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「データ譲渡」に関わる著作権と考え方

こんにちは、あやか(@aaa_1205)です!

先日、こんなツイートをしたところ、予想を超える反響をいただきました。

この「データ譲渡」の問題については、私自身も曖昧な対応をとってしまった経験があります。このツイートの背景としては、最近のプロジェクトで当初お話していた納品形式とは異なったご要望をいただいたこともあり、内なる声をツイートしてしまいました。

依頼側も制作側も自分の身を守るために「著作権やデータ譲渡に関わる法律」は知っておく必要があることなので、制作プロジェクトに関わる方みなさんにご活用いただければと思い、このnoteを書きました。

デザインデータは著作権で保護されている

知的創作活動によって何かを作り出した人に与えられる知的財産権(知的所有権)は「特許権」「実用新案権」「意匠権」「商標権」などの「産業財産権(工業所有権)」と「その他」、そして、文化的な創作物を保護の対象とする「著作権」に分けることができます。

以下、引用させていただきます。

「著作権」は、著作権法という法律で保護されています。文化的な創作物とは、文芸、学術、美術、音楽などのジャンルに入り、人間の思想、感情を創作的に表現したもののことで、著作物といいます。また、それを創作した人が著作者です。
産業財産権(工業所有権)等は、登録しなければ権利が発生しません。これに対して著作権は、権利を得るための手続きを何ら必要としません。著作物を創作した時点で自動的に権利が発生(無方式主義)し、以後、原則として著作者の死後70年まで保護されます。
参照元:CRIC 公益社団法人著作権情報センター 著作権って何?
日本の法制度では、「デザイン」は意匠法または著作権法で保護されています。「グラフィックデザイン」は、主に著作権法で保護されますが、著作権は正式な譲渡契約や明確な合意がなければ譲渡されません。たとえ、デザイン料が支払われても、この契約や合意がなければ著作権は譲渡されず、著作者に無断で使用、改変、複製等をすることは許されません(いわゆる「買い取り」は著作権の譲渡になりません)。これはいかなる商習慣にも左右されませんので、デザインの発注や利用の際は、このことを念頭に置いて下さい。また、二次利用、再版の場合も著作者の合意が必要となりますので、使用料などあらかじめ著作者にご相談下さい。デジタルデータについても同様

参照元:JAGDA 日本デザイン協会 【デザインの著作権】

このように、文化的な創作物は創作した人に著作権が自然と付与されます。(著作権法第26条の2)
そのため、依頼したものがデザインデータではない限り、またデザインデータそのものの費用を見積もりに入れていない場合は、無償でお渡しすることはできません。

例えば、ランディングページの制作依頼があったとします。ここで依頼されたことはあくまでも「ランディングページ制作」なので、制作に関わる情報設計・デザイン・実装という過程を踏んだ後、Web上に公開されたものが成果物です。

ここで発注したものは「成果物」であり、途中過程の情報設計だけされたワイヤフレームや実装されていないデザインデータでもありません。そして、成果物を完成させるために制作したデザインデータでもありません。

そのように考えると本来なら成果物以外の納品は不要なはすですが、成果物を納品した後に

「あと、デザインデータももらえますか?」

と言われることは結構あります。

依頼側としては、部分的に他のページに流用したい、テキスト情報だけ変えたい、などの思いがあります。
その一方で、制作側としては、成果物に対しての費用しかもらっていないのに、デザインデータも納品する必要あるのかな?と疑問が生まれます。

依頼側としては、軽い気持ちでお願いしたこと。
制作側としては、疑問が残るけどデータ渡したら満足してくれるかな。

というあるあるシーンで、どのように判断すべきか?何が正解なのか?というところで「著作権」という法律の問題が関わってきます。

著作権とは

著作権は、著作者(著作物を創作した人)が保持する権利です。著作権に関係するルールは「著作権法」という法律で定められています。著作権が発生する物はなにか、著作権の種類とそれによってどんな権利が保護されるのか、を定義している法律です。

著作権が発生する物=著作物は、あらゆる創作物に当てはまります。
小説や論文、講演、記事、音楽、絵画、建築、写真、映画、プログラムなどすべて著作物にあたります。

著作権は、さらに大きく2つに分けられます。

1. 著作権(財産権)
2. 著作者人格権

1. 著作権(財産権)

著作物の利用を許諾したり、禁止することができる権利です。

デザインデータの譲渡=著作権(財産権)を譲渡することです。財産権という名のように、著作物に関わる多くの財産=利益の権利を譲渡するという意味です。

2.著作者人格権とは

著作物は、著作者の考えや知識、技術、想いなどを表現したものなので、著作物で表現された著作者の人格を守るために著作者人格権が定められています。

もし、デザインデータの譲渡をしたとしても、著作者人格権は著作者が持ち続けます。

著作者の名誉・社会的評価を傷つけるような形で著作物を利用した場合、著作者人格権を侵害したとみなされることもあるので、注意しましょう。

デザインデータの譲渡をどう考えるか

前述した通り、デザインデータの譲渡=著作権(財産権)の譲渡を意味します。デザインデータの譲渡権についても、著作者が保有しています。(著作権法第26条の2)

そのため、著作者がデザインデータの譲渡をどう取り決めるか「スタンスを明確にする」ことも重要と考えます。

<例>
制作費としてお見積り・ご請求させていただく費用には
著作権料・データ譲渡費用は入れていません。
納品形式も事前に確認をとります。

原則、当社が制作したデザインデータは
無償でご提供することはしていません。
デザインデータを使用し、他の制作物にも反映したい・一部改変
したい場合などは、著作権の譲渡契約を締結の上、
お買取いただく
流れになります。

買取の価格は、デザインや制作物の内容によって変動するため、
都度お見積りをさせていただきます。
ただ、デザインデータ譲渡=著作権(財産権)の譲渡とも言えるため、
制作費の5〜10倍程度を目安としております。

制作側はこのように表明しておくことも重要です。二次利用についてなど、あらゆるケースを想定し、きめ細かく決めておくと尚良いでしょう。

著作権は、創作者に自然と付与される当然の権利と言えども、依頼側にその認識がなければトラブルに繋がりかねない問題です。

依頼される側の方は、著作権に関する理解を深め、制作する側の方・制作会社は、著作権に関する理解を深めた上で、自分(たち)のスタンスを明確にすることが大切だと改めて思います。

そして、私自身もそのスタンスを明確にすること、事前に双方の認識に齟齬がないコミュニケーションを取らなければいけないと強く認識するきっかけとなりました。

著作権に関して参考になるサイト

私は著作権や法律の専門家ではないので、内容的に不足していたり正確性に欠ける部分もあるかと思います。

より正確で深い情報については、著作権に関する公的な文献やサイト等を参照していただくと良いかと思います。

公共社団法人著作権情報センター
文化庁
みんなのための著作権教室

また、Wepotでも著作権に関わる記事をアップしています。こちらもぜひ参考にされてみてください。(ともさん(@12designNeko)、ありがとうございます!)

それでは、また〜!


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