海外と私①【アルパカ洋品店をはじめるまでの話】
世界史の資料集を見るのが好きで、特に建築の写真を見ては「いつかここに行きたいなぁ」と思いながら、ページをめくっていた学生時代。
特に惹かれていたのは、ドイツのケルン大聖堂、インドのタージマハル、カンボジアのアンコールワット。なぜかはわからないけど、歴史背景云々ではなく完全に見た目の印象でだった。
とにかくケルン大聖堂と、タージマハルとアンコールワットは、死ぬ前に見たい。
初めて海外に興味を持ったのは、中学生の時に家族旅行でアメリカへ行ったとき。なぜ行くのか、なにしに行くのかもよくわからないまま、父の後をついてニューヨーク、ワシントンDC、フェニックスへ行った。(海外出張が多かった父は、兄と私が小さいうちに、海外を見せたかったらしい)
大都市で印象に残ったのは、街中の強い香水のにおいと、フードコートのにおい。匂いに敏感な方で、どうも強いにおいが苦手で、足早に歩く父の後ろを、息を止めつつとにかくせっせとついていった。
灼熱のフェニックスでは真っ赤に日焼けした顔で、大きなサボテンが生える道路を走って、父が仕事で知り合ったというお友達のお宅を訪問した。
英語が特に得意なわけではなかったが、小学校の頃から半ば強制的に習慣化されていたNHKラジオ英会話を毎日聞いていたので、なんとなく聞かれていることはわかった。
「What is your dream?」
当時ヘアアレンジの雑誌を見るのが好きだったので、
「ヘアメイクアーティスト?」
漫画も大好きだったので、
「それか漫画家かなぁ」
と答えて、ボキャブラリーが出てこなくて補足説明がなかなかできない私を、
せかさずに、穏やかな顔でうんうん、と話に耳を傾けてくれた温和なご夫婦をなんとなく今でも覚えている。
家の中の飾りやインテリアも、レストランの照明も、料理も、普段の日本での生活とはちがうもので、「へー」とか「ほー」とか思いながら、言葉にできないながらに心の中では興味津々になっていた。
そして
こんな小さな子どもが適当に話すことに、優しいまなざしで、耳をちゃんと傾けてくれて、
もっと話せるようになりたい、と思った。
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