸)。足の付け根あたりに眼のような文様があり、学名(英語)はそれに因んだ名がつけられています。マダコと同様タコ壷漁が主ですが、大きな2枚貝を壷として使います。バーベキュー用として串に刺して売られている小さなタコは基本的にこれです。卵が胴体にぎっしり詰まっているものは高価でオスは安い。シシャモと似た感じですね。

 ヤナギダコ。大型で、東北から北海道の主に太平洋側に生息する。マダコより柔らかく主に蒸したり茹でたりしたものが流通しているそうです。ヤナギムシガレイという深場にいるカレイと獲れる場所が同じことからその名が付いています。西日本ではほとんど流通しておらず、マダコより安いタコです。10年くらい前ですが、マダコのように見せかけて売っていたスーパーがあったとかなかったとか...。卵はマダコ、ミズダコに比べ一粒一粒がかなり大きく、北海道では『タコマンマ』と呼ばれ、三杯酢に漬けたり煮炊きしたり色々な料理にされています。しかしそのビジュアルは... ちょっと昆虫の卵や蛹に似ていてグロい...。すいませんあくまでも個人的な感想です。

 テナガダコ。その名のとおり足(腕)が非常に細くて長いタコです。主に西日本で秋から春に漁獲されます。肉質が弱く、歯応えは期待できません。煮炊き専用と言ってもいいでしょう。鳥取の境港の市場で見かけ安い値段に惹かれ買ったことがありますが、『弾力のない極細の竹輪』みたいでした。味も薄くやはり煮物、炊き物がいいでしょうね。しかし韓国料理で知られる『サンナクチ』に使われているものは実はこのテナガダコの小さなもので、この料理が有名になってからは生きたものは高価になっているようです。美味しいタコではないのに...。

 ウデナガカクレダコ。沖縄地方、南西諸島に生息する比較的小さなタコです。最大で50cmイイダコと似たサイズですが胴体に対して足(腕)が細長い。沖縄以外では亜熱帯域から熱帯の西太平洋海域にかけて広く分布し、遠浅、砂浜、岩やサンゴ礁の割れ目に潜んでいます。南西諸島では食用とされますが一般的に流通はしません。また沖縄の釣具店ではフエフキダイ科の魚やロウニンアジなどのエサとして高価格で販売されています。八重山諸島のとある地域では、結婚した夫婦が蛸を食べるという風習があるらしく、これは絡み合った2つのタコを簡単に離すことができないことから、夫婦が末永く幸せになるように願って始められたそうです。おそらくではありますが、そのタコがウデナガカクレダコではないかと思います。


< タコの旬 >

 さてさて、お次は『旬』。大勢を占める意見として、マダコの旬は夏です。が、冬と言う声もよく聞きます。私の知る限りでは瀬戸内海は夏、宮城の志津川辺りでは冬と言われているようです。明石や淡路島では6月~8月のタコを『麦わらダコ』と言うそうで、麦の収穫期で麦わら帽子をかぶる頃のタコがまだ若く、味もよく、柔らかく、香りも良いと言うことからそう呼ばれています。7月初旬にタコを食べる風習、『半夏生』(はんげしょう)もあることから、やはり夏なのでしょうか。それに、

『土用のタコは親にも食わすな』

なんて言葉もあるようです。私は聞いたことないですけどね...。

『秋ナスは嫁に... 』

と似ていますね。『パクリかよっ!!!!』って突っ込みたくなります。因みに俳句の季語として『蛸』を用いる場合、それは『夏』だそうです。その辺りは旬と関係が深いのかなって思いますね。

ところで志津川のある東北ではタコの旬は冬... どうしてでしょうか? 一説によると夏のタコは産卵期であり、栄養が卵にとられて身が柔らかい、一方冬のタコは身が締まっている。東北ではその固い身を好んだ。という話もあります。

「...。」

また変ですよね... 矛盾ですよね... 明石のタコは身が締まって、陸を歩くなんて言っておきながら、

『卵のせいで柔らかくなっているのが良い』

こうなると何を信じていいのやら? 消費者を馬鹿にするのも甚だしい。何にせよ旬は夏と冬で決まりのようです。因みに関東では正月の『おせち』に酢ダコを使うことが多いとか。それはそうと、

「『半夏生(はんげしょう)』ってなんですか?」

ってことをたまに聞かれるのでこれも説明しておきます。『半夏』とは季節の変わり目を表す雑暦(八十八夜や彼岸と同じ)の一つで、夏至から十一日目を指します。『田植えの終る日』なんだそうです。太陽暦では7月2日頃になります。かなり遅い田植えのように感じますね。昔はそうだったのかな? そもそも『半夏』とはドクダミ科の多年草のことで、この時期に咲く薬草です。それが名の由来になっているようです。またこの頃にタコを食べる習慣が生まれた理由について、実はコレといって根拠のある話はどこにも無いようなのです。有力な説としては、タコにはタウリンという物質が多く含まれているため疲労回復に効果があり、夏の盛りにタコを食べて元気を取り戻すことを目的にしたと言われています。


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