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あなたを閉じ込めるのは、私。

精神科病棟の種類は、大きく分けて2つあります。

ひとつは、自由に出入りできる開放病棟。入院する患者さんは、売店に行ったり散歩に行ったり、自由に病棟を出入りすることができます。
もうひとつは、閉鎖病棟。病棟の入り口に鍵がかかった、患者さんが自由に出入りすることのできない病棟です。閉鎖病棟は違法ではなく、法律で認められていて、精神科病院特有のもの。私が今勤めているのも、この閉鎖病棟です。

閉鎖病棟に入院する患者さんは、比較的重症な方が多いです。自分を傷つけてしまうとか、他人を傷つけてしまうとかいう恐れがあったり、他人にとって迷惑な行為をしてしまう人も多くいます。全員がそう、というわけではないんだけれど。

閉鎖的な環境に置くことで、そういう状況からまわりの人と患者さん自身を守る、というのが閉鎖病棟の役割。

でも、私は未だに慣れないんです。自分が出入りする扉に、鍵をかけることに。

患者さん守るため、ってことはわかってます。この環境を必要とする患者さんもたくさんいるって、知ってます。けれど、それでも、この鍵をかけるときの無機質な音に慣れることができないのです。

時々、「出してよーーー!!!」「家に帰りたいよーーー!!!」と言って、開いたドアから無理やり出ようとする患者さんがいます。
その患者さんを私たちは力づくで引き離し、病棟へ戻し、再び鍵をかけます。
そして、ミーティングの時にこう言われるのです。「〇〇さんはドアから飛び出そうとしました。『離院注意』でお願いします」と。

「離院注意」とは、「病院を無断で離れようとしているので注意が必要」ということ。でもね、私は思うんです。長い間入院していたら、そりゃ出たくなるし家にも帰りたくなるよね、と。

その考えは、甘いんだと思います。精神科で働くスタッフとしては。これを口に出したら、そう咎められるでしょう。

けれど、普段から患者さんの思いに寄り添うことなく、ただ閉じ込めるだけのこの場所は、本当に患者さんのためになっているのかなって、疑問が消えないんです。

ただ、閉じ込めているだけの私。私が持っているこの鍵が、患者さんの自由を奪っている。
その感覚はまだ、私の中から消えないし、これからも持っていなければいけないなと思ってます。

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