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#10 病院のトビラ


#10 病院のトビラ

私が高校生の時。
その日はいつもと変わらない1日で
眠い目を擦り、授業を受けていました。

すると…

教室の外にお母さんの姿がありました。
お母さんの表情から

何かあったんだ

と、私は察しました。

お母さんの元へ行くとすぐに
曽祖母が危篤であることを知りました。

弟を迎えに行き
父が帰るの待ち
その足で病院に行きました。

道中、窓の外の景色がいつもより
白黒はっきり見えていたの覚えています。
 

病院に着くと
曽祖母が入院している病室へ向かいました。
面会時間が終わりに近いのか
エレベーターは降りてくる人ばかりで
乗ったのは私達家族だけでした。

曽祖母の病室は
ナースコールの真横にありました。

後で知った事ですが
ナースコールに近い病室は
重篤患者や看護師の管理が必要な患者が多くいるそうです。

病室のドアの前に立った時…

ドアの下やドアの周りに
黒いモヤが見えました。

それはまるで
トビラの中に黒いモヤが蔓延していて
それが外に漏れ出しているかのようでした。

「怖い」

そう思いました。

直感的にですが死を感じたんだと思います。

トビラの向こうから聞こえるのは

甲高い機械音と、荒々しい呼吸器の音。

私はトビラの前で動けなくなりました。

恐怖を身を持って感じたからです。

すると…

『おねえちゃん、行こう?』

まだ幼い弟が私の手を引っ張りました。

重く感じるトビラをゆっくり開け中に入ると

黒いモヤは足元を覆っています。

弟と手を繋ぎ、恐る恐る病室に入ると…


何本もの管に繋がれて

荒々しい呼吸音をたてながら

機械に生かされている

曽祖母の姿がありました。

人間はこんな風になるの?

弟は、曽祖母の手を握り

『おばあちゃん、がんばって。』

と声をかけています。

私は、恐怖の余り声が出ません。

目の前に横たわる曽祖母は

私が知っている曽祖母ではないように見え

異様な空間に私はのまれていました。


『彩夏も何か声をかけてあげて。』

お母さんにそう言われ

私は自分を取り戻しました。

『…おばあちゃん……頑張れ…』

振り絞って出した言葉でした。

震える手で曽祖母の手を触り

その後も…

『頑張れ……おばあちゃん…頑張れ…』


まるで言葉を忘れてしまったかのように

その二言を繰り返し言い続けました。

どれくらい時間が経ったかはわかりませんが

私達は病室を後にしました。


エレベーターへ向かう途中

曽祖母の病室の方へ振り向くと…

さっきまで扉の前を覆っていた黒いモヤは

一つもありませんでした。

『あれは、何だったんだろう』

さっきまで見えていた黒いモヤと

機械に生かされていた曽祖母の身体が

私は忘れられず

気がついたら家の目の前でした。

数日後。

曽祖母は亡くなりました。

なぜあの時

曽祖母に声をかけてあげられ無かったのか。

もっと伝えられる事があったんじゃないか。

曽祖母が亡くなった後

そんな事ばかり考えていましたが

曽祖母の葬儀は

みんなでお赤飯を食べて

長寿を全うした事をお祝いする雰囲気がありました。

その空気のお陰で

私の気持ちはだいぶ楽になりました。

それから…

私は度々色々な病院へ行きましたが

あの黒いモヤはそれ以来見ていません。

でも確かに

ドアの下や周りには黒いモヤがありました。

死期が近い人間は

黒い影が近くにある。

という話は度々聞きますが…

あれは何だったのか。

今でもわからずにいます。


そして何度も言いますが…

私には霊感はありません。


「ちょっとだけ不思議な体験」

#1〜#10までお届けしました。

私の体験談を読んでいただき

本当にありがとうございました。

次は、オリジナルの物語を連載します。

楽しみに待っていただけたら

嬉しいです。


最後までお付き合い

ありがとうございました。


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西田彩夏

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