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インク物語

「インク小説、書いてみようかな?」――新年1月2日、そう思いついたのです。インク沼にはまだ片足を突っ込んだばかりの新参者ですが、心ときめかせるインクの色や名前をテーマに掌編を連作するのは、絶対に楽しいに違いないと思うのです。

 私がインク沼に浸り始めたきっかけは……私がそもそも万年筆と出会ったのは、数年前、職場の偉いお人が定年退職なさる際に「俺のお古で悪いけど、使う?」と、立派な万年筆をペリカンのロイヤルブルー(最も基本ともうたわれるインク4001)とともに下賜してくださったからです。当時の私は「万年筆なんてエグゼクティブが使うもので、自分にはほぼ縁がない」というような認識だったのですが、子どものころから便箋を集めたりステッドラー社の色鉛筆をお祝いに買ってもらったりと筋金入りの文具好きでもあったので、飛びつくようにして、謹んで頂戴したのでした。

 そこから「万年筆といふもの」「インクなるもの」を知れば知るほど、それらの奥深さ、精巧さ、ギミック、美しさ……ときめかずにはいられませんでした。インスピレーションを掻き立ててくれるインクへのリスペクトを込めて物語を綴りたいという衝動に、ずっと背中を押され続けているのです。

 インクが好きで、せっかく物書きなのですもの。


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