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歴史ものを書く時のわたし的「資料の集め方」

 私は大学時代に王朝文学を専攻していたこともあって――というか、日本古代の文学がやりたくて大学の学部学科を選んだのですけど――、学生時代にレポートや論文を書いていたときと似た要領で、歴史ものの小説を書く時の資料集めをしています。

「こんな時代のこんなシーンを書きたいな」と思いついたら、インターネットで「Webcat(ウェブキャット)」を開きます。Webcatとは、国立情報学研究所(NII)提供の情報サービスで、全国の大学図書館や国立国会図書館に所蔵された本に関するデータを検索することができます。(参照:http://webcatplus.nii.ac.jp/faq_001.html#pid001)。
※今は、「WebcatPlus(ウェブキャットプラス)」というサービスになっているようですね

 学生時代「まずはウェブキャット」で、調べたい事柄を含む論文が近隣の大学に所蔵されているか、調べたものです。
 Webcatは、キーワード検索によって、そのキーワードに関連の深い論文や書籍を探すことができます。時代、歴史上の事件、歴史上の人物名などで検索し、自分が知りたいテーマを含んだ論文や書籍をWebcat上で探し、メモします。
 近所の図書館(場合によっては取り寄せもしてもらえますが、できれば足を運べる図書館)に所蔵されているものについて、メモに印をつけます。そして図書館へ行き、該当資料のある書架周辺を、ぐるりと観察するのです。背表紙、手にとって目次、参考文献、そういった部分に目を通します。
 インターネットで検索するだけよりも、同カテゴリのかためられた書架周辺を目で見て、パラパラと開いて中身を確認する方が、ずっと早く、よりほしい情報にアクセスすることができると、私は感じています。
 とりあえず「これだ」と感じた書籍を図書館から借ります。家に帰ってからゆっくり中身を確認し、本当にほしい情報が載っていたものと、返却していいかな、というものとを、仕分けします。
「これはぜったいほしい!」という資料は、自分で購入します。購入した本なら書き込みも付せん貼りもしほうだいですので。(図書館の本には書き込みをすることはもちろん、付せんも貼っちゃダメです! 本が傷んでしまいます。年月を経た本は、付せんの糊でも簡単に傷めてしまうのです。)
 論文を探すなら大学図書館がおすすめです。論文って、ちょっと難しそうに聞こえますが、読んでみるととても面白いものがたくさんあります。こちらからわざわざ興味のある分野の論文を探し出したものですから、興味深くて当然です。もし、すごく読み難くて読んでいると眠くなるような書き方の論文なら、その著者はきっと、論文を書くのがあまりお上手ではない研究者なのだと思います……研究者も人間ですからね。
 大学図書館も、受付で身分証明をして様式に記入をすれば、学外者であっても利用できるところが多くあります。ただ、コロナ禍のあいだは学外者お断りをしている場合もありますので、事前にホームページ等での確認をおすすめします。

 資料ゲットフローとしては、

  1. Webcatで、キーワードから、ほしい情報が書かれていそうな本や論文を探す。

  2. 近所の図書館(足を運べるところ。市図書、県図書、近隣大学など)に所蔵されている本や論文を確認する。

  3. 自分が読みたい本や論文が所蔵されている図書館に足を運ぶ。

  4. 該当の本・論文が置かれている書架を、ぐるりと観察する。周辺に、同時代・同テーマの資料が置かれていることが多いからです。

  5. 背表紙、目次、巻末の参考文献一覧などを見て、借りる本を決める。参考文献一覧に載っている本も、「あたり」が多いです。

  6. 図書館で借りる。

  7. 家で借りた本を仕分けし、読みこむものと返すものに分ける。「これはほしい!」という書籍は、自分で買う。

 ……こんなかんじです。
 ちなみに、ウィキペディアやネット上の記事は、読むのは面白いですが、そのまま資料としては使えません。引用元や、参考文献が記載されていることを確認し、引用元・参考文献のほうの印刷物(紙媒体になっているもの、論文雑誌や書籍)にアクセスするようにします。これは学生時代に教授方によく言われたことです。「出版されたものは、編集者や出版社も責任を負うから、多くの人の目を通って、世に出しても問題がない(誤りがない)と判断されたものだ。だが、ネット上の情報は、だれもが発信できる。また、匿名性も高くて無責任に放言されていることも多いから、それを鵜呑みにしてはいけない。かならず一次資料にあたれ」
 自分が調べたい物事のとっかかりとしてはいいけれど、自分の責任において裏をとれよ、ということなのでした。

 上記は、「歴史ものの小説を書きたい」だけでなく、「レポートを出せって教授に言われたけど、そんなもの書いたことがないからまずどうやって資料を集めればいいかわからない」という学生さんにも、有用な方法だと思います。お役に立てば幸いです。

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