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#3 白いネコ

【#3 白いネコ】

20歳を迎えたある日。
友達の彼氏がLIVEに出演するということで
私も応援に行きました。

都内にある
全体で50席くらいのライブハウスは
新しくない装いで
昔からここにあるんだろうなと
歴史を感じさせる雰囲気がありました。

私が到着した時には
既に2組目の演奏が始まっていました。

『ドリンク何にする?』
友達の声が演奏の音でかき消されるほど
ステージの上は熱を帯びていました。

『ジントニックがいい』
『オッケー!』

友達が帰ってくるのを待っていると
私が座っている席の前のテーブルの下に
白いネコが座っていました。

『ここで飼われているのかな?』
真っ白な毛で覆われていて
この世の生き物とは思えないほどの
綺麗なネコちゃんだったので

『大事にされているんだろうな』
と思っていました。

友達が帰ってきて、すぐに

『ねえ!あそこにいるネコ可愛いよね!』
とネコちゃんのいた場所に目をやると
その姿はどこにもありませんでした。

『ネコなんてどこにもいないじゃん』
友達にそう言われ、辺りを探していると
いつの間にか演奏が終わり

『次!次が彼氏のグループ!!』
友達は興奮している様子でしたが
正直、私はネコの方が気になっていました。

演奏が始まると
『この曲‥好きかも‥』
そう思った瞬間

真っ白なネコが足元に座っていました。
多少驚きましたが
みんなステージ上に夢中なので
私も静かに見守ることに。

そこで違和感に気がついたんです。

さっきのグループが演奏している時は
全く興味を示さなかったのに
今回の曲は、真っ直ぐに聞き入っているように見えました。

『ネコにも音楽が分かるんだな』

そこからは
音楽よりもネコちゃんとの
不思議な時間の共有が
私には心地よく感じられました。

ラストの曲が終わり
友達と一緒にライブハウスを出ようとした時
ドリンクを作る所にいたスタッフさんに

『真っ白なネコちゃんに癒されました。』

そう伝えると
そのスタッフさんは驚いた表情で

『真っ白な毛のネコを見たの?』
『‥はい、終始私の隣で聴いてましたよ?』
『そっか‥まだいてくれたんだ‥』
『?』

スタッフさん曰く
昔から真っ白なネコの目撃情報があり
このライブハウスの守神だと言われていて
ここ数年は見た人がいなかったので
いなくなってしまったんだと
思われていたそうです。

『教えてくれてありがとう。また来てね。』

少し目を潤ませたスタッフさんは
仕事に戻って行きました。

私はその時
初めて自分にしか見えていなかった
という事実を知りました。

きっとこれからも
ネコちゃんの居場所は
スタッフさんの手によって守られていくだと思います。

また
あの真っ白なネコちゃんに会えるといいな。


次の話(#4正夢)は
夢と同じことが起こりそうになり
ある事件を回避できた話です。

最後までお付き合い
ありがとうございました。

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