点取り占い
「点取占い」をご存知な方はどれくらいいるのだろう。
これは駄菓子屋などで売られていた子供向けのおもちゃで、おみくじと同様に小さな紙が折りたたまれ、くるくると開いてゆくとシュールな言葉とイラストが登場する。「勉強して知事さんになりなさい」といった進言や「肝心なことを忘れている」という注意喚起、「変な気持ちになりました」という謎のメッセージや「鼻くそをほじくるな」といった子供受けしそうなものまでバラエティに富んでとても楽しい。昭和十年代に大阪の印刷会社が自ら図案を考えて商品化したというこのおみくじの風変わりな感じが大好きで大人買い、毎朝お茶を飲みながらこれを1枚引いて1日をスタートさせている。 ある日「はっ」とさせられる一文に当たった。「雨の降る日が天気が悪いとは知らなかった」というおみくじだ。天気がいいとはたしかに「晴れ」をさすが、雨は恵みの雨であるし、気に入りの傘やレインコートも雨が降らなければ出番がない、雨はたくさん歌のモチーフにもなっているし、映画のシーンをドラマティックに演出するのも雨だ。いつの間にか雨をネガティブにとらえていた頭の硬さを知らされるとは。
ちなみにわたしの行きつけのバーは「雨ふり」という名前なのだが「晴ればれビル」というビルに入っている。点取り占いと同様に洒落ている。
北海道新聞 朝の食卓 2020年11月27日掲載
アヤコフスキー@札幌。ディレクター・デザイナー。Salon de Ayakovskyやってます。クロエとモワレの下僕。なるようになる。リトルプレス「北海道と京都とその界隈」で連載中 http://switch-off-on.co.jp