第4回 リアルテキスト塾レポート ~未来を描くということ~


「 なんなんだ、これは。
いったいどこが”テキスト塾"!?  」

驚きと発見と、してやられた!のニヤニヤの連続。

良い意味で期待を裏切られた、刺激溢れる全4回の講義が終わり、
4ヶ月が経とうとしている。

橘川さんにぶんと放り出され、前のめり気味に
スタート地点に立ったというのに、
未だ私は前進していない。

自分の中から溢れ出ていた「 発信したい欲 」は、
いったい何処に行ってしまったのか。

容赦なく進み続ける日々の中に、ずん、ずんずんと
埋れていってしまったように思う。

やっぱり「 発信する 」って、とてもパワーの要ること。

ゴールの見えない長距離マラソン、しかり。

息切れしたり、途中で立ち止まりたくなっても、
目標を少しずつ前へと伸ばし、
あと一歩、あと一歩…着実に前進していく。

その地道な積み重ねの先に、「 気づいたら達成しちゃってた 」があるのだ。

ここに、そのベイビーステップを刻む。



* * * * * * * * 

7月の蒸し暑い日の午後。

藤崎商店街の小さな貸し会議室に、見慣れた顔が揃う。

既に教室前方の講師席には、橘川さんが悠然と腰を下ろしていた。
( 多分何の気なしにちょこんと座っていたのだけど、私の敬愛フィルターがそうさせた )

いよいよ最後の弾丸マシンガン講義が始まるのか、と思わず身を構えたが、
いやいや、どうも講師の様子がおかしい。

「 やあ、おつかれさん。 」としゃがれ声で挨拶をした橘川さん。
あきらかに顔色が良くない。
「 どうやら風邪気味みたいでね、今日はお手柔らかによろしくな。 」

いくら生涯現役で、時代のホットな最先端をいく橘川さんとはいえ、
団塊世代の立役者。
体の無理をして欲しくないな…

なんて心配したのが、大間違い。

お待たせしました、
本日も、我らがデメケン師匠の『 弾丸メディア高座 』の
始まり、始まり~!!!であるw


冒頭からすごかった。

前回の塾の課題で登場した、知る人ぞ知る天才経営者、市村 清さんの話。

市村氏の生涯を描いた著書を読んだが、RICOH創業者という枠にとどまらず、
日本リース、明治記念館、三愛石油、ホテル業、コカコーラ・ボトリング等、
多岐に渡る新事業を立ち上げ、その全てが日本での先駆け的な事業だという
激動の昭和初期のキーマンだ。

引き続き市村氏の話かと思いきや、

「 若い頃、全国のカラオケ大会を荒らしている
破天荒な男と知り合ったんだ。 」と唐突に、橘川さん。

「 そいつが面白い奴でさ、一緒につるんでいたら、
実は自分は市村清の隠し子だ、なんて言いだすんだよ!ホントかどうか確かめれないけど。」


!!!

いやいや、普通、そこで繋げてきます!?
すごい角度からのカーブに思わずたじろいでしまった。


「 表面的に面白い人だけではなくて、色々な人と付き合うんだよ。
ちゃんと付き合うことが大事。 」

ぶわっ、なんて説得力。

掘れば掘るほど、濃すぎる橘川さんの交友関係。

いきなり先制攻撃をくらって、ぐわんぐわんと目眩がするが、
ぐっと持ちなおして講師の声に耳を傾ける。


「 さて、何度も言うように、僕の塾では、答えを教えません。
僕は質問を投げかけ続けるだけ。
あとは、それぞれの答えをだしてもらう。
そういうわけで、今日の出欠確認は、何か"質問"をしてください。 」

これまた、面白い角度からの投球。
塾生の皆さんがどう打って返すのか、期待が高まる。


さてさてここからは、Q&A形式でレポート。

ん?手抜きですって??
いやいやいや、ここが、いちばん濃いんですってww

【Q・・・塾生、 A・・・橘川さん】


Q、人の好きの基準はありますか? (ゆうかちゃん)

A、実はあまり人の好き嫌いがない。
今まで付き合った女性には
「 優しいと思ったのに、こんなに冷たい男いない! 」と言われるw
あまり関心がないんだなw
”自分とみんなを分けない生き方”をしている。

( 橘川さんは、すべての人は自分の可能性だと話していた。 )


Q、結婚についてどう思いますか? (かおるさん)

A、僕は、結婚に関してはプロだからね!

何かを好きになることは、大抵3年で飽きる。
雑誌、人、仕事、なんでもサイクルがあるんだ。

3年毎に違う目的、魅力を見出せるのかが大事。

ステップアップしていく関係が、いい結婚なのではないか。
(3年サイクル…何にしてもあるある!わかるw
進化し続ける自分で在りたい。 )


Q、気づかない人に「気づけ」という。
これほど無駄なことはないんじゃないか?(太郎さん)

A、人ってコントロールできないもの。
自分が気づいていないことを、相手が気づいているかも。

永遠に叱り続けることはないし、何でもかんでも相手を許すことが付き合いじゃない。
叱られることも叱ることも「付き合うということ」なんだ。

(人と真剣に付き合う、か…。いったいどれだけの人と、
本当の意味で付き合えているだろう。大ざっぱで自分本位な自身に、問う。)


Q、小さい頃の"将来の夢"は何でしたか?
(これは、わたしからの質問。現在を形成しているルーツを知りたかったからだ。)

A、原点は、”現在”に持つべきものなんだ。

僕はね、毎年誕生日になると、今だに
「大きくなったら何になりたい?」と自分に問いかけてる。

いい年して、小説家になりたい、とかさ!

(…  未来は描き続けるもの。いかに、未来を語れるのか。
この橘川さんからの問いかけは、自分の課題に気づかされた。)


Q、好奇心とは? (西尾さん)

A、生物は、海から陸へとあがって進化していった。
与えられて生まれて育った環境から、違う世界へ行こう。
あれ面白そう、これ面白そうと覗くのではなく、
そちらへ行ってしまうことが好奇心。体を持っていってしまうんだ。

(浅く広く、ではなく、よりディープな世界へ。
とことん入り込み、自分で咀嚼することが大事。)


Q、性のコントロール( 性のリーダーよりw )

A、いずれ枯れるのだからとことんいってくださいw

恋愛のために必要なのは、時間があるということ。
昔は、セックスは子供をつくるためのものだったが
現代では意味が違ってきた。近代人の直面する問題。


* * * * * * * * 

ここで少々、レポを脱線させていただく。

ふと、最近同僚の薦めで読んだ
藤子・F・不二雄氏が描いた短編集を思い出したのだ。

その中に、「 間引き 」という話があった。
生まれたばかりの我が子を、コインロッカーに捨てにやってくる
学生カップルが登場する。

警察に捕まった母である女学生は、
「 この赤ん坊2人でつくったんだよ、自分のものを捨てて何が悪い! 」
と平然と言ってのける。

そこに、母の愛は一切感じられない。

居合わせた新聞記者は、言う。
「 何かがおかしい。得体の知れない大きな力が働いているのではないか…。 」

増えすぎた人口、人間の「 間引き 」が行われているのではないかと
いうのだ。

生の重みが感じられない。物事の価値がわからない。感情が動かない。
麻痺。そんな人が増えすぎている。

自分にだって、言えること。

世界には飢えている子供達がいる。
豊かな国であるはずの日本でも、親に愛されず心が飢えている誰かがいる。
それを考えると、夜も眠れず布団にくるまって、
こっそり泣いていた小学生のあの頃。

モノがあふれ豊かさを当然と感じ、今では目の前の出来事で頭がいっぱい。

自分が麻痺しつつあることに気づき、愕然とするが
何をどうすればいいかわからない。

昭和49年(わたしが生まれる14年前  )の作品。

描かれた当時以上に、この問題は現代のわたしたちに
問われているのではないだろうか。



・・・はっ(°_°)

濃い、濃すぎる…。

そして、脱線しすぎ。笑

これって、まだ「出欠確認」でした。


しかし、この「 質問 」に、橘川イズムが集約されていたように思う。

こちらが問いかけたはずなのに、
気づけば自分自身に問いかけている。思考が驚くほどあちこちに巡る。
そのアンサーひとつひとつに人生が集約されているから、
まだまだ未熟者な私のどこかしらに繋がってくるのだ、そんな不思議な体験だった。


そして、お決まり1000本ノック。
4回目ともなると、頭のスイッチの切り替えにも慣れてくる。

自分の中から咄嗟に出てくる、内から溢れる表現が面白い。

「 言葉って面白いでしょ?これだけでいいよね。
仕事、地位、すべて失っても、身ぐるみをはがされても、
言葉は奪われることはない。
監獄にいようが、自分の言葉は持てるだろ? 」

・・・みなさん、これは、いつか必ず世に誕生するであろう、
『 橘川幸夫名言集 』に、加えておくべきではないでしょうか?w


言葉って、素晴らしい。

自分だけの言葉で表現するって、人間だけができること。
言葉が話せない赤ちゃんも、表情で表現している。

おかあさんの表情を読んでいる。
人の「目」を見る。
恨んでいるのか、愛しているのか、目でわかる。

人の気持ちを理解する。知る。
そして、表現する。

…ふふ、子供って本当にわかりやすいんだよなあw

先輩の子供に”さきちゃん”っていう2歳児がいるんだけど、
嬉しいときはたれ目をぐしゃってさせて、朝青竜にそっくりになるし
いやなものは「 ぶーッ 」って唇をとがらせて抵抗するし、
気に入らないことがあったら、この世の終わりみたいな泣き方するしw

身近なさきちゃんに例えてみると滑稽で愛おしくて、なんだか笑える。


そして、もう一つ勇気づけられたこと。
自国、自分のアイデンティティに誇りを持つということだ。

漢字を平仮名・カタカナにして、「 なじませる 」のが日本人。

西洋からパンが入ってくると、「 あんぱん 」にするのが日本人。

仏教は元々新興宗教。
空海がアレンジして伝えたから、日本でうけた。

単に受け入れて、スピーカーのように拡声していくのではなく
核は大事にしながら、自分なりのエッセンスを加えて伝えていく。


「 ひねりだす 」アイデンティティを持つ日本人として、
そして「 自分にしかない 」言葉を発信する人間として、
そのおもしろさを最大限に使わなきゃ、損でしょ!

「 気づいたら成し遂げてた 」に向けて、一歩前進。


ようやくまとまりました、
いやまとまってるのかはわかりませんが、これが
私なりの”リアルテキスト塾”です。

正直、講義の内容が本当に濃すぎて、
レポートにまとめるのには相当に難儀しました。

草稿を打ち込む携帯画面とにらめっこして、
文章に落としながら橘川さんの言葉を思い返し、
思考がまたそちらへ行き、自身に問いかけ、
自分なりに噛み砕き、
自分の小ささにがっかりしたり、
これからの可能性にワクワクしたり。

複雑にみえて単純で、
それでいて多大な可能性を秘めている人間ってものに愛を感じたり、
たった5●(ピーーー)kgの肉体から
その質量以上の価値を世の中に与えることができるという
事実に身が震えたり。

それが文章という形でメディアにでるのか、
はたまたその表情ににじみでているものなのか。


人生って、問いかけの連続なんだなあ。

だって答えなんて自分で決めるしかないもの。

だから質問しつづけるしかない。

3年毎に自分自身の新たな魅力に気づいていきたいし、
私だからこそ発信できる言葉をつくっていきたい。


将来の夢はなんですか?

んーー、おもしろくて”料理上手”なオバサン?

用意された材料を上手に調理することは得意なんだよ、私。
(ちょっと大雑把だけどw)

でも、もっと”創作料理”がしたい!

得意料理は肉じゃがでもいいけど、週末のホームパーティーでは
”イエテボリ風ヤンソン・フレステルセ”ぐらいを作ってみたいww

自分にしか創れないもの。同じものを見るのでも、
阿部彩花というフィルターを通して発信すること。

そして、いつでも未来を描き続けるということ。
それをつくる現在を、刻んでいくということ。

テキストの価値以上のものに気づかせていただいた、リアルテキスト塾。

スタート地点から一歩前進、あとは進み続けるだけなのです。

いってきまーす!^^