令和のスクールカウンセラーの活動に期すこと

モンスターペアレンツ校かつ生活指導困難校の都心一等地のいわゆる第一中に赴任したことがあります。小池さんが250人雇い止めしたスクールカウンセラーの処遇につき蓮舫さんが問題にしたことは万感の思いがあります。

教育というのは、子どもや保護者の行動という症状先行で業務が発生し、様々な知見が必要になりました。「役割フリー」のスクールカウンセラーには活用が進むほど負担が大きく(やる気組は進路がある中学校赴任希望を出します)様々な職種が試験的に学校に入りはじめました。例えば、スクールソーシャルワーカーやスクールロイヤーです。この業務は中堅スクールカウンセラーは兼務していた運用がございます。

スクールカウンセラーがわからないことは保健センターや子ども家庭支援センターに架電し、専門知識を求めます。スクールポリス、スクールロイヤーという取り組みもありますが、警察に臨床心理士が登用されるようになり、このようなセクションとの必要時の連携や方法も、教育庁からスクールカウンセラーに周知されるようにもなっています。

その前段での取り組みでは、やる気のあるスクールカウンセラーが、それぞれ学校長から裁量を付与され責任を記載し、児童相談所に架電し、法律上の問題につき専門家に確認をして必要なメンバーに留意しながら共有します。何事も責任が発生しますので、ここまでやるには学校長からの裁量の付与が必要。

そのような連携や、専門家に助言を求めるという方法論を教職員に伝授する、部会にかけ、承認を得て、申し出をし、決済され裁量を得て、やって見せる、というような取り組みも、またスクールカウンセラーに教育庁から指示のある業務でもあります。

スクールカウンセラー、というと児童、生徒の話を聞いたり心情に添ったりを、イメージされやすいのですが、既に学校には東京都教育庁採用だけでなく区市採用のスクールカウンセラーや心の教室相談員が入っており、中堅以上になると人材を使い、子どもの心にかかるマネジメント業務が増えます。

校内外の多職種が、それぞれどのような情報を共有していて、各分掌では何が協議されていて、現状の問題は何であるのか。就学支援金対象家庭か。
それを時に管理職に整理して伝えて相談し、自身の取り組みを決定してゆくのもスクールカウンセラーの仕事です。
これは東京都教育庁の教育行政施策「チーム学校」における、心の教育にかかるチーム構築、と呼ばれる業務です。

スクールカウンセラー中堅以上は、おおよそ心にかかる、児童生徒を育み家庭を守るマネジメントに参画しています。

スクールカウンセラー事業につき、東京都の場合は、先ずは専門家のパイロットスタディを経て、中学校をメインに配置を進め、それから学校ニーズではなく全校配置を先にして効果測定をした、という歴史的経緯がございます。

従って、スクールカウンセラーの活動の拡充には非常に意義を感じていますが、小池都政でのスクールカウンセラー250人雇い止めには、それはそれで納得がいく。
学校というところは全員がスペシャリストですから、多様なニーズに全てのスクールカウンセラーが応えられたりやる気があるとも思わない。

しかるに、単年度契約、都議会の予算次第という雇用の不安定さや研鑽にかかる持ち出し、心身故障でその任を解くというシビアスクールカウンセラーの処遇が、スクールカウンセラーのベテラン化、キャリアパスの問題に、大きく阻害因子となることも、また事実です。

思えば心理臨床の世界というのはシビアで、組織課題、来談者ニーズと改善に応えられない方は淘汰されていく、という実情が非常にビビッドにあります。いわゆるヒマな人が出てくる、というのは、何人か心理職がいる職場では非常にわかりやすい。

ぶっちゃけのところ、なんちゃらカウンセラー?何をするんだかしてるんだか判らん、というのは残念かな学校にもあって、来た子どもの話だけを聴いているスクールカウンセラーも、また多い。

スクールカウンセラー事業というのは研究事業ですので、契約更新の可否や配置校決定など人事は、とても面白い方法になっています。
学校とSCそれぞれが、スクールカウンセラー活用方針にのっとった事例報告を提出し、他のスクールカウンセラーや学校の参考になることを明示して、東京都教育庁に上げます。それが人事情報にもなり、また教育行政が取り組むべき事柄のデータベースにもなり、教職員研修の参照にもなる作りになっています。
教育庁からは「各担当者がすべて熟読、精査している」と聞きました。

このように、学校というのは全員が専門職であるし、一つ一つの取り組みは膨大なプロセスを経たものです。

大いに忙しい臨床心理士渡世でした。ユーザーは最もシビアですし、業務の形はクライアントが作るものに思われます。

ひところは心理職の活動スローガンとして「役割フリー」と言われましたが、これはある程度何でもやる実運用上の必要でもあるし、それをなす技法論でもありました。
実際問題、スクールカウンセラーという職種は無いんです。初期研修も持ち出し、育成期間は学校側のガマン、キャリアパスが職場に無い。教育相談所等と異なり、研究事業であるスクールカウンセラーの採用試験に受かった者が、スクールカウンセラーなんです。
それはとても周知したい一側面です。

そしてスクールカウンセラーの全校配置には自殺の低年齢化の問題があります。2ヶ月後には児童生徒の自殺において、いくつかあるピークが来ます。

また夏休みをはさんで、進路指導といじめ対策強化月間があります。
いじめは、口撃の目撃、までを含めて、加害、被害、注意できなかったこと(目撃)いずれもが、パフォーマンスレベル低下、自尊感情の低下、モチベーション形成の失敗、将来の精神疾患の発症リスクとなることが判っています。

高等教育機関には学生相談が設置されていますが、就業者にはストレスチェックが義務化され、相談機会の拡充がされています。
国民の健康支援と能力開発が総合的に整備されていて、スクールカウンセラーには、ワンストップの人生の開発支援の取り組みの中の何をやっているのか、という視点がほしい。

また、間違ってはいないのですが、活用が進み裁量を得たときに、中堅以上のスクールカウンセラーに求められる業務は、「子どもの心に寄り添う」というより、子どもの意向を聞き、そのような人材のアサインやリファーもしつつ、子どもの心の生育や成長にかかる校内外の資源や体制のマネジメントです。

このマネジメントの機能が果たされていくと、どうしたらよいのか判らなくなっちゃった子どもに、他の子どもがスクールカウンセラーの相談室を勧める、ということも発生してきます。
子どもにはまた、自分が貴ばれるべき存在であることと、子どもの問題解決は大人の責任であることを、学んでほしい。

ワンストップの人生にかかる支援の中でスクールカウンセラーが担っている役割や、教育という枠組みの中で開発的にできることについても、是非、様々な大人に知ってほしい。スクールカウンセラーには職場内キャリアパスが無い、不発なら干されて何となく茶を飲んでるかクビか、という接遇も。

学校という所に関わるものは、取り組みの一つ一つに様々なフローの見識が関わっているし、全員が専門家で、解決すべき、あるいは開発が急務な国情や社会的課題とも深く関わっています。
キャリア教育もひきこもりや若年者の早期退職から出てきた取り組みです。
常にパイロットがあり改定される。

某社役員は「スクールカウンセラーごとき」と発言し、近所のおっさんには「おうむ(うんうん頷く)」「学校医療なんか狭い世界で」と言われましたが、学校で起きることは子どもの生活圏の出来事全てと連関し、何らかの事情による国策と連動し、更には厚労省の「こころの健康づくり」を参照して、学校では支援と能力開発がセットで提供されます。

取り組みは、また何らかの形で、地域(コミュニティのミクロシステム)に反映されるであろう。例えばPTA主催の研修会にスクールカウンセラーが講師として呼ばれることもありますが、日々の取り組みは何らかの循環を描く。

ここまでいってほしい。


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