あなたに届きますように
彼のことをいつかちゃんと思い出して、ちゃんと書きたいと思う。
なんでこんな風に思い出すのだろう。
私たちは特別なことは何もしていない。
彼のことを思い出す時に、思い出すのは風景や情景ではなくて、その時私が感じていた気持ちと安心感、一緒に過ごした図書館、カフェ。
ただ、図書館で、カフェで、一緒に過ごしただけなのに。
彼と過ごした時間は私にとって本当に特別だった。
彼が「一緒にいること」「聴くこと」の大切さを理解していて、それに長けた人だったからだと思う。
いや、分からない、彼がその大切さを理解していたかは。
でも、それに長けた人だったのは確かだ。
彼みたいな人に出会ったことがなかった。
彼が本当に真剣に私の話を聞いてくれていること、一緒にいてくれていることがものすごく伝わってきて、本当に心から安心感を感じていた。
ああ、なぜか言葉にするとこれではない、薄っぺらいと感じてしまう。
この感じは言葉にできない。必死に言葉を探しているのだけど。
私たちは、その時の私とあなたに紡ぎ出される言葉を探していた。
それは決してお互いを傷つけるものではなく、分かり合えないと知っているからこその、ただ受け止める、聴く、その場に一緒にある、ということの安心感。
あの時、私たちはずっと一緒にいることができないこと、全てを分かり合える、話せるわけではないことを知っていた。
私たちの間には心地良い緊張感と距離がいつもあって、それが私をとても安心させた。
でも、少し油断したら距離が一気に近づいてしまいそうな感じもあって、彼と一緒にいると近づきたいという感情も同時に感じていた。
あの時の私にとって、彼は私をとても尊重して一緒にいるということをしてくれたんだと思う。
彼に心から会いたいと思うし、また一緒に過ごせる時が来ればいいなとも思う。
でも、私はそれを彼に直接言うことはできなくて、ストレートに表現することもできない。
あの時の私たちがそうであったように、またその時の私たちで出会いたいと願う。
私たちが変化していくように、関係性も変化していくものだから、いつも手放していたい。
あの時の関係を手放したら、きっとまた新しい関係で私たちは一緒にいることができるのだと思う。
そうあれるように心から願う。
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